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【レポート】\第2回開催 町田一箱古本市/ 読む・聞く・話すで、読書の秋 〜絵本の読み聞かせ、読書会、体験型絵本〜

2019.11.11

移転した旧市役所跡地に2014年にオープンした「町田シバヒロ」。総面積5700㎡の広大な芝生の広場です。この場所を地域の交流拠点に育てていくため、様々な活動が行われています。

そんななか、市民のアイデアをもとに生まれたイベントの一つが「町田一箱古本市」です。

一箱古本市とは「みかん箱サイズの一箱」(段ボールや木箱、トランクなど)に詰めた古本を販売する、フリーマーケット型の古本市。2005年に東京の谷中・根津・千駄木で不忍ブックストリートが開催したものが最初で、現在はいろいろな地域に広まっています。 8月3日に第1回が開催され、ご好評をいただいたこちらのイベントがさらにパワーアップして帰ってきました。

第2回町田一箱古本市、開催!

10月5日(土)13:00~17:00にシバヒロにて開催された「第2回 町田一箱古本」。この日は初めての試みとして、古本市の傍ら、本にまつわる4つのイベントが行われました。本好きの方は一日中シバヒロを満喫できますね。

積読本に光を

一箱古本市に先立ち、午前10:00より行われたのが「おはよう、町田シバヒロライブリー#1 朝読書〜積読本に価値を与えて、共有しよう〜」です。

購入したけれど、読まずに積んだままにしている本=積読(ツンドク)本を、芝生の上でみんなで読んでみよう、というこちらのイベント。読みたい!と思って買ったはずの本でも、読もう読もうと思いながら日々を忙しく過ごすうちに、気付けば積読本になってしまっていることってありますよね。

大切なのは読み始める「きっかけ」。一度読み始めてしまえば、興味があって買ったその本はきっとどんどん読み進められるはず。

参加者のみなさんはそれぞれ積読本を持参し、芝生の上でのんびりと読書を楽しんでいました。芝生でゴロゴロしながらの朝読書、とても気持ちよさそうですね。

後半は、参加者同士で、今日読んだ本の内容をシェアし、感想を伝え合います。積読本とは不思議なもので、それまで積んでいた本をふと手にとったタイミングが、自分にとってその本を読む一番良いタイミングだったりします。この日は、今まで積まれていただけの本が、新たな出会いを生み出すきっかけになっていました。

一箱古本市スタート!

開始時間が近づくと、出店者の皆さんがぞくぞくとシバヒロに集まってきます。運営スタッフのくまがいさんの挨拶から、町田一箱古本市スタートです。

街中で楽しく自己発見⁉

本日2つ目のイベントは、「絵本読み聞かせ×価値観ババ抜き体験」です。担当するのは、町田に絵本コミュニティを作るために活動している絵本セラピストの鈴木由香さん。「大人こそ絵本を」をモットーに、絵本から読み解けるテーマについて考えるワークショップを定期的に開催しています。今回のテーマは「価値観」。2冊の絵本を読み聞かせした後、「価値観ババ抜き」を行いました。

それぞれがカードを3枚持った状態でゲームがスタート。使用するのは、トランプではなくこちらの価値観カードです。価値観ババ抜きでは、手札の中から自分にとって最も重要度の低いカードを選んで隣の人に渡します。

カードを引かれた人は手札が2枚になるので、場から新しいカード(自分が最も大事にしたい価値観)を1枚選びます。引いた人は手札が4枚になるので、新しく引いたカードと手札を見比べ、最も重要度の低い1枚を中央の場に捨てます。このように、常に手元に3枚のカードがある状態をキープしていきます。

つまり、価値観ババ抜きでは、どの価値観カードを残し、手放すか、常に取捨選択を迫られるのです。

隣の人から引いたカードが自分にとって重要度の高い価値観だった場合、「え!これ手放しちゃって良いの!?」という声が上がったり、場からカードをとる時に「この中からそのカードを選ぶんだ!」という驚きがあったりと、カードが動く度に盛り上がっていきます。

ぐるぐると数週回り、ゲームが終了。手元に残ったカードを見せ合い、なぜそのカードを残したか、ゲームの感想と共に発表します。

「ズル・やさしさ・おもしろさ」のカードを残した、小さなお子様と共に参加されたお父さん。「やさしさ」のカードだけはどうしても捨てたくなかったので最後まで残した、とのこと。

「オリジナリティ・発見・やすらぎ」を選んだ男性は、自分らしく生きたいというのが強くあり、「自分らしいオリジナリティを発見し、それを発揮して生きていくことが本当の心の安らぎだと思った」とのこと。とても綺麗な回答に、参加者の皆さんから思わず拍手が。

「机の上の勉強ももちろん大切。けれど街中で笑って自分と向き合えて、気付きを得られる場所があったら。それを楽しくできる場を作っていきたい。」

という鈴木さんの思い通り、みなさん楽しみながら、「自分てこんなことを大切に思っているんだ」と、自分を再発見していました。

あなたの推し本は?

続いて行われたのが、推し本紹介型読書会。出店者のきんじょうみゆきさんが担当です。きんじょうさんは、町田エリアにて、気軽に本と出会う場所「きんじょの本棚」を展開中。インスタグラムにて、おススメ本の紹介もアップしています。

参加者の皆さんが、それぞれ持参した推し本を紹介していきます。ジャンルに縛りはないため、小説、新書、エッセイなど、様々な本が集まっています。参加者の中には、他の店主さんに自分のお店を託した出店者さんの姿も。

印象的だったのは、こちらの男性が『舟を編む』(三浦しをん, 光文社文庫)を紹介していた場面。映像化されたこちらの作品をきっかけに、話題は「小説を映像化すること」へ。自分がまだ読んでいない作品が映像化された場合、先に本を読むか、映像を見るかで話が盛り上がっていました。また、好きな小説が映像化される際に、自分の好きなシーンがカットされてしまう!という本好きあるあるも。本好きの方なら一度は経験したことのある気持ちに、共感が集まっていました。

最後は皆さんの推し本を並べて写真撮影。読みたいと思った本を忘れないよう、写真を撮っている参加者さんもいらっしゃいました。町田歴40年!本日最後のイベント、絵本読み聞かせの模様をお伝えする前に、古本市の魅力的な店主さんをご紹介します。

まずは40年近く町田に住まれているこちらの男性。今回が初めての古本市出店ですが、前回はお客さんとして町田一箱古本市に参加してくださったそうです。

古本は、自転車、登山、カメラ、音楽などたくさんある趣味の一つ。その言葉通り、登山家の伝記、海外を旅するカメラマンの放浪記など、幅広いラインナップの本が。桜の時期に桜並木の下での古本市を開催してみたい、など、もし町田にこんな古本市があったらという話でお隣の出店者さんと盛り上がっていました。

この本が売れたら……

古本市には初参加だという町田市在住の「ちいさなよみどころ」さん。開催の1週間前にfacebookで今回のイベントを知り、すぐに参加を決めたとのこと。シバヒロでの運動会を終えたお孫さんも遊びに来ていました。

最近はお休みしているそうですが、ご自宅を使って週に2回、「ちいさなよみどころ」を開いていたそう。今回の古本市は小説が中心のラインナップですが、ご自宅の「ちいさなよみどころ」は絵本が中心。トランプやオセロをするなど、放課後に小学生が自由に遊べる場となっていたそうです。

「ちいさなよみどころ」さんのブースには、本箱から飛び出た何やら特別な本が。

『MY VISIT TO JACK DANIEL’S』。

もしこの本が売れたら、ジャックダニエルのボトルを買う資金にするそうです。

さらにこちらの本を購入いただいた方には、手作りの「酒の肴」が付いてきます。 古本市ならではの、なんとも粋な試みですね。

古本市は出会いの場

町田一箱古本市に2度目のご出店となる「へのぶっくす」さん。前回の町田一箱古本市が初めての古本市だったそうですが、それ以降、文学館のフリーマーケットなどにも出店されたそう。外に出て何か活動したいという思いから、古本市への出店を始めたというへのぶっくすさん。

「本を売る」ということよりも、面白い本に出会うこと、そして本が好きな人と繋れるということに古本市の良さを感じているそうです。

また、前回よりも出店者、お客さんが増え、町田一箱古本市が賑わってきていると感じたそうです。

本を通して寄付のサイクルを

最後にご紹介するのは、古本市初参加だというこちらの女性。 現在は座間市在住ですが、かつて町田で児童館職員をしていた縁から、町田で何か活動をしたいと思い、facebookで今回の古本市を見つけたそうです。

本箱の隣には、台風15号で甚大な被害を受けた千葉県への募金箱が。お話を伺うと、千葉県にお知り合いがいたり、所縁があったりというわけではないそう。

「今回の古本市は無料で参加できる。儲けるつもりで参加しているわけではないので、せっかくだから何かをしたいなと思った。」

本を通して募金、寄付のサイクルが作れたらという思いで、自分が持っている本だけではなく、知り合いに声をかけて集めた本も出店しているそう。募金箱に集まったお金と共に、今回の売り上げの半分を千葉県の災害募金に寄付するそうです。

本を通して寄付のサイクルを作る。古本市の新しい可能性を感じることができますね。

子どもたちお待ちかね

そしていよいよ本日最後のイベント、絵本読み聞かせ。読み聞かせを楽しみに待っていた子どもたちが、テントの下に集まってきます。

『こんとあき』(林明子作,福音館書店)、『ぐりとぐら』(中川李枝子・大村百合子,福音館書店)など、誰もが一度は読んだことのある名作は、大人が聴いても楽しめますね。時間の許す限り読み聞かせを行い、本日のイベントは、これにてすべて終了です。

本が出会いを引き寄せる

第2回目となった町田一箱古本市。今回は初めての試みとして、朝から本にまつわる4つのイベントを開催しました。イベントを行うことで、より深く「本」について、そして本を通して出会った「人」について、知ることができるようでした。

店主さんの思いも人それぞれ。一軒一軒違った個性が光っている古本市の魅力を、改めて感じることができました。「本が好き」という同じ気持ちを持った人たちが集まり、新たな本、そして人と出会う。古本市は、地域の交流拠点を目指すシバヒロにぴったりのイベントなのかもしれませんね。シバヒロ全体で大きな古本市を開催する。いつかそんな未来がやってくるかもしれません。

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