INTERVIEW

2021原町田大通り滞留空間創出社会実験~もしも原町田大通り~ 

2022.03.26

原町田大通りの車道拡幅部分に突如現れた“空間”。

2021年11月20日から12月20日の1ヶ月にわたって、「2021 原町田大通り 滞留空間創出社会実験—もしも原町田大通りー」が行われました。

原町田大通りの車道拡幅部分にパークレット※を設置、人工芝やウッドデッキ、トレーラーハウスの3エリアで構成。ベンチやイス、ビーズクッションのほか、プロジェクターやスピーカーなども貸し出され、実験期間中はさまざまな展示や実験企画も行われました。

※車道の一部を転用した、休憩や飲食ができる「人」のための空間

今回は実験区となったスペースの様子や、12月4日に行われた「原町田大通りをライブハウスのようにみんなが音楽を楽しむ空間にする」の模様などをご紹介します。

パークレット内の様子をレポート!

この日は朝から実験企画のための設置準備が行われていました。

簡易的な屋根があるので、強い日差しは防ぐことができます。

パークレット内にはベンチやビーズクッションなどくつろぎスペースのほかに、「きんじょの本棚」も設置。

「きんじょの本棚」は本棚が設置してある場所なら、どこで借りて、どこで返してもいい“まちの本棚”。ふらりと立ち寄って、ベンチに腰下ろして本を読む……なんて空間が駅前にあるのも素敵ですね。

また、トレーラーハウスでは展示やラジオ収録なども行うことができます。パークレット内をどのように使うかは街の人たち次第!空間そのものについてだけではなく、空間の使い方を考えるだけでもワクワクできそうです。

ある日の“実験実験”に密着!

この日、パークレット内で行われたのはマチノネさん主催の実験企画です。

実験企画のコンセプトは「原町田大通りをライブハウスのようにみんなが音楽を楽しむ空間にする」。ライブハウスというと、地下であったり、クローズドな雰囲気をイメージしますが、今回は屋外、それも駅前の大通りに多くのアーティストが登場し、歌声を響かせることになります。


ライブ前にはマチノネのマツムラタダトシさん、山さんによるトークでまずはご挨拶。

トレーラーハウス内での「beforeトーク」のほか、屋外ではラジオトークも行われ、マツムラさんや山さんの町田の思い出や、おすすめのお店についてなど町田の話題が満載のトークが繰り広げられました。

そして、いよいよライブがスタート!

トップバッターを飾ったのは、色葉さんです。

山さんの大学のサークルの後輩でもあるという現役大学生の色葉さんは、下北沢を中心に活動中。トップでの登場、寒い中での演奏ということで少し緊張気味の様子でしたが、伸びやかな歌声が原町田大通りに広がっていきます。

通りがかる人たちも気になる様子で足を止め、パークレット内に入り、ベンチに腰かけて音楽に耳を傾ける人の数が次第に増えていきます。ビーズクッションに座って、音を楽しむお子さんの姿もありました。小さなお子さんがライブハウスで音楽を聴く機会は少ないものですが、街中でこんな企画があれば、生の音を聴く機会も増えそうですね。

色葉さんに実験企画の感想をお聞きしました。

「めちゃくちゃ緊張しました。ライブハウスとは違った緊張感があって。車が横を通るし、人歩くし、普通座って見られることもないですし。驚きがいっぱいでしたね(笑)今回ならではの音楽ができたと思います。

こうやって生の音が大通りで流れているのは聴き手からしても、新鮮でいいですよね。

こういうスペースが常設されるとしたら、出る側も聴く側もハッピーですよね。基本的に街に音楽が流れている状況っていうのがもっと溢れていてもいいのかな、と思います」

色葉さんのほかにも、松村徳一さん、シナリオアートクミコさんが登場。

そしてトリを務めたのは山さんです。

山さんのステージではマツムラさんとのセッションのほか、この時期にぴったりの新曲としてクリスマスソングも披露。そして1曲演奏するごとに足を止める人が増えていきます。老若男女問わず、ひとつの空間で音楽を共有している光景はやはり胸が熱くなるものがありました。

「たまたま町田に遊びに来た」という女性3人組は、この日初めて“ライブハウス体験”をしたと言います。

「初めてこういうのを観たんですけど、歩いててちょっと気になって戻ってきました。引き込まれるような歌声が聞こえてきてすごく魅力的でした」

「普段、音楽は聴くんですけど、実際に演奏するところって観たことなかったんですよ。すごい楽しそうに歌っている姿を見て、なんかいいなあ、と思いました」

今回、新たな試みを実験企画で行ったマチノネさん

sottoの山さんや町田 the play houseのマツムラタダトシさんが中心となって、音楽を始めとしたさまざまな町田の「根」の部分を伝えるための発信を行っています。

演者として出演もされた山さんとマツムラさんにお話を伺いました。

マチノネができたのは約3年前のこと。

山さん「町田は大学時代(※玉川大学出身)にお世話になった街だし、好きな街でもあるので、またいろんな人と繋がれたらおもしろいな、と思ったのと、町田に関わるきっかけになった町田大學というラジオの金田さんや落合さんと会ったときに、30過ぎたおじさんが夢の話をしていて。町田でフェスをやろうという話をしていたんですけど、町田の音楽を盛り上げたいね、ライブハウス発のフェスはないから形にできたらいいね、という想いがマチノネのきっかけでした」

町田 the play houseのマツムラさんが合流後、マチノネという名前がつけられました。ただ、コロナ禍で活動できない時期も長くありました。そんな中、行われた今回の実験企画。社会実験への参加の話は、町田まちづくり公社側からのオファーがきっかけでした。

マツムラ「マチノネの活動は耳に入っていたみたいで、せっかくなのでやってみませんか、と言っていただきました。社会実験と、マチノネのやっているコンセプトと近いというか……。町田の文化ってバラバラなんだけど、いろんなものがざっくばらんにある。それをつなげて、ひとつのカルチャーにして、発信したい、という気持ちがあったんです。まさに今回、僕らがやりたいことと一緒だったので、やることはスッと決まりましたね」

そして、大通りを「ライブハウスに」。「コンサート会場」ではなく「ライブハウス」にこだわったのには、山さんにもマツムラさんにもそれぞれ理由がありました。

マツムラ「コロナ禍に入って、正直、ライブハウスへの風向きが悪かったですね。アウトローでいいんですけど、あのときの悪者感っていうのは悔しいな、という気持ちが個人的にありました。やっぱりライブハウスというものを知ってもらわないと始まらないな、と思ったんです。嫌いになるなら、知ってから嫌いになってもらいたい。

今は、町田にライブハウスが生き残ったので、その文化を伝えていきたいな、というのがありますね」

山さん「僕はコロナ禍の中でもライブが出来ていたほうなんですけど、その中でライブハウスや音楽に教えてもらったことはたくさんあります。それを恩返しするじゃないですけど、ライブハウスを発信するというのが今の僕らができることかな、ということでしたね」

今回の実験企画の感想は「大変だった。楽しかった。この2つに尽きる」。大成功を収めたと言える実験企画ですが、実験が実験のままで終わってはいけない、という思いも強くあります。

マツムラ「こういう実験をやってくれたのは本当によかったですね。だから、継続してほしい、というのがひとつの願いです。町田に長くいるけど、火種はつくものの、続かないことが多いんですよね。根付かないと意味がない。この時期になったら町田でフェスがあるよ、というふうに未来に繋がっていってほしいです」

山さん「出演したアーティスト側としては、純粋に一緒にチャレンジできたのが楽しかったです。チャレンジすると次どうしようとか迷うこともあると思いますけど、今回の実験企画に関しては社会実験ということでいろんなチャレンジをしていけばいいのかな、という印象でした。音楽だけじゃなくて、いろんな文化があるし、みんなで支え合ってがんばっていく風土ができあがれば、実験だけじゃなく、ひとつの形になるのかな。協力し合いながら諦めず継続するのがひとつの指針かな、と思います」

「いつか、原町田大通りでフェスができたら最高だね」と話すおふたり。

今回の実験区は、その第一歩になるかもしれません。

町田自体もテーマパークのようになれば

今回、1ヶ月間行われた社会実験。

さまざまな試みがパークレット内で行われましたが、その目的とこれからの原町田大通りについて町田市役所の桑原さんと竹中さんにお聞きしました。

--今回の取り組み自体はどのようなものになるのでしょうか。

桑原さん「『町田市中心市街地まちづくり計画』のプロジェクトの一つである、『原町田大通り憩いと賑わい空間を創造するプロジェクト』に基づいた実験になります。

去年、中心市街地来街者の滞留行動の調査を行いました。そこでわかったことは原町田大通りは人はたくさんいますが、信号待ちであったり、歩いているだけで、人の活動の種類が少ない場所ということでした。

しかしたくさんの人がいる場所という意味では憩いと賑わいの空間を作り出すのに非常にポテンシャルを持っているということです。そこをうまく活用していくための社会実験になります」

 ――実験を見て感じられたこと、気づかれたことはありますか?

桑原さん「早朝の時間帯は通勤や通学などで足早に歩いていらっしゃるので、パークレットを利用される方は少ないですが、10時を過ぎるとお店も開き始めると、買い物に来る方がいらっしゃるようになり、ちょっと座って休憩されたりする姿が見られますね。また、芝生スペースでお子さんが遊んだりする姿も見られるようになり、やっぱりこういうスペースがあると、人が滞留してくれて、賑わいができますので、非常に良い感じだな、と思っています。」

竹中さん「『近所の本棚』さんが用意したくれたおもしろうそうな絵本が本棚においてあるのを見て、立ち寄られたお子さん連れがこれなんだろうって、興味を持っていただいているのは、なんかいいな、と思いましたね。急に出来た場所なので、皆さんおそるおそるというところはあるんですけど、それは最初だからしょうがないのかな、と。固い感じではなく、歩きながら、フラッと過ごせるようなスペースがすごく素敵だな、と思っています。」

――今回の実験を受けて、今後の計画や展望についてお伺いできれば。

桑原さん「今回の社会実験での来街者によるパークレットの使われ方を検証して、パークレットのデザインや歩道拡張の設計を行い、2023年度に、パークレットを設置していければ。原町田大通りは位置的にも町田市のメインストリートといった場所になっていますので、ここを目指して人が来て頂けるような、町田市のシンボルになればな、と思っています」

竹中さん「駅前で、とても便利な場所ではあると思うんですけど、駅前なのに、落ち着ける、子どもと一緒にいても安心して楽しめるような場所になっていって欲しいな、と一市民としても思っています。これから整備するパークレットに腰を下ろしてくつろげるとか、お子さんが遊んでるとか、学生さんがダンスしてるとかゴロゴロして本読んでるとか、本当に駅前なんだけど広場のように寛げるような、そういう風景ができたら嬉しいですよね」

桑原さん「ディズニーランドとか、USJとかテーマパークがありますが、中心市街地には商店街もあれば大型店もあり、また、芹ヶ谷公園や町田シバヒロ、文学館もあります。街全体をそんなテーマパークのように楽しんでもらえたらいいな、って思います」

みんなで作る、まちだの未来

今回のキャッチコピーとして掲げられているのが『もしも原町田大通りが「  」だったら

嬉しい』。パークレット内には、実際に街の方たちからの『もしも原町田大通りが「  」だったら嬉しい』のアイディアを記入していただいていました。

『もしも原町田大通りが「映画館」だったら嬉しい』

『もしも原町田大通りが「ストリートバスケコート」があったら嬉しい』

「遊園地」だったら、「カフェがいっぱい」あったら、「愛に満ちてくれて」いたら……。

たくさんの「もしも」は、いつか来る街の未来の姿なのかもしれません。

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