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【レポート】RIDE ON シバヒロ たき火 deトーク『フィンランドから学ぶ、心と身体を豊かにする暮らし ~テントサウナを一緒に体験してみよう!~』

2021.02.02

12月5日、Ride ON シバヒロ たき火 deトーク『フィンランドから学ぶ、心と身体を豊かにする暮らし ~テントサウナを一緒に体験してみよう!~』が町田シバヒロにて開催されました。

健康福祉分野の先進国と呼ばれている北欧の国・フィンランド。労働時間が短くても教育水準はトップ、健康寿命も高い国として注目を集めており、国連の世界幸福度ランキングでは3年連続1位を獲得しています。
今回はフィンランドの暮らしに詳しい森下詩子さん(kinologue主宰、クリーニングデイ・ジャパン事務局代表)、そしてフィンランドでの心と身体の健康に欠かせないサウナをこよなく愛するサウナ活動家のやのしんさんをお招きしてたき火を囲みながらトークを繰り広げていただきました。

    

フィンランドを語るための5つの“S”

2014年からフリーランスで北欧の映画配給を始めた森下詩子さん。ヘルシンキを舞台とした映画『かもめ食堂』が公開された2006年に初めてフィンランドを訪れ、その後2009年からは毎年のように2週間から1ヶ月ぐらいの期間で滞在しています。
そんな森下さんがフィンランドを紹介するにあたり、キーワードとして挙げたのが「5つのS(SUOMI/SIMPLE/SUSTAINABLE/SISU/SAUNA)」です。

まず、「フィンランド」のことをフィンランド語で言うと「SUOMI」。そして次の「SIMPLE」はフィンランドを語る上で重要な言葉になります。

森下さん「フィンランドで今人気があるのが北欧のデザインだったり、家具だったりするんですけど、そういうのも全て『SIMPLE』がキーワードになっていると思うんです」

森下さんが初めて配給を手掛けた映画『365日のシンプルライフ』にもそのキーワードが。

写真提供:森下詩子さん
恋人にフラレたことがきっかけで26歳のペトリが自分の持ちモノを一旦全て倉庫に預けて毎日、自分にとって必要なモノを倉庫からひとつずつ選んでいく1年間の「実験」ドキュメンタリーです。

その姿は究極のシンプルライフです。


森下さん「フィンランド人は壊れたものを直して使うし、サウナも自分たちで作っちゃうんです。休暇ではわざわざ電気も電波もないサマーハウスに行って自分をデトックスする時間を大事にする人たちです」

「SUSTAINABLE」もそんなシンプルな生活には欠かせないキーワードです。

「SUSTAINABLEは使わなくったものを人に譲り渡したり、日本にもかつてはあったモノを長く使い続ける文化がずっとあるんです」

毎年5月と8月に開催されているCLEANING DAYもSUSTAINABLEなイベントです。CLEANING DAYは誰でもどこでもフリーマーケットを開けるというもので、「リサイクルのハードルを下げる」「地域交流」を目的としています。
CLEANING DAYに感銘を受けた森下さんは現在、クリーニングデイ・ジャパン事務局代表も務めています。

森下さん「日本ではフリーマーケットだけでなく、アップサイクルをコンセプトに廃材を使ってワークショップをしたり、物々交換をしたり、やりたい人が責任を持って運営する。これもフィンランドらしさを踏襲してます。

フィンランド人の活動に触発されて、昔ながらの日本人の良さも掘り起こしていくきっかけになったらいいな、と思っています」

日本とフィンランドは精神面で近い部分がある

4つめのキーワードとなるのが「SISU(シス)」。

森下さん「初めてフィンランドに行った時、書店で手に取ったのが『Sauna Sisu & Sibelius』という本でした。Sibelius(シベリウス)は作曲家だから分かったんですけど、SISUが何か分からない。書店の店員さんに聞いたら、『強い意志』と言った意味なんだそうです。フィンランド人は過去の戦争の難局も強い意志で乗り切った経験があるし、それを大事にしているんですよね」

写真提供:森下詩子さん
日本人に例えるならば、「大和魂」というような、国民の心に宿った想いのようなものなんだそう。

森下さん「フィンランド人と日本人って似てるところがすごく多くって。すごくシャイだし同じような感性で通じ合える外国人がいるっていうのは私にとっても驚きでしたね。日本に関心がある人が多くて、とても親切です」

サウナ発祥の地・フィンランド

そして最後のキーワードとなるのが「SAUNA」です。

森下さんはドキュメンタリー映画『サウナのあるところ』の配給にも携わっています。

森下さん「フィンランドはすごく女性が強くて、男性は感情をあまり表に出さない文化なんです。

ただ、サウナの中では身も心も裸になれる。サウナで辛いことや悩みを打ち明けておじさんたちが涙する、というすごく濃い映画です(笑)。

フィンランドのサウナは日本のお風呂文化に通じている部分があって、神聖で大事な場所。ただ身をきれいにするというだけではなくて心や体、いろんなものを落ち着かせる空間でもあるんです」

フィンランドでは自宅にサウナがあるのが普通。アパートでは共同で持っているのだとか。いかにサウナが普段の生活に根付いているかがよく分かりますね。最近は公共のサウナも人気が高まりつつあり、観光客でも訪れるようになっています。

森下さん「フィンランドのサウナはそんなに熱くないので長くいられるから会話が出来るんですね。
寒くなるとサウナストーンに水をかけて蒸気で室内を温めます。ロウリュウというものですね。日本でロウリュウと呼ばれているものとはちょっと違うんです。自分たちで温度コントロールをしながら、ダラダラと楽しむのがフィンランド流」

フィンランド人にとって、サウナは自分と向き合う時間であり「ととのい」とは心持ちは似ているようです。

近年盛り上がりを見せる「ととのう」サウナ

フィンランドのサウナの話題に続いてはサウナ活動家・やのしんさんによるサウナプレゼンです!

やのしんさんは約3年前から入門者向けのサウナブログをスタート。自分が大好きなサウナをおじいちゃんになっても楽しみたい、施設が多くあってほしい、そのためには新規利用者を増やさねば! ということでサウナの良さをより広めるためにブログのほか、イベントなどを開催しています。

最近はサウナ好きを公言する人も増えていますが、そんな日本のサウナブームは2015年に連載がスタートしたマンガ『サ道』の人気から。サウナに入ると「ととのう」ことができる、「ととのってみたい」という人が続出しました。2018年にはサウナ情報検索サイトの「サウナイキタイ」が登場し、ますます盛り上がっていきます。サウナの室温、水風呂の温度、どういったアメニティがあるのか……など情報満載です。また、昨年には『サ道』が原田泰造さん主演でドラマ化もされました。

そんなサウナ関連でよく耳にするのが「ととのう」というワード。これは一体どういうものなのでしょうか。

やのしんさん「『非日常的な快楽状態』というものなんですけど、良い感じでお酒に酔ったときの浮遊感状態が近いですね。中にはトリップ系という人もいる。一度この感覚を知ってしまうと、ハマります」

サウナ→水風呂→休憩を1セットとして3回ほど繰り返していると、どこかの休憩のタイミングで「ととのう」が訪れると言います。

やのしんさん「ととのったときっていうのは本当に顔が緩むんですよ。普通に気持ちよく寝ている人もいます」

日本とフィンランドのサウナの違いは?

サウナ発祥の地であるフィンランドですが、実は「ととのう」は日本オリジナルの概念だそう。今は「ととのう」がフィンランドに逆輸入されているとも言うのだから驚きです。他にもいくつかの違いが。

やのしんさん「日本のサウナは高温低湿、フィンランドは低温高湿。最近では日本でもフィンランド式を取り入れているところはあります。多様性は生まれてきている。また、水風呂がマストなのは日本だけです」

フィンランドはシャワーが主ですが、水風呂も逆輸入されている、とやのしんさん。

やのしんさん「日本の水風呂は、普通の水道水を専用の機械で更に冷やしているんですね。それが海外からすると超クレイジー。どれだけ冷たいのが好きなのかと思われているでしょうね(笑)だからこそ日本人は水風呂を体験しておくべきなんです、ということを力説したい」

サウナ未体験の人にとって、水風呂はハードルが高く感じられてしまいそうですが……。

やのしんさん「水風呂に入ってじっとしていると、自分の表面の部分がうっすらと温かい膜につつまれているようになるんですが、その温もりが意外と心地よいんです。慣れると、その感覚にハマります。

サウナ好きの人にサウナと水風呂どっちかしか選べませんって言ったら絶対に水風呂を選ぶんじゃないかな。水風呂がないならサウナに入らないよ、っていうぐらい。水風呂に入ることは誰でも越えられる壁でありととのうために重要なポイントです」

水風呂の良さはまずはチャレンジしてみるしかないのかも……!?
また、フィンランドはロウリュウが定番。最近だと日本はセルフロウリュも可能なサウナもできつつありますが、そもそもフィンランドと日本ではロウリュウの定義も違うようです。

そしてフィンランドでもうひとつの定番が「ヴィヒタ」。

白樺の枝葉を束ねたもので、サウナの中で全身を叩くようにして使います。写真のものは乾いた状態になっていますが、生のヴィヒタは鮮やかな緑色だそうです。

森下さん「抗菌とか血行促進の効果もあるとか。白樺のいい匂いがするんですよ」
サウナと言ってもいろいろと違いがあることに驚きです。それぞれの国の文化が反映されているということのようですが……。

やのしんさん「ロシアとかエストニアとかいろいろあって各国ごとにサウナには違いがあります。中でもガラパゴス的な進化を遂げているのが日本。水風呂というものがあったり、サウナ室を出たらリクライニングシートがあって、とか。サウナ室にテレビがあるのもフィンランド人からしたらあり得ないでしょうね。日本人で例えると境内にテレビがある感じ」

これには森下さんも「『サウナのあるところ』の監督をサウナに連れて行ったらテレビにすごくびっくりしてましたね。あれはすごいねって」とエピソードを明かしました。

テントサウナってなに?

この日、参加者も体験できたのがテントサウナです。存在自体も初めて知ったという人も多いのではないでしょうか。

テントサウナに惹かれて参加したという方も多くいらっしゃいました。

やのしんさん「簡単に言うと『テントに薪ストーブをつっこんだもの』ですね。最近、トレンドになりつつあります。

例えば、川へバーベキューに行ったときに、横にテントサウナがあって、水着で男女一緒に入って水風呂代わりに川に飛び込む。バーベキューのついでに入れる、となると、サウナに対する精神的ハードルも下がるんですよね。

あと換気がいいので、息苦しさが少なく、長く入っていられるんです。暑さもコントロールできるので、フィンランド式のように20分とか30分とか長い時間入っていられる場合もあります。川が水風呂代わりっていうのもすごく気持ちいいんですよ」

驚きなのが、水風呂に入るようになると、水質がいいか悪いかで気持ち良さが全然変わってくること。

やのしんさん「水質が悪いと刺すような感じがあったり、良いものだと、冷たい割にまろやかでずっと入っていられるとか、微妙な違いが分かるようになってくるんです。川はいわばかけ流し状態。ずっと新しい水が流れてきているので、フレッシュで、気持ちよいんですよ。周りでテントサウナを持ってるよ、やるよ、という人がいたらぜひ参加してみてほしいですね」

初めてのテントサウナ経験で文化を感じる

お2人のトークの合間には実際にテントサウナの体験も。特に冷え込んだイベント当日は、テントサウナで暖を取る参加者でにぎわいを見せました。

3大テントサウナブランドとしてはフィンランド製の「SAVOTTA」、ロシア製の「MOBIBA」、「MORZH」がありますが、イベントで用意されたのはMOBIBAです。SAVOTTAはフィンランド製ということもあり、さほど熱くはなく、ロシア製のMOBIBAはやのしんさん曰く「けっこう熱い」、MORZHは「めっちゃ熱い」とのこと。MORZHは120℃まで上がるそう!

参加者「芝生の上にテントサウナ、って見慣れないので違和感が大きかったんですが、入ってみたら出たくないってなりましたね。一家に一台ほしいぐらい。

国によってテントの種類とか形が違う、サウナの文化も違うという話があったんですけど、それも踏まえて、今回のロシア製のテントサウナに入ってみて『どういう気持ちで作って、入っていたのかな』という想像もかきたてられつつ、こういう人たちが入っているんだろうな、とか状況を考えながら入っていたら10分とか20分とか経っていました(笑)」

ほかにも、テントサウナに興味津々の参加者の方も。熱心にテントサウナの取り扱い方や片付け方を聞いていらっしゃる姿が見受けられました。

新しい文化とのふれあいが興味をかきたてる

最後は参加者の方から、サウナやフィンランドに関する質問が飛び交いました。

まず上がったのは「サウナの文化って中東にもあると思うんですが、日本には取り入れられてないんですか?」という質問。

やのしんさん「トルコだとハマムってあったりしますけど、取り入れた施設はあんまりないですね。東南アジアだと薬草サウナがありますが、そちらは(施設が)ちょこちょこあります。薬草スチームサウナとかミストサウナとか。
今後、いろんな国のタイプのサウナが日本にも持ち込まれるかもしれませんね」

続いて挙がったのがフィンランドに留学経験があるという方から森下さんへの「フィンランドが好きだけど、拠点は日本を選んでいる理由は?」というものでした。

森下さん「もちろん移住は考えたことがあります。フィンランド人は付き合いやすいし、いいな、と思ったんですが、自分がフィンランドにいたいだけで仕事を選ぶとするとそれって本当に私がやりたい仕事なのか、生きたい生き方なのかっていうのは疑問があって。それで、私が選んだのはフィンランド人と仕事をする、だったんですよ。1年のうちの1ヶ月くらいはフィンランドで過ごすことで私はリセットできているし。それが私にとってはちょうどいいかな、って思ったんです。フィンランドに住むことがベストだという人もいると思うし、それぞれですよね」

そして最後の質問となったのが「サウナのあとに一番おいしいものはなんですか」。

やのしんさん「サウナのあとって辛さもありつつ、塩味もほしいんですよ。汗で塩分が出ているもの、辛いもの。となると、カレー! あと酸っぱいもの。要するにレモンサワー(笑)」

新たな興味にもう一歩踏み込んでみて

実はこの日はとても寒く、重い雲が終始立ち込めていました。そんな空を見上げてやのしんさんは「まるでフィンランドみたいな天気ですね」とニコリ。

そんなフィンランド的空模様の下で行われたイベント。最後にお2人のイベントを終えての感想をお聞きしました。

やのしんさん「今日のイベントで、フィンランドかテントサウナか、詩子さんの配給する映画か。何かにちょっとでも興味を持ってもらえたなら、一歩踏み込んでいただけると嬉しいな、と思います」

森下さん「フィンランドは普段の生活に取り込めることがたくさんある国だな、と思うんです。今はなにがしかフィンランドのことって耳にすることが多くなっています。教育のことだったり、幸福度ランキングとか女性首相のことだったり。少しずつでもいいのでフィンランドに興味を持っていただければ」

イベントの休憩中なども、やのしんさんや森下さん、参加された方々がたき火を囲んで盛り上がるシーンが見受けられました。きっとフィンランド、そしてテントサウナに興味を持たれた方も多いはず。いつかシバヒロの芝生の上で、テントサウナをみんなで楽しむ……なんて日がやってくるかもしれませんね。

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