PEOPLE
音楽でつながる地域のハブを目指して / まほろ座 MACHIDA 佐々木良さん
2019.07.23
【ジャンル】ライブハウス
【ご担当者】佐々木良さん
【所在地】森野1丁目
ライブハウスがいくつもある町田
「まほろ座 MACHIDA」(以下、まほろ座)は、町田駅前のショッピングビル「パリオ」地下1階にあるライブハウスです。パリオのビルのオーナーである中村惠さんの「パリオを町田の文化発信・交流拠点にしたい」との想いから、2015年に始まりました。
実は町田は、昔からライブハウスが元気な街。そこから巣立っていった有名なプロミュージシャンも数多くいます。
「まほろ」とは、古語で「素晴らしい場所」という意味。近年では小説家 三浦しをんさんの、町田を舞台にした直木賞受賞作「まほろ駅前多田便利軒」が映画やドラマにもなり、町田にも賑わいがもたらされました。この場所で皆が自分自身の輝くスターを見つけられますように。そんな願いを込め、このライブハウスは「まほろ座」と名付けられました。
レストランを併設した、オールジャンルのまほろ座
ライブハウスと聞くと大音量のロックなどを想像してしまう人もいるかもしれませんが、まほろ座は3世代に渡り、音楽と食事を楽しめるエンターテインメント・レストラン。ポップスはもちろん、ジャズやクラシック、ミュージカル、フラメンコ、落語、伝統芸能など、様々なジャンルの公演を年間300近く行っています。
そのブッキングや公演当日の運営、レストランの切り盛りに至るまでマネジメントしているのが、必殺仕掛人(ブッキングマネージャー)の佐々木良さん。佐々木さんは自らがミュージシャンでもあります。高校生の時にエレキギターを始め、2001年に町田、相模原のメンバーで構成されたバンド「キンモクセイ」でメジャーデビュー。翌2002年には紅白歌合戦にも出場しました。現在は、町田出身のお笑い芸人 佐藤満春さんを中心にしたバンド「サトミツ&ザ・トイレッツ」のメンバーでもあります。
月に数回は自らステージに立ちながら、まほろ座を切り盛りしています。
お互いに思い入れのある関係づくりを
多忙な中でも、佐々木さんのこだわりは、ブッキングしたアーティストの公演中は会場に身をおき、ライブの空気感や温度感を自分自身も一緒に体感すること。
佐々木さん「ブッキングだけしてライブを見ないと、お互いに思い入れがなくなっちゃうと思うんです。自分も演奏家なので、より演者側の立場に立ったきめ細かいサービスができるのが強み。僕は演者でもありながら元々裏方気質があるので、なおさらこの仕事はとても楽しい。
まほろ座は、名前が決まってスタッフを募集しなきゃという段階から関わっていますが、ここでの仕事はすべて自分達で1から試行錯誤して作ってきました。始まった頃から比べると、最初はこちらからオファーをたくさんしないといけなかったのが、最近は演者のリピーターが増えました。
心がけているのは、丁寧に誠実にアーティストに接することです。どうしようか迷ったら、『座長の中村なら、どうお客様に寄り添うかな?』と考えるようにしています」
町田の魅力は、人の空気感
佐々木さんは、2才の時に町田に来て、幼稚園・小・中・高と町田で育ちました。専門学校で高田馬場に出て都心に暮らし、町田から足が遠のいた時期もありましたが、再びこの街に戻って来ました。佐々木さんから見た、町田の魅力とは何でしょうか?
佐々木さん「町田の好きな所は、23区じゃないからこそ肩の力が抜けている感じ。神奈川県と思われても目くじらを立てない(笑)。それでいて、都心に出て行かなくても、一通りのことができる街です。店も街並みも変わりましたが、人のトーン、空気感のようなものは変わらないと思います」
音楽を通じて人の集まる場所に
今後のまほろ座について尋ねると、都心のライブ会場じゃないと見られなかったアーティストを呼んで、町田の人達が地元で楽しめるライブハウスにしていきたいと佐々木さん。
佐々木さん「まほろ座は、地域のハブになれたらいいなと思うんです。『音楽を通じて人の集まる場所をつくりたい』というのが実現したいことです。
円熟したアーティストにももちろん出演していただきたいですが、地元のアマチュアバンドや、趣味で音楽を楽しむ方々も出られるような場所でもありたい。町田という街にあるライブハウスである以上、地元は大切にしたいですし、その方が楽しい。町田にゆかりのないアーティストの方にも、ここで演奏する時には一瞬でも町田を意識してもらえたらと思います。
これからもずっと存在し続けることが大事ではないでしょうか。僕はやめる気は毛頭ないし、いかにこの場所を残せるかが重要。そのためには積み上げたものにこだわらず、その時々ご縁がつながり出会った人々が新たに集い合えるよう、柔軟であり続けたいと思っています」
子ども達に音楽を推進する街へ
そんな佐々木さんが町田市に期待することは、「スポーツ推進と同じく、音楽ももっと推進してほしい」ということだそうです。例えば野外で音楽イベントなどを開催しようとした時に、皆で音楽を楽しもうという気風がある街だったら、住民の理解も得やすく、音楽を通じての地域活性もしやすくなるのかもしれません。
こうした風土づくりは、時間をかけてやっていく必要があることですし、一つの民間施設だけではなかなか難しいことかもしれません。けれど、町田にとって音楽は、長年続く一つの文化であることは間違いありません。世代を超えて、地域の人が音楽でつながり合う街。それはとても豊かな都市の未来像ではないでしょうか。
まほろ座
所在地:東京都町田市森野1-15-13 パリオB1F
TEL:042-732-3139
営業時間:公演内容による
不定休 *詳細はウェブサイトでご確認ください。
URL:https://www.mahoroza.jp/