PEOPLE
町田にアトリエを構えるフラワーアーティスト/花とんぼ 座間アキーバさん、磯部エイミーさん
2020.10.26
【ジャンル】フラワーアート
【ご担当者】座間アキーバさん、磯部エイミーさん
【所在地】中町
芸術チーム「花とんぼ」
町田の人はアートを楽しむ時に都心へ行ってしまう。町田市民の方から、時折そのような声を耳にします。しかし、町田で活動するアーティストが意外とたくさんいらっしゃるのをご存知でしょうか。
世界的に活躍するフラワーアーティスト、座間アキーバさんもその1人。長崎ハウステンボスで行われる世界フラワーガーデンショーにて過去4度にわたって特別展示を披露、2018年にはシンガポールで開催された世界ガーデンフェスティバルに日本代表として出場するなど、フラワーアーティストとして目ざましい活躍を見せるアキーバさん。自身が代表を務め、奥様の磯部エイミーさんがクリエイティブディレクターを務める芸術チーム「花とんぼ」のアトリエを町田に構えています。そんな花とんぼのおふたりにお話を伺いました。
「アキーバはお花をやった方が良いよ」
町田駅から歩くこと約20分のところにある、えんじ色のレンガ造りの建物。その1番奥の扉の向こうに広がる空間はまさにひみつのアトリエ。国内外問わず多くの人々を魅了するフラワーアート作品が、この場所から生み出されています。
1歳から4歳までを町田市内で過ごしたというアキーバさんが、フラワーアーティストとして再び町田にたどり着くまでの道のりはまさにアドベンチャー。4歳で渡米し、シアトルで学生時代を過ごした後、ニューヨークで自動車の整備士として就職しました。しかし働きはじめて3年が経つ頃には、「新しい冒険がしたい」という気持ちが芽生え、住み慣れたNYを離れ旅に出たそうです。モデルをしながら、香港、タイ、中国などを旅し、何気ない気持ちで帰ってきた日本。そこにはお花との出会いが待っていました。
「アキーバはお花をやった方が良いよ」。そう声をかけたのは、アキーバさんが参加していた社会人サッカーチームの先輩でした。当時、自分の人生のための何かを猛烈に勉強したいという気持ちがあったアキーバさんは、お花の検定や教科書をつくる会社で働いていた先輩の一言によって、「勉強ができるなら」とそれまであまり関心のなかったお花の世界に足を踏み入れました。
自分には筆ではなくお花だった
人生は選択の積み重ね。積み重ねた選択の末に巡り合ったフラワーアートに対して、アキーバさんは特別な感覚を覚えたと言います。
アキーバさん「画家である母の影響で、幼少期はよく絵を描いていたんですが、絵描きになるほど好きではなかったし、自分でもあんまり才能がないなと思っていました。
でもお花だと、何を創りたいか、何を組み合わせたいかというのがあまり考えずにできてしまう。アートを創るっていう血は流れているのかもしれないけど、どのメディアを使うかという点で、自分には筆ではなくお花だった。花は表現する技法として早い段階からしっくりきていて、これだ!となった時は今でも覚えています。」
こうしてフラワーアーティストとしてのキャリアを歩み始めたアキーバさん。アーティストとしても講師としても精力的に活動し、都心のアトリエが狭く感じるようになった2016年、所縁のある町田の一軒家へとアトリエを移したそうです。1年後の2017年にはエイミーさんと共に株式会社花とんぼを設立。店舗への生け込みやイベントでの装飾デザイン事業、ウエディングのプロデュース事業、芹ヶ谷公園で親と子と花の芸術祭を開催するなど、「新しい冒険」は今も続いています。
お花は完璧に綺麗なもの

(撮影:Andrew Curry)
多くの人々を惹きつけるアキーバさんのフラワーアート。作品を創るときに意識していること、大切にしていることを伺いました。
アキーバさん「お花ってもう完璧に綺麗なものなんですよ。地面から完璧なデザインのものが生えてきているわけだから、本当は手を加えなくても十分に綺麗なんです。だからお花を使った作品はどれも綺麗で、作品を見た人がアーティストを区別するのはものすごく難しい。
お花を始めて5年目以降は、『座間アキーバはこういうものを作るんだ』っていうのを確立できるようなアーティストになりたいと意識するようになりました。その第1歩が、もう既に綺麗なものをいかに崩さずに、自分のエッセンスをつぎ込んだ作品を作れるかということ。今はその真っ最中です。
もう1つ大事にしているのは、お花という命あるものを扱っているので、生きているところから死ぬまでの過程をいかに表せるか。枯れ始めや枯れる寸前までを作品に表現できる人は本当にすごいと思うし、自分もそこを目指しています。」
花はアートなのか
一方エイミーさんは、アートディーラーとして働いていた経験から、花とんぼのフラワーアートについてこのような考えを持っているそうです。
エイミーさん「私は、この会社の立ち位置は花をアートにしていくことだと思っています。ずっとディーラーとして、アートに金額的な価値を見出す人たちを相手に仕事をしてきたので、(形が残らないフラワーアートに)少し違和感があって。『花はアートなのか?』という問いを常に掲げながら仕事をしています。
花はもちろんアートなんですが、私たちはお客様の依頼を受けてブーケなどを制作する事業も行っているので、そういったものとフラワーアートの選別をしないといけない。言葉で違いを説明することはできるけれど、それをしっかり見せていけるようにというのを目指しています。」
異なるフィールドに立つ2人がそれぞれの目線を交差させながら、花という命ある画材を用いたアートに向き合っている。そんな2人の花とんぼだからこそ、多くの人の心に届く「フラワーアート」を届けることができるのではないでしょうか。
2020年夏には広尾にワゴン型のフラワーショップ「The Wagon by Hanatombo」をオープン。さらに活躍の場を広げる花とんぼから、ますます目が離せません。
町田はポテンシャルがある街
最後に、これまで多くの街を旅してきたアキーバさんに町田の印象を伺いました。
アキーバさん「町田はポテンシャルがある街。人口も多い、駅前は出来上がっている、隠れアーティストもいっぱいいる、公園もいっぱいある。これからいろいろとできそうな街、もっと良くなれる街だなと思います。
例えば、旅人の通過点だったという歴史があるので、そういった歴史を魅力的に発信できるような宿があってもいいんじゃないかな。そういう場所があれば、アーティストがイベントを開催することもできる。他にも良いものがいっぱいある街だからこそ、もっと何かができるんじゃないか。そういう意味で、本当にポテンシャルのある街だな、と思っています。」
町田の人はアートを楽しむ時に都心へ行ってしまう。そんなイメージがあるけれど、この街ではたくさんの素敵なアーティストさんが活動しています。これもきっと、町田の1つのポテンシャル。
今日は都心ではなく町田でアートを楽しんでみよう。そんな町田人の選択が積み重なった時、町田はさらにパワーアップした魅力的な街として脱皮することができるのかもしれません。
取材にご協力いただいた花とんぼさん、ありがとうございました。
株式会社 花とんぼ
所在地: 東京都町田市中町2-17-21ピアレジ青山105
TEL: 042-866-5864
URL:https://www.hanatombo.com/
Instagram:@hanatombo @thewagon_byhanatombo