INTERVIEW

みんなの想いを育て、日常的に使いやすいまちづくりを一緒に

2021.01.25

株式会社町田まちづくり公社 中心市街地活性化推進室
鈴木不二人さん、青木枝里さん 
 
株式会社町田まちづくり公社は「ぽっぽ町田」ビルの運営元であり、町田市から都市再生推進法人に指定されている会社。平成11(1999)年に創業し、平成13(2001)年に町田駅周辺中心市街地の駐車場不足の解消と歩行者優先のまちづくりを目指し「ぽっぽ町田」が開業した。主要な事業は、駐車場事業、荷捌き場事業、イベント事業、施設賃貸事業など。鈴木不二人さんと青木枝里さんは、町田まちづくり公社の中心市街地活性化推進室に所属する若手スタッフで、現在、町田市と共に原町田大通りの活用などの取り組みを進めている。


東京都の南端にある、人口約43万人の都市「町田」。新宿から小田急線で約30分、横浜と八王子をつなぐJR横浜線も乗り入れ、横浜駅からも約30分と交通利便性は抜群で、1970年頃から団地が開発されるに伴い、人口も増え続けて来ました。

かつては八王子で生産された生糸を横浜港へと運ぶ街道「絹の道」を中心に商業が栄え、やがてJRの駅が小田急線の駅の近くへ移転したのを機に、町田駅前には百貨店や大型商業施設が次々と開業。ピーク時には商圏人口230万人とも言われるほど、「買い物するなら町田へ」と近隣の市町からも多くの人が集まりました。

その町田が今、再び変化の時を迎えています。

日本全体が成熟期を迎える中、次の時代・世代に選ばれるまちにしていくために、町田市でも多くの人々が、積極的にまちのアップデートに取り組んでいます。今回のインタビュー特集では、行政と市民の間に立ち、町田のまちづくりに関わる株式会社町田まちづくり公社のお2人に、町田への想いや取り組み、これからの未来について語っていただきました。

まちの価値を高めていくために

−中心市街地活性化推進室として、お2人は現在、どんなお仕事をしていらっしゃるんですか?

 

鈴木さん:町田まちづくり公社は設立時より、中心市街地の商業振興を目的として、駐車場不足解消等の課題解決を図ってきました。この間、中心市街地の商環境は、開発による周辺地域の魅力向上や、駅前空間・大型店等の老朽化なども加わり、都市としての課題も多く見られます。このような環境の変化に対応するため、「町田市中心市街地まちづくり計画」に基づいて、新しい事業を始めていこうとしています。商環境の変化やコロナを含めたいろいろな社会の変化の中で、「まちの価値を上げていく」というのが今後は非常に重要になると考えているんです。そこで私たちの所属する中心市街地活性化推進室では、エリアマネジメント事業として4つの事業を新しく展開していこうとしています。

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町田まちづくり公社が新たに取り組む4事業
①原町田大通りの活用事業
②共同荷捌き事業
③広場連携事業
④起業支援、リノベーション事業
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人が主役になる道路を目指して – 原町田大通りの活用事業 –

−原町田大通りと言えば、JR町田駅前から芹ヶ谷公園の方へ続く大きな道路ですよね。そこでどんな取り組みをしようとしているのですか?

 

鈴木さん:原町田大通りが都市計画道路としてできたことによって、もともとそこにあった噴水広場がなくなり、商店街が北と南に分断されたような形になっているんです。町田の中心市街地の魅力の一つは、やはり原町田中央通りと、パークアベニューからターミナルロードに続く通りの、2本の歩行者優先道路を中心に、歩いて楽しい商店街が広がっている所だと私たちは考えています。それが分断されて人の流れが止まってしまうのは残念。そこをなんとかつなぐことができないかと、町田市に提案している状況です。

−どんな提案をしているんですか?

 

鈴木さん:一つは、原町田大通りは現状では交通量がさほど多くなく、路上駐車が多かったりして本来の道路の機能としては4車線を使い切れていないので、車道を2車線へ減らして両側の商店街の距離を近づけると共に、もっと歩行者中心の歩きやすく休憩できるような空間を作りたいと提案しています。

もう一つは、歩行者道路を拡幅することで、沿道にさまざまな商店などが出てきて、それが芹ヶ谷公園へと続く楽しい道になってくれたらな、という希望もあります。芹ヶ谷公園は、駅から歩けるとは言え、やはり少し孤立したような感じになっているのでそこをつなぎ合わせて、駅周辺で買い物をして、公園にも行って…という流れができてくるといいのかなと。

−原町田大通りを市民にとって意味のある空間にすることで、芹ヶ谷公園へのアクセス向上と中心市街地自体の活性化の両面につないでいこうということなんですね。

 

鈴木さん:私たちとしては、非日常というより「日常でまちをどういうふうに使っていただけるか」ということがテーマなんです。非日常はイベントなどで体験できると思いますので、日常的に使えるような仕掛けや仕組み…たとえば「まちなかに休憩するスペースがない」というのはずっと言われていることなので、それこそ「外」での活動が注目されている今、まちの中に仕事ができる場所や、みんなで楽しめる場所など、いろんな年代・目的の方が使えることを意識しながら原町田大通りの活用を進めていきたいと考えています。

また、活用を模索しているものとしては「民間交番」というのが原町田大通りにあるんです。現在は町田市からの委託を受けて町田まちづくり公社が業務を担っており、安心安全のための見守りや道案内、情報発信としてポスターやチラシの掲示などをしていますが、もう少し機能性を高めていきたい。

−「民間交番」は知りませんでした! どんな使い方を考えていらっしゃるのですか?

 

青木さん:「拠点化」ということを考えています。原町田大通りのちょうど真ん中あたりにあるので、いろんな方の交流の拠点になったらいいなと。この民間交番を経由して、公園へ行くとか、別のところへ行くとか。

鈴木さん:道案内はニーズとしては確かにあるので今後も必要だと思いますが、道順の案内だけではなく、地元の人しか知らない情報がそこで得られる、みたいなことがあると人や地域の温かみが感じられるんじゃないかと。

車が入ってこない、歩いて楽しいまちづくり – 共同荷捌き事業 –

−「共同荷捌き事業」というのは耳慣れない言葉ですが、どんな事業なんですか?

 

鈴木さん:現在もぽっぽ町田の2階には「共同荷捌き場」があり、ここで宅配・運送業者さんが荷物を仕分けし、台車などに載せ替えて、中心市街地内の各所へ配達するということを行っています。この荷捌き場ができた発端は、商店街全体として、荷捌き車両を一括して停車できるスペースが欲しいという要望からなんですね。今も2本の歩行者優先道路には11時〜19時まで車両通行規制がかかっていますが、現状では通行許可証がある車であれば自由に入ることができるので、やはり危ないという実態があります。

−「歩いて楽しいまち」というところに向かっているんでしょうか?

 

鈴木さん:そうですね、荷捌き場はそこを目指してつくられた場所ではあります。そこを魅力的なまちとしてどんな仕組みにしていけばいいのか、検討していきたい。もちろん私たちだけでできることではないので、地元の中心市街地活性化協議会とも連携しながら、より良い仕組みを模索している最中です。中心市街地活性化協議会では、2021年の1月頃に、期間を区切って原町田中央通りに一切車を入れない実験を計画しています。それをやって実際にどんな問題が起きるのか洗い出しましょうという意図です。

「共同荷捌き」というのは歩いて楽しい魅力的なまちづくりのための手段の一つでしかないと思うので、まちにとって本当に最適な仕組みを検討していく、というのがこの事業の本質ですね。

まちなかに点在するスペースをつないで居場所づくり – 広場の活用事業 –

 

鈴木さん:これも原町田大通りの活用と重なるのですが、中心市街地全体で休憩場所などがあまり無いのがまちとしての課題なので、今ある広場や公開空地、事業者さんが持っている広場などを活用しながら、休憩場所の確保や、来街者が居心地よく過ごせるようなスペースが点在するまちにできたらいいなと考えています。

−ぽっぽ町田の広場だけではなく、他の広場や空き地などとの連携も考えていらっしゃるのですね?

 

鈴木さん:「ぽっぽ町田の広場っていいよね」というお声も多く、専門家の方々にも評価していただいている広場なので、それをまちに波及させていきたいと考えています。そっくりそのまま増やしていくわけではないですが、ちょっと木陰で休みたいなとか、ごはん食べたいなとか、本を読みたいなとか、いろんなアクティビティをまちなかに点在させられると、環境として良くなるのではないかと考えています。テントや感じの良い備品なども用意して、他の広場にも、いつでも貸し出すことも検討しています。こういう状況だからこそ、非日常を求めるのではなくて、中心市街地を日常的な場所として快適に使っていただけるようにしていくのが一つのポイントなのかなと思います。

市民が1歩目を踏み出すためのステップに – リノベーション事業 −

鈴木さん:これは主にぽっぽ町田の1階を使って行う事業で、もう少しいろんな人が入ってきて拠点になるような環境を整備していきたいと考えています。中心市街地はやはり家賃が高く、出店となるとハードルが高い。そこに対して、私たちは何ができるかと考えたときに、「想いを育てる」というか、何かにチャレンジしていきたい人を応援することにフォーカスしていきたいと思っています。起業支援の仕組みは町田市や商工会議所などにもありますが、その前段階の「こういうのやりたいよね」とか、「こういうのをやってみたいんだけど、やり方が分からない」とか、そもそもそこまで行ってない状況の人たちを受け入れられるような取り組みを検討しています。その中から盛り上がってきたものを、企業支援のプラットフォームに乗せてあげる。そして継続的に営業ができるように、その先も応援してあげられるような仕組みを将来的にはつくっていけたらと。

青木さん:やはり活気のあるまちというのは、いろんな活動ややりたいことを応援する体制や環境が大事だと思うんです。ぽっぽ町田での経験を土台とし次は芹ヶ谷公園でやってみたいとか、原町田大通りでやってみたいとか、次のステップに進んでいけるその受け皿としても場をつくっていきたいと思います。

青春時代を過ごしたまちにもう一度輝きを

―ここまで町田まちづくり公社としての取り組みのお話を伺ってきましたが、鈴木さんと青木さんが、なぜこの会社を選ばれたのか、伺ってもよろしいですか?

 

鈴木さん:私は小田急線沿線の出身で町田に育てられたという想いがあります。小さい頃はまずは地元のまちで遊んで、成長するとだんだんと町田に行くという、町田はステップアップした先のまちでした。周辺の街にも大型の商業施設ができて商環境が変わる中で難しい面もあるのかもしれませんが、他地域にない、居心地の良いまちになってほしいという思いがあります。昔からのお店がなくなってしまったり、古着などの町田のカルチャーが薄れていってしまったりする中で、原点というか、青春時代を過ごした思い入れがあるまちなので、もう一度、みんなが「来て良かったな」と思えるまちにしていきたいという気持ちがあります。

町田には芹ヶ谷公園やシバヒロもあるし、文学や文化という面でも素晴らしい施設がたくさんあるじゃないですか。そういうものを生かしながら、まちの魅力・価値を上げていくことができたらいいんじゃないか、また違う形で町田がフォーカスされるようになったらいいなと思っています。

町田は「人」が魅力。まちづくりはみんなでするもの

青木さん:私は町田にはゆかりが何もなくて、何も知らないまちだったんです。引っ越してきて、たまたま住んだのが町田。住んで思うのは、町田は「面白い人」が多い。個の人たちがすごく強い。関わっている人たちやまちの様子からもまちへのいろいろな想いを感じます。それが発信されて、いろんなところからさらに人が集まってきている。例えば芹ヶ谷公園にも何かやりたい人も集まってきていて、人が人を呼んでいるところが町田の魅力だと思います。

まちづくりは1人でできるものではないですし、いろんな人が関わっていく中でできていくものだと思います。一方通行で「できちゃった」ではなく、みんなでつくり上げていくまちになったらいいなと思っています。みんなが想う「こうしたい」が集ったらより面白いまちになると思います。

まとめ

町田の魅力を高めるために、行政と市民の間で、民間視点でまちづくりに尽力する町田まちづくり公社。新しい事業を担う若手スタッフ鈴木さんと青木さんには、それぞれ個人としての町田への温かい想いがありました。多様な立場の人が、町田を想う気持ちを真ん中にしてつながり合い、行動している。それこそが未来につながる「今」の町田の紛れもない魅力だと感じたインタビューでした。

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