INTERVIEW

町田らしいアートや文化が人を繋げる公園に。市民と創る、これからの芹ヶ谷公園

2024.03.29

東京都の南端にある、人口約43万人の都市「町田」。新宿から小田急線で約30分、横浜と八王子をつなぐJR横浜線も乗り入れ、横浜駅からも約30分と交通利便性は抜群で、1970年頃から団地が開発されたことに伴い、人口も増え続けて来ました。

かつては八王子で生産された生糸を横浜港へと運ぶ街道「絹の道」を中心に商業が栄え、やがてJRの駅が小田急線の駅の近くへ移転したのを機に、町田駅前には百貨店や大型商業施設が次々と開業。ピーク時には商圏人口230万人とも言われるほど、「買い物するなら町田へ」と近隣の市町村からも多くの人が集っています。

そういった、商業が盛んなまちとしてのイメージもある町田ですが、町田駅からすぐ近くのまちなかに公園や広場があるのもまちの魅力のひとつです。今回の特集インタビューは、そんな町田のシンボルとも言える芹ヶ谷公園の将来について。

新しい美術館の開設に向けた再整備プロジェクトを支える、町田市役所の公園緑地課と文化振興課の方々にお話を伺いました。

公園と美術館、両者の魅力を活かす「パークミュージアム」というコンセプトの元、市民の方々の「やってみたい」という気持ちを起点に、芹ヶ谷公園のわくわくする未来を描いています。

自然と文化、芹ヶ谷公園の活かし方をみんなで創造する

ーここ数年で様々なイベントの開催や、キッチンカーの導入など、芹ヶ谷公園での新しい過ごし方が生まれていると感じます。この背景にある「パークミュージアム」とは、どのような取り組みなのでしょうか?

元々のきっかけは、本町田にあった町田市立博物館の老朽化による閉館に伴い、芹ヶ谷公園エリアへの移転が決まったことです。

将来的に、芹ヶ谷公園には国際版画美術館と合わせて二つの美術館が隣接することになるので、自然とアートを楽しめる場所として再整備していくことになりました。

芹ヶ谷公園は、中心市街地からもアクセスしやすい位置にあり、自然も豊かな都市公園です。そのため、新しく美術館ができることを単体で考えるのではなくて、アートや文化の楽しさと公園の魅力を一体に広げていきたいという思いがあったんです。

「パークミュージアム」というコンセプトは、市民の方々も交えた話し合いの中で出てきた要素を積み上げてできました。”公園全部がまるで大きな美術館になるよ!”という意味を込めた、プロジェクト全体のコンセプトになっています。

町田市役所では公園緑地課と文化振興課との2課がチームとなって担当していますが、実際に公園を利用する市民の方々の「やってみたい」という気持ちを起点に、イベントや実証実験を実施してきました。


『芹ヶ谷公園”芸術の杜”パークミュージアム コンセプトブック』より引用

ーこれまではどのような活動をされてきたのですか?

大竹さん 再整備を新たな気持ちでスタートするにあたり、、立ち上げのミーティングを始めたのが2019年です。

市民の皆さんと一緒に、まずは公園でやってみたいことについて、ざっくばらんにアイデア出しをしていきました。

「Made in Serigaya」という誰もが参加できるプラットフォームが誕生したのもこれらの流れを汲んでいます。

町田や芹ヶ谷公園に対して愛着や思いを持つ方々が、気軽に参加しやすい仕組みにしたかったので、オープンな受け皿を作りました。市民の方から市外の方まで、芹ヶ谷公園や町田市での活動に興味がある人であれば、誰でも参加いただける場です。

そして、”パークミュージアム”とは言うけど、つまりどういうこと?どんな公園になるの?というのをみんなで想像・創造し、実際に目で見て体感する「フューチャーパークラボ」という市民参加型の実証実験イベントを定期的に開催しています。

Made in Serigayaで出たアイデアの実践の場としても位置付けており、色々な方に参加いただくことでアイデアや可能性が広がっていきました。

また、プロジェクトがスタートした当初はコロナ禍だったので、最初はオンラインでの対話や、ゲストを招いたトークイベントも行っていました。

ただ、自粛でお家から出られない状況があったからこそ、人が集まれる空間の豊かさ、自然に対する思い、改めて公園という存在の価値が高まった感覚もありました。

町田ゆかりの方を主体に企画しながら、現場にも関わらせていただく中で、年々コミュニティが広がっていることも実感しています。

もしも市だけで企画したものを実行して、データを分析する方法を取っていたら、今のような広がりは生まれづらかったと思います。

公園のオープンな土壌と、アートの視点の相乗効果

ーイベントを実施する際に、どのようなことを意識されていますか?

原田さん 単発のイベントで人をたくさん集めることよりも、町田で活動している方やアーティストと出会えたり、そこから興味や愛着を持って繋がれたりすることを大事にしていますね。

イベントに参加していただく時も、まずは芹ヶ谷公園全体をご案内して、土地の特徴を知っていただきます。例えば、先日大学生が実施したライトアップイベントでは、芹ヶ谷の勾配のある地形を活かした装飾を考えてくれました。

「Made in Serigaya」という言葉の通り、この場所でやる意味をみなさん主体的に考えてくれていますね。

吉川さん 新しい発見があるような工夫も、常々みなさんと考えています。先述の公園のライトアップは恒例イベントになっていますが、毎回新しいスポットを探して、土地の魅力に注目いただけるような形にしています。

他にも、「アートな動物園」という企画では、公園内に町田のアーティストによるかわいい動物の絵を散りばめることで、いつもの散歩道も美術館のように変身します。

公園にアートの要素が加わることで、今まで何気なく素通りしていた公園の魅力も発信できるようになったと思います。

小島さん 2つの課が一緒に取り組むことで、ただ公園を使いやすくするだけじゃなくて、アートやカルチャーの要素もどうしたら取り込めるのかも考えるようになり、職員としての立場ではありますが、とても楽しんで取り組んでいますね。

吉川さん 色々な年代の方がのびのびと過ごせる公園だからこそ、アートや文化をより身近に体験できる良さもあります。

例えば、公園で行う音楽のコンサートなら、お子さまが元気に声を出しても大丈夫です。お絵描きをする時も、外なら大胆に汚れを気にせず描けますよね。

公園の中に美術館があることで、外遊びへ行くついでにアートに触れられるのは、芹ヶ谷公園ならではです。

大竹さん 最近はストリートピアノを設置するイベントを行ったのですが、そこで初めてピアノを触ったとお話してくれる子もいました。

そういう初めての経験や、わくわくすることを芹ヶ谷公園で体験できて、記憶に残っていったら嬉しいですよね。

公園だから生まれる会話、町田への思いで繋がっていく

ーイベントを重ねる中で感じる変化や、印象に残っていることはありますか?

原田さん 公園の中にキッチンカーを出店いただくようになってから、公園での過ごし方に変化を感じますね。

午前中から遊びに来て、お昼を食べて午後もイベントで楽しむという、一日過ごせる公園になってきたことが嬉しいですね。

小島さん 当初キッチンカーはイベントで実験的に実施したものでしたが、今ではイベントじゃない日でもキッチンカーがある風景が日常になってきました。

この取り組みは思った以上に反響が大きくて、芹ヶ谷公園以外の市内の公園でも、キッチンカーを取り入れる実証実験が広がっています。

市民のやりたいことを実現する場所としての芹ヶ谷公園の活用が、公園の新しい使い方のモデルになることも実感しました。

初めてキッチンカーに挑戦する方が公園を出店場所として選んでくれることもあり、今では継続的に出店してくれたり、キッチンカーを起点に新しいコミュニティができたりしています。イベントで新しいことに挑戦して、そこから人との繋がりが広がっていく、そんな流れができていますね。

大竹さん 大学のビッグバンドに演奏に来てもらったことがあるんですが、学生さんがすごく優しくて、公園にいる子どもたちに楽器を触らせたり、教えてあげたりしていて、親御さんとも一緒に楽しくコミュニケーションをとっているんですね。

やっぱり公園という場所が持つ、多様な人を受け入れるオープンな空気が効いてるように思います。

公園には日常的に来ている方や、たまたま散歩に来た方など、パフォーマンスが目当てじゃない人も集まりますよね。そのため、普段は見てもらえないような人たちにも届けられるという点は、参加者にとっても価値になり得ると考えています。

一番最初に作ったポスターにキャッチコピーが書いてあるのですが、この時に描いた公園の姿に近づいているなと思います。

イベントなどで公園へ行くと、何度も参加してくださっている方、向こうから話かけてくださる方、実際に”いつもの笑顔”が見えますし、新しい発見があるんです。みなさんと積み上げてきたことが、徐々に形になっているのだと感じますね。

ー町田駅から芹ヶ谷公園へ向かう間には中心市街地が広がっていますが、お店や施設との交流はどのようなものがありますか?

 大竹さん 芹ヶ谷公園だけでなく、町田市民文学館や町田市立中央図書館などの公共施設や、民間のパリオさんなどと一緒に、宝探し形式やシールラリーでそれぞれの施設を回るイベントなども行いました。

今年は「芹ヶ谷まんがめぐり」という、漫画と町めぐりを掛け合わせたイベントも実施しました。町田市内に点在するオブジェ等をネコたちがめぐる作品をイラストレーター・漫画家のネルノダイスキさんに描き下ろして頂き、公園内に展示しました。園内で漫画を楽しみながら街めぐりができる企画です。

多くの人に楽しんでいただけて、実際に、街なかの作品を巡り、ブログ記事にまとめてくださる市民の方もいらっしゃいました。まちなかの店舗でもポスターの掲示にご協力いただいた店舗さんもあります。

芹ヶ谷公園の位置は少し駅とは離れていますが、だからこそ中心市街地と一緒に盛り上がっていくことで、町田のまちを楽しめる範囲も広がっていくと思うんです。

人と繋がり、ワクワクできる公園をみんなで創る

大竹さん 最終的には民間の企業などに役割を任せることで、さらなる公園の可能性を広げていきたいと考えています。実際に多くの方と企画を手掛けてきた中で民間だからこそ実現できることもたくさんあると感じています。私たち行政は後ろから支える役割として分担できればと思います。そのために、私たちが関わる部分が変わっても、市民の方々が主体性や町田への愛着を持ち続けられる状態を作っていきたいですね。

小島さん この仕事をしていて特に嬉しい瞬間は、イベントを一緒に作ってくれた方々や、来園してくれた方同士でコミュニケーションの積み重ねが生まれたり、そこからコミュニティに発展したりする瞬間に立ち会える時です。

そういった繋がりが育てば、一人だと難しいと感じることも、誰かと一緒なら挑戦できたり、実現しやすくなったりすると思うんです。

市の職員という立場だと日々現場に行くことは難しいため、そんなコミュニティを繋ぐ役割を日常的にやってもらえるようにお任せしていけたら、さらに広がりが出てくると思います。

吉川さん これまでのイベントを見ていても、新しい人が入れば入るほど、挑戦できることが増えています。そういう意味でも各種大学団体や民間事業者ともっと協力関係を築いて、Made in Serigayaに関わる方々の成長や発展に繋げていきたいです。

▼Made in Serigayaに興味がある方は、こちらからご参加くださいhttps://www.city.machida.tokyo.jp/bunka/park/shisetu/serigaya/art_project/made-in-serigaya-jokyo/madeinserigayasanka.html#cms59CB3

 

COLLABORATION PARTNER