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柿島屋

一頭買いの馬肉料理が町田の笑顔をつなぐ / 柿島屋 柿島祐美子さん

2019.06.06

「絹の道」の真ん中で馬を扱う仕事から始まった

関東有数のグルメタウン町田の飲食店の中でも、馬肉専門店「柿島屋」は明治17年に創業し、今年で135年目を迎える老舗中の老舗です。町田では親子3代、家族ぐるみで慣れ親しんでいる人も多いお店の一つ。現在、5代目としてその暖簾を受け継いでいるのが、柿島家の娘である祐美子さんです。

町田は、かつて養蚕・製糸業が盛んだった八王子で生産された生糸を横浜港へと運ぶ街道「絹の道」の中間地点に位置しています。当時の町田は宿場町として栄え、わらじを取り替えるわらじ屋から始まった靴屋や、横浜港で生糸を降ろした行商人が帰りの荷として積んで来た乾物の店などが、現在も街に存在しています。

八王子から町田まで約20km、町田から横浜まで約20km。行商人や旅人は、町田で馬を乗り換えて行き来しました。柿島屋さんはもともと、その馬を扱う「馬喰(ばくろ)」を生業として創業しました。

庶民に手の届く「馬肉」が喜ばれた

柿島屋

【店名】柿島屋(かきじまや)
【ジャンル】馬肉専門店
【ご担当者】柿島祐美子さん
【所在地】原町田6丁目

馬喰の商いをする中で、旅の途中に怪我をして立ち上がれなくなった馬の肉を食用として出し始めたのが、柿島屋さんの飲食業の始まりです。時は明治の文明開化で、牛肉を食べる文化が始まっていましたが、庶民にはなかなか手の届かない高級品でした。そんな中、手に入りやすい馬肉を安く提供した柿島屋さんは、とても喜ばれました。町田で江戸時代後期から始まった「二・六の市」にも屋台として出店し、やがて店舗を構えメニューも増えていきました。

そして、町田にも国鉄(現在のJR)や小田急線が開通したのを機に、馬で貨物や人を運ぶということは無くなり、柿島屋さんも「馬喰」から「馬肉専門店」へと軸足を移しました。

新鮮な馬肉を、安く、早く。だから「一頭買い」がこだわり

柿島屋

馬肉は鉄分が多く、脂肪が少なく、低カロリー、高たんぱく質なのが特徴です。最近は、美容やダイエットに関心のある女性のお客様も増えてきたそうです。

そんな柿島屋のモットーは「美味しい馬肉を、安く食べていただく」こと。庶民のための肉として喜ばれた創業時のことを、今でも大事にしています。

「部分的に肉を仕入れるよりも、良い肉を安く提供することができるので、一頭買いはうちのこだわりです。冷凍肉は一切使っていません。現在は、北海道産の馬を、提携している山梨の牧場で育ててもらっています」と祐美子さん。

霜降りの馬肉とは違い、「サシ」と呼ばれる脂肪をほとんど入れない柿島屋の赤身メインの馬肉はとてもヘルシー。提携している牧場では、おからなど植物性飼料を工夫しているため肉質が柔らかく、かつ、鮮度の良い状態でお店に届きます。そのため、柿島屋の馬肉はプリプリとした弾力があり、口の中で瞬時にほぐれ、とても食べやすいのです。

だからいつもお店には、老若男女、子どもからお年寄りまで来店されるのですね。

創業時から変わらぬ、絶品メニュー

柿島屋には、創業当初から100年以上変わらないメニューもあるそうです。

馬肉をこんにゃく、ネギ、ごぼうなどと一緒に煮込んだ「肉皿(にくざら)」と、それを日本そばと一緒に食べる「馬肉そば」。今でもお店の看板メニューで、当時のレシピが、時代に合わせて多少アレンジはされながらも、代々受け継がれています。常連さんは、この「肉皿」をつまみに、梅のエキスで割った焼酎で一杯、が定番だそう。

隣り合うのも何かのご縁、「相席」で楽しく食べる

柿島屋

柿島屋のもう一つの魅力は、皆で大きなテーブルを囲む「相席」スタイル。初めて出会う人も含め、隣り合った人同士ワイワイ話しながら仲良くなる雰囲気は、その昔、町田が宿場町だった頃の光景を彷彿とさせます。

祐美子さんは、学生時代から店の手伝いを始め、平成10年頃から本格的にお店全体を切り盛りするようになりました。長年このお店で町田の人と触れ合ってきた祐美子さんは、「これからも地域の皆さんに愛されるお店でありたい」と言います。

「忙しいとサービスが行き届かないところもあると思いますが、うちをずっと好きでいてくれて、お子さんやお孫さんを連れて来てくださる常連さんもいます。平日は旦那さん一人で来て、土・日は家族を連れてくるとか。町田は庶民的で、人も温かい。昔は今以上に、個人経営の商店も多かったんですよ」

いつまでも人が集まり、人が笑っている街であってほしい

町田生まれ・町田育ちの祐美子さんに、これからの町田に期待することを聞いてみました。

いつまでも人が集まり、人が笑っている街であってほしいと思います。やっぱり人がいないと淋しいし、商売をするにも大切なこと。お客さんがうちの馬肉を食べて『おいしかったよー!』って笑ってくれれば、それがいちばん私達の疲れが吹き飛ぶ瞬間です」

まさに「町田と共に」生きてきた老舗 柿島屋。町田の人が家族のように集うこのお店で、これからもずっと、たくさんの笑顔が続いていくといいですね。

【お店情報】
柿島屋(かきじまや)
所在地:町田市原町田6-19-9 アーバン柿島2 1階
TEL:042-722-3532
営業時間:16:00〜21:30 L.O./土日祝 12:00〜20:30 L.O.
水曜休
URL:http://www.kakijimaya.com/

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