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マルヤ製菓

仲見世通り入り口の、行列ができる大判焼き / マルヤ製菓 鈴木志歩さん

2019.06.06

「昭和」の香り漂う町田の名物商店街で

町田駅前にある、そこだけ昭和の時代にタイムスリップしたような「仲見世通り商店街」をご存知でしょうか? 横丁型の細い通路沿いには、魚屋、金物屋、豆腐屋、ペットショップ、沖縄料理、タイ料理、中華、スペインバルなど多種多様な個人商店がずらり。そのカオス的な雰囲気が、昔から通い慣れた地元の常連さんにはもちろん、最近は若者達にも新しいカルチャーとして人気を博しています。

その仲見世通り商店街の、町田駅前通りに面した入り口にあるのが、行列のできる大判焼き屋「マルヤ製菓」さん。現在、2代目である鈴木志歩さんが、妹さんやアルバイトの皆さんと一緒に切り盛りしています。

お父さんが勤め人を辞めて始めた、和菓子屋さん

【店名】マルヤ製菓(まるやせいか)
【ジャンル】和菓子
【ご担当者】鈴木志歩さん
【所在地】原町田4丁目

マルヤ製菓は今年で創業49年。昭和45年(1970年)に、税務署勤めだった志歩さんのお父さんが、一念発起して始めました。最初は原町田2丁目の自宅兼お店で営業を開始しましたが、やがてJR横浜線の駅が現在の位置に移転して人の流れが変わり、2丁目の方まで人が来なくなったため、仲見世通り商店街の真ん中辺りに店を移しました。

仲見世通りの角地に移り、大判焼きを始める

志歩さんが小学5年生の頃、仲見世通りの入り口(現在の場所)の角地が空き、マルヤ製菓は再び移転しました。

大判焼きを始めたのもその頃。作るものによって仕込みや下ごしらえも違い、手間のかかる和菓子に対して、大判焼は小麦粉を溶いて焼けば商品ができ上がり、すぐ販売できます。売れたら焼けばいいので、在庫もコントロールしやすいというメリットもあります。

駅の移転や人の流れの変化に合わせて、お店の場所や内容を変化させ、商売を続けてきたんですね。

柔軟な発想で生み出す、新しい大判焼き

そんなご両親の背中を見て育った志歩さんは、22〜23年前からお店を手伝い始めました。2018年の晩秋頃からは本格的にお店を引き継ぎ、全体を見るようになりました。

マルヤ製菓の営業日は、なんと年間364日。元旦以外はお店を開けています。毎月1日と15日は特売日で、特にお客さんが長い行列を作ります。そんな時は、お父さんが製造を手伝ってくれるそうです。

今でも和菓子やお弁当なども作っていますが、主力はやはり焼き立ての大判焼き。その種類たるや、常時30〜40種ほど。志歩さんは、しばらく勤めていた食品メーカーで商品開発をしていた経験を生かし、定番だけではないユニークな新・大判焼きを次々に生み出しているのです。

「世の中の話題性や流行も取り入れ、いつも新しさのある商品を開発しています。最近ではタッカルビやモッツァレラ、夏はパイナップルなど。『それを大判焼で?!』という意外性もお客さんに楽しんでもらっています。頭で考えすぎるのではなく、柔軟にひらめきから作っていくことが多いですね」

「ここで買って良かった」と感じていただけるように

志歩さんが大事にしているのは、「ここで買って良かったな」とお客様に感じていただける商品と接客です。

「同じものを買うのでも、良い気分で買いたいですよね。私の20代はうまくいかないことだらけ。今思うと技術はもちろん、人間的にも未熟だったし、それが品物やお店に出ていたんだと思います。ちょっと分かった30代を経て、40代になった今、やっと自分の思い描く商品やサービスになってきたかなと思います。

これからも、やっぱり地元の人に愛される店であり続けたい。飽きの来ないお店でいたいです。品物はいろいろ変わっても、その気持ちは変わらず続けたい。10年前、20年前にこのお店に来てくれた人が、また久しぶりに来て『やってて安心した』と仰ることがあるんです。商売を長く続けるのは難しいことだけど、この状況を守っていくのが自分の責務だと思っています」

皆で輪をつなげる街であってほしい

志歩さんに、町田のこれからへの期待を聞いてみました。

「仲見世通り商店街ももう70年。こういう商店街は、他の街だと難しいと思うんですが、町田だからまだ元気がある。そこを街で分かち合って、さらに盛り上げていけたらと思います。古さも新しさも併せ持ちつつ、入れ替わっているけど元気なのが町田らしい。

町田は、地域の人のつながりがあるのが良い所だと思います。町田天満宮の例大祭に代表される地域のお祭りに商店会も協力して、子ども達もそれを見るし、年上の人も今までの知恵を引き継いでいきます。地域の関わりは普通なら面倒臭いけれど、人や地域への思いやりが、この街にいる人間として大事。そういう温かいものが孤立を防ぎ、子どもの安全や仕事の面にも結局は生きてくると思います。

これからも、小さい個人商店の商店街が元気で、会話や人とのつながりがある街であり続けてほしい。皆でその輪をつなげる街であってほしいです」

自分を育ててくれたご両親や町田への、志歩さんの感謝と愛情をたくさん感じられたインタビューでした。

【お店情報】
マルヤ製菓(まるやせいか)
所在地:町田市原町田4-5-18 仲見世通り商店街内
TEL:042-722-1357
営業時間:10:00〜20:00
元旦休、および8月下旬に夏休み有り(詳しくは店舗へお問合せください)

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