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パリオ

町田のアーティスト達が集まり、人がつながる場へ / 町田パリオ 中村惠さん 長田菜月さん

2019.07.23

【店名】町田パリオ
【ジャンル】ショッピングビル
【ご担当者】中村惠さん、長田菜月さん
【所在地】森野1丁目

昭和50年、町田駅前に最初にできたショッピングビル

町田駅前に昭和50年に開業した「パリオ」は、小田急百貨店ができる前に、この辺りではいちばん最初にできたショッピングビルです。町田駅前発展の最も初期の頃から、この街の歴史を見守ってきました。

オープン当時は、一つのビルにさまざまなお店が入った形態が目新しく、昔からの商業の街に現れたおしゃれなビルとして注目を集めたそうです。

やがて時代の流れと共に、町田駅前には多くの大型ショッピングビルが建ち並ぶようになりました。そんな中、パリオでは数年前から、いわゆるテナントビルの領域を超えた新しい動きが活発に始まっています。

パリオのオーナーである中村惠さんと、プランナーの長田菜月さんにお話を伺いました。

寄席や個展、団地活性、芸術祭。新しいことが始まる場

パリオ

パリオでは現在、フロアの一部を時間単位で貸し出すレンタルスペース事業を行う一方で、自ら企画・発信して街に賑わいや楽しみをつくっていく取り組みを行っています。

例えば落語家を呼んでの寄席や、町田にゆかりのあるイラストレーター・画家の個展などをパリオ内で行っている他、2017年1月に“まちだのまちとひとのかけ橋に”というコンセプトのもと「まちだはまちだプロジェクト」を立ち上げ、町田の魅力を掘り起こし、街と人がつながるイベントなども行っています。

具体的には、町田市内の団地をケーキやスゴロクに見立て、楽しく団地を知ってもらうイベント「遊団地」や、パリオ一押しのアーティスト達と共に町田のいいもの・いいことを発信する、年に1度の「パリコレッ!芸術祭」などです。

3年前からパリオのプランナーを務める長田さんが中心となって、企画・運営しており、回を重ねるごとに街の中に長田ファンも増えつつあります。

転換のきっかけは父の言葉

パリオの大きな変化のきっかけは、オーナーの中村さんが「ここで落語の寄席を開催したい」と思ったことでした。

中村さん「このビルは、もともとは父の知人のもので、その運営を父が請け負っていたんです。その後、父の所有となり、私は父から譲り受けました。

町田で不動産業を営んでいた父の信念は『わが町 街づくり』というものです。この言葉を半世紀以上も毎年、年賀状にしたためていました。賃貸業が目的ではなく、まちづくりをするために不動産業をしていたんです。

その父が亡くなる少し前に、ラジオで落語を一緒に聴いていた時、私が『パリオで生で寄席ができたらどうする?』と言ったら、父は『そりゃあいいなぁ』と言いました」

中村さん「それで私は、寄席を開いてくださる落語家の方を探し始めました。2010年の1月に上野広小路亭で、立川志の輔師匠の一番弟子である立川志の吉(現・晴の輔)さんに初めて出会い、落語を見て涙が出るほど笑って、きっと私と同じように好きになってくれる人がいるんじゃないかと、思い切って声を掛けました。翌月に志の吉さんがすぐに会場を見に来てくださり、4月に第1回を開催できたんです」

以来、立川晴の輔さんのパリオでの寄席は通算42回を超え、最初は昼の公演のみだったものが昼夜になり、次第にファンが増えて、今や2〜3日前にはチケットが完売してしまうほどになりました。パリオに、文化を楽しむために人が集まるようになってきたのです。

場所貸しから、人をつなげる場に

パリオ

©︎町田パリオ

2017年から、町田ゆかりのアーティストや作家と一緒に、町田のいいもの・いいことを発信する「パリコレッ!芸術祭」も始めました。第1回の出展者は少数でしたが、第2回から一気に増え、今年で第3回目を迎えます。

中村さん「パリオに携わったここ10年で、町田にはこんなにたくさんの作家の方がいらっしゃったんだと知りました。作家の方も、心の中に町田を思っていらっしゃるんです。町田を盛り上げるという考えから、仲間が増えて来たように思います。長田や皆の力で、パリオが『この指とまれ』という役割になって来たんじゃないかと」

町田は、皆を受け入れる街

中村さん「鉄道と道路整備が充実し、団地がたくさんできて、町田は発展して来ました。昭和40年代は高度成長期を迎え、人口増加により活気があふれ、町田を舞台にした三浦しをんさんの直木賞受賞作『まほろ駅前多田便利軒』が映画にもなり、第2の盛り上がりがありました。
人の選り好みをせず、行ってらっしゃい、でもいつでも帰って来ていいよ、という町田のゆるい部分を三浦さんが描いてくださって。

そこからパリオの地下のライブハウス『まほろ座』の名前も付けました。2015年にまほろ座ができてから、音楽でもつながりができ始めました。このライブハウスがあったからこそ、長田とも知り会えたんです」

現在、パリオでさまざまな企画のプランニングを行っている長田さんは、静岡県御殿場市の出身。音楽系の専門学校卒業後、青山や代官山のライブハウスでウェディングプランナーをしていました。そんな長田さんは、中村さんを通じて関わることになった町田の「温もり」に惹かれたと言います。

長田さん「都心に住んでいた頃、地域のつながりがないなと感じていました。代官山のライブハウスという場所柄、遠くから来るお客さんが多いですし。ところが、まほろ座の立ち上げから携わってみて、ライブハウスが地域の人が集まる場になりうるんだと教えてもらいました。

町田は、人とのコミュニケーションや地域とのつながりが温かかった。パリオは3世代が集まれる、昔の話も聞ける場所です。オーナーから想いを聞いて、それを次の時代につなげていくのが私達の世代の役割だと思いました」

2019年9月「43万人の個展」開催

世代を超えて町田の魅力や人をつなげて行く。そのためにパリオでは、アートのエッセンスを取り入れた場づくりを行っています。

町田ではかつて「23万人の個展」という、市民全員参加の伝説の祭典が行われました。町田市の歩みや歴史を知ってもらうきっかけづくりの一つとして、2019年の「パリコレッ!芸術祭」で開催される「43万人の個展」です。町田を代表する2人のイラストレーター中垣ゆたかさんと本田亮さんがコラボレーションし、市民や来場者と一緒に、人口約43万人の街「まちだ」を人をテーマに描く参加型アート。9月1日〜16日まで行われます。

中村さん「昭和40年代、団地ができるたびに1万人ずつ人口が増えて行った時代、新しい人が入って来て最初は馴染めない部分があったのが、だんだんと打ち解けて今の町田があります。シバヒロは、まさにその良いシンボルだと思います。町田の良さは、誰をも受け入れて、誰もが自由にでき、何かを持ちかけていくとすぐに反応が返ってくる所。私達の世代に共感してもらうのも嬉しいですが、若い人達の意見を聞きながら、次の世代にバトンを渡していきたいですね」

テナントビルから、文化と人をつなぐ拠点へ。パリオは世代を超え、出身地を超えて、「町田が好き」という気持ちで人々がつながり合うための「場」を開いてくれています。

【お店情報】
町田パリオ(まちだぱりお)
所在地:東京都町田市森野1-15-13
TEL:042-725-3710(パリオ管理事務所)
営業時間:10:00〜20:00
年末年始休
URL:http://www.pario-machida.com/

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