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【レポート】\ 第3回 町田一箱古本市 by RIDE ON シバヒロ / 本でつながる、 私とあなたの世界観

2020.11.17

市民の方のアイデアをもとに、昨年2度シバヒロで開催された「町田一箱古本市」。一箱古本市とは、みかん箱サイズの段ボールや木箱、トランクなどに詰めた古本を販売する、フリーマーケット型の古本市で、2005年に東京の谷中、根津、千駄木で不忍ブックストリートが開催したものが最初だといわれています。現在は日本全国で、地元の方を中心に開催されています。

シバヒロを会場に行われる町田一箱古本市は、人情味のある町田らしく、温かい出店者さんとお客さんばかり。芝生にゴロンとしながら、手にしたばかりの本をのんびり楽しむことができるのも魅力です。新型コロナウイルスの影響もあり、前回の開催から1年近く間が空いてしまいましたが、去る10月13日(土)に、安全に配慮しながら、第3回目が開催されました。

第3回、町田一箱古本市スタート!

第1回、2回、3回と、回数を重ねるごとに出店者を増やしている町田一箱古本市。今回は過去最多の17組が出店し、店者さんたちが輪になって自己紹介をするところからスタートしました。

町田一箱古本市に「常連さん」が!

3回目ともなると、常連さんと呼べるようなリピーターの店主さんも多数。第1回目から3回連続で出店している「へのぶっくす」さんは、今回シバヒロ初出店のご友人・えりんぎ書店さんと共にブースを作って出店していました。

へのぶっくす店主さん「ここの古本市はどんどん発展してますよね。家から近く重い本も運びやすいので、僕が出店しているのはシバヒロの古本市だけです。始まる前はどんな感じになるか毎回想像できないけど、皆さんすごく話しかけてくれるので、出店してみるとやっぱり楽しいです。」

第1回目にも出店してくださっていた町田市在住のこちらの男性も、出店するのはシバヒロの古本市だけだそうです。

店主さん「Facebookを見たらタイミングよく情報があがっていたので、久しぶりに出てみようかなと。本が好きで売るほど家にあるんですが、出店するのは家から近いここの古本市だけです。時代小説からちょっとマニアックな政治ものまで、持ってくる本を選ぶのは大変だけど楽しいです。」

前回から2回連続で出店している都内在住のこちらの女性。シバヒロ以外にも、東京、神奈川、千葉など、首都圏の古本市に積極的に参加しているそうです。

店主さん「古本市に出ると、持ってきた本より持って帰る本のほうが多いこともあるんですよ。自分の持ってきた本が売れなくて、交通費や参加費の元は取れないのに、他の出店者さんの本をどんどん買ってしまって。いや~今回は赤字ですねって話すのが楽しかったりするんです。

シバヒロに関しては、東京都内でこれだけの面積を芝生にして開放しているところはなかなかないので、良い施設だなと思っています。イベントスペースとして貸し出しをしているおかげで、古本市も参加費無料で開催される。ここの古本市は続いてほしいからぜひ出ようと思って、今回も出店しました。」

シバヒロだから出店しているという地元の方にも、古本市が好きだから参加しているという町田市外の方にも、回数を重ねるごとに、町田一箱古本市がだんだんと定着してきていることを感じます。

初出店も大歓迎!

そしてもちろん、町田一箱古本市では、シバヒロ初出店、あるいは古本市自体が初めてだという方のご参加も大歓迎。出店経験に関係なく、会場のあちこちで店主さん同士のコミュニケーションが盛り上がっていました。

初めての古本市に、ご友人と共に出店していたwasabiさん(写真左)。大学3年生の時に、ラオスに図書館を建てるプロジェクトに参加している教授のゼミに入ったことをきっかけに、自身もそのプロジェクトに参加するようになったといいます。今回の古本市で売り上げたお金は、全額そのプロジェクトに寄付する予定だそうです。

wasabiさんのブースでは、本の値付けをお客さんにゆだねるという興味深い試みが行われていました。

wasabiさん「値付けはあなた次第と、プロジェクトへの寄付が繋がっているんです。本を通して寄付してもらうことがメインなので、1円でも良いし、好きな額で本を買ってもらえればと思います」

古本市ならではの工夫をしている店主さんは他にも。古本市初出店だという女性店主さんのブースには、お手製のおみくじカードが置かれていました。本を購入しなくても誰でも自由に引けるこちらのおみくじには、おすすめの本がある方角と表紙の色、そして本にまつわる名言が書かれていました。おみくじに書かれている方角のお店で、おみくじに書かれた色の本を探す。そこに思わぬ出会いが待っているかもしれないと思うと、なんともワクワクする仕掛けですね。

さらに今回の古本市に新しい風を吹かせていたのは、東京理科大学の学生さんのグループ。なんと千葉県から、初めての古本市に参加してくれました。「本のある空間」をテーマに研究をしており、ネットで本が買える時代に紙の本にどれくらいの価値があるのか、本屋やイベントの仕組みを調査しているそうです。

学生さん「賑わいに釣られて古本市を目的にしていなかった人がやってきたり、本ておもしろいなと改めて思いました。お客さんや出店者さんにアンケートをとらせてもらったのですが、声をかけたら皆さん快く話を聞かせてくれました。」

本が10冊あれば、誰でも気軽に参加することができる町田一箱古本市。出店者さんの数だけ古本市の新しい楽しみ方が生み出されていくのが、シバヒロで行う古本市の最大の魅力かもしれません。

Ride ON シバヒロ、Ride ON 古本市

個性豊かな店主さんに加えて、町田一箱古本市を盛り上げたのは、3つのRide ONシバヒロ企画。Ride ONシバヒロとは、2020年にスタートした、市民のやりたいことをシバヒロで形にしていくプロジェクトです。Ride ONシバヒロでは、お互いの“好きな事”や“アイデア”に乗っかりあって、シバヒロでしか起きない“何か”を生み出すことを目指しています。今回は3つの読書イベントが町田一箱古本市にRide ONして開催されました。

Ride ONシバヒロの詳細はこちら

まちだ旅する絵本

1つ目のイベントは、「【まちだ旅する絵本】企画~絵本を街に旅立たせよう!」です。絵本を使った場づくりを得意とし、読み聞かせイベントやワークショップを多数開催する町田市在住の絵本セラピスト、鈴木由香さんが、まちだ旅する絵本企画の紹介を行いました。絵本の読み聞かせも交えながらのイベントに、子どもも大人も、続々とテントの周辺に集まってきていました。

今年8月にスタートしたまちだ旅する絵本は、本を旅立たせる人(=はじまりさん)を皮切りに、1冊の絵本を12人の方でリレー形式に繋いでいく企画です。はじまりさんは旅立たせたい絵本を選んだら、「まちだ旅する絵本セット」 (税込み550円)のなかにある旅のきろくカードに絵本の感想を記入し、絵本の最後のページに貼り付けたポケットにしまいます。次の人にその絵本を手渡し、もしくは郵送で次の人へ届けたら、はじまりさんの仕事は完了です。絵本を受け取った人は、絵本を楽しみ、はじまりさんと同じように感想を記入し、1ヶ月以内に、また次の誰かのもとへと絵本を旅立たせます。きろくカードの枠は全部で12個。きろくカードの最後を記入した人は、まちだパリオの管理事務所へと絵本を返却し、絵本の旅が終了します。旅から帰ってきた絵本は、年に1回開催予定の「まちだ旅した絵本」イベントで、はじまりさんと再会することになります。

まちだ旅する絵本スタッフの皆さんと、共同でロゴの制作を担当した絵本作家の新井洋行さん(写真中央)

鈴木さん「コロナで人と人が直接会うのがタブーになってしまったり、遠方に住んでいる家族や親せきにも会いづらかったりする世の中だけど、自分が読んだ絵本を誰かに渡すのを想像してみた時に、次はあの人に読んでほしいなって誰かの顔が浮かぶ。握手もはばかられる世の中だけど、そんな風に、人は必ず誰かに繋がっていますよね。

まちだ旅する絵本は、【受けとる「よろこび」、届ける「たのしみ」】をキャッチコピーに、みなさんに喜んだり楽しんだりしてもらえるような企画へと育てていきたいと思っています。」

1年後、自分が思いを乗せて旅立たせた本に、11人分の思いが乗って帰ってくる。遠く離れた誰かの思いを近くに感じることができるまちだ旅する絵本は、物理的な距離が広がってしまった今だからこそ、ぜひ多くの人に参加してもらいたい活動ですね。

あなたの世界観を教えて~本を通して見つける「私」の過去と未来

2つ目のイベントは、読書会「あなたの世界観を教えて~本を通して見つける「私」の過去と未来」。市内の10カ所でマイクロライブラリー「きんじょの本棚」を展開しているほか、推し本紹介型の読書会「きんじょの読書会」を毎月開催しているきんじょうみゆきさんを中心に、参加者の方が本を紹介していくイベントです。

自分の人生に影響を与えた本や、今日出会ったばかりの本など、紹介する本は人それぞれ。参加者の方の、紹介する本との関わりや思いを聞いていると、その人の価値観や人生観が少しだけ、垣間見えるような気がします。そしてそんな風に誰かが紹介していた本が、自分の世界観にも影響を及ぼすことがあるかもしれない。本が人生に及ぼす影響は時にとても大きいもので、想像するだけで胸が高鳴りますね。

きんじょうさんは日々の活動の一環として、読書会の開催方法をレクチャーする講座も行っており、今回の町田一箱古本市には受講生の方が出店者として参加していました。本を愛する町田の人々のコミュニティが、シバヒロの内外を問わずに、どんどん広がっていることを感じます。

ほりだし読書会

最後に開催されたイベントは、「ほりだし読書会」。「あなたが本の帯になる」がテーマの読書会『Book Fair』を主催しているほか、本にまつわる複数のイベントで実行委員を務める深澤康平さんを中心に、その日の古本市で出会ったばかりの本を紹介するイベントです。

中には、10冊近く本を購入している人も。さらには、店番を他の店主さんと交代しながら参加する出店者さんの姿もありました。ピンとくる本に出会った瞬間の胸の高鳴りをその場で共有できる、古本市の最後にぴったりのイベントですね。参加者の方々は、購入した本との出会いを思う存分語り合い、この日のイベントはすべて終了しました。

オンラインでは感じられない古本市の温かさ

緊急事態宣言による外出自粛期間を経て、約1年ぶりの開催となった今回の古本市。ふらっと歩いてお気に入りの本を見つけたり、直接顔を見ながら大好きな本について話をしたり。久しぶりに味わう高揚感に、出店者さんもお客さんもスタッフも少しソワソワしながら、けれどオンラインでは感じられない温かい空気が流れている、そんな第3回目の町田一箱古本市でした。

ご参加いただいた皆さん、取材にご協力いただいた皆さん、ありがとうございました。

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