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グリルママ

すべて手作りにこだわった懐かしの洋食店 / グリルママ 青山和男さん

2019.06.05

開店と同時に満席になるほど人気

町田駅前にある洋食店「グリルママ」は、11:30の開店と同時にすぐに満席になる日がほとんどです。お店の前には1970年代を彷彿とさせる風貌のショーケースに、エビフライやコロッケ、ハンバーグ、グラタンなど「これぞ洋食」のサンプルがずらりと並び、お客さんは席が空くのを待ちながらあれこれ楽しく目移り。ガラス戸が開いて自分の番が来ると、嬉しそうに店内に入って行きます。

レトロなデザインの店内を見渡すと、客層は、近くに勤めるサラリーマンのグループもいれば、グルメサイトを頼りに初めて来たらしい若いカップル、女性の一人客、町田に長年住んでいるのであろう老夫婦など、実にさまざま。幅広い層が食べたくなるのが「懐かしの洋食」なんですよね。

「もちろんランチセットもあるんだけど、ランチだけにしちゃうとお客さんもつまんないでしょう」

そう仰るのは、オーナーでありシェフである青山和男さん。定休日の水曜以外は毎日11:30〜21:30まで、奥の厨房で、多い日は250食もの料理を作っています。

進駐軍のベースの近くで親父さんが創業

【店名】グリルママ(ぐりるまま)
【ジャンル】洋食
【ご担当者】青山和男さん
【所在地】原町田6丁目

グリルママが創業したのは昭和32年(1957年)。和男さんのお父さんが、お母さんと一緒に、進駐軍のベースキャンプが近い淵野辺で食堂を始めました。その時に、ベースのアメリカ人の方がよくお店に来てくれて、「ママさん、ママさん」とお母さんのことを呼ぶので「グリルママ」という店名にしたそうです。

やがて一家は町田に引っ越し、14坪の2階建ての建物で食堂を再開。まだ道は砂利道で、小田急OXだった頃のことです。昭和51年に、現在のビルを隣の土地の持ち主と共同で建て、1階がグリルママ、地下と2階がもう一人の持ち主のものとなりました。新生グリルママのオープンは、なんと小田急百貨店開業と同じ日。駅前はものすごい賑わいだったそうです。

以来、グリルママは同じ場所でずっと洋食店をしています。創業から今年で62年。青山さんは19才頃から手伝い始め、32年前に2代目として店を引き継ぎました。現在は2番目の息子さんが一緒に厨房に入り、青山さんと、長年の従業員さんと一緒に腕をふるっています。

美味しいものを食べてほしいから、すべて手作り

グリルママで驚かされるのは、メニューの種類の多さです。関連している付け合わせなどから派生して、お客さんからのリクエストも取り入れ、次第に増えて行ったそうです。しかもそれを、ソースに至るまですべて手作りするのが青山さんのこだわり。

「材料の良くないものは出したくないんです。豚肉のロースなんかは国産のしか使わない。やっぱり旨味が違う。自分が美味しいと思う素材で出したいんだよね」

こういうお店って、なくなっちゃったでしょ

「11月〜3月は牡蠣のシーズンなので、その時期のランチには、コロッケに代わって牡蠣フライを1粒ずつ付けるんです。楽しみにしているお客さんも多くて、一週間に10kgぐらい出るので、毎朝、相模原の市場に仕入れに行って。良い牡蠣は、半分に切ってもダラッとならずにプリプリしてるんです。そんな新鮮な牡蠣を、いちばん美味しいタイミングで揚げて出しているんですよ。

なるべく早く出してあげたいんだけど、いちいち手作りしているから大変。大きな豚肉を切ったり、エビの掃除をして1つ1つパン粉をつけて、出す直前に衣を付けて揚げて。冷凍のを揚げてる店もあるかもしれないけど、なんか気が済まないんだよね。

でも食べれば分かると思うんだよね。手を抜かないで、まともな材料を使って。こういうお店って、なくなっちゃったでしょ。町田は家賃も高いから、親父がこの場所を買っといてくれて良かったと思うよ」

大変だよと言いながら、やはり自分の納得のいくものを作り続けている青山さんの洋食は、通ってくれるお客さんや、お父さんから受け継いだこのお店、ひいては町田という街を愛する青山さんの気持ちの表れなのかもしれませんね。

町田がいちばん良いよね

横浜で生まれて幼少期を過ごし、高校は浜松町まで通っていたという青山さん。いろいろな街を見て来た中で感じる町田の良さについて伺ってみました。

町田の良さは、街を回遊できる所だね。食べ物でも、町田にはまともなものが今もある。天ぷらにしろ、ウナギや、お寿司にしろ。まともな材料でまともに作っているお店が残ってるよね。近所に行きつけの『初孫』って地元の居酒屋があるの。今は息子さんがやっててね。同じ人がずっとやっているから当たり外れがないんだよね。

町田がいちばん良いよね。賑わっているし。やっぱり人が来なきゃ、商売できないからね」

青山さんにとっての面白い街とは、歩き回るのが楽しい街。そして、店主の顔が見える店で、真っ当で美味しいものが食べられる街。昔は当たり前だったこういうことが、いつの間にか街からなくなってしまう時代を私達は生きています。町田には、まだそれがあり、しかも次の世代もそれを受け継ごうとしています。そのことこそが、この街の大きな魅力であり、資源なのかもしれませんね。

【お店情報】
グリルママ(ぐりるまま)
所在地:町田市原町田6-11-7
TEL:042-722-3307
営業時間:11:00~21:30/第3火曜11:00~16:00/ランチメニュー11:00~17:00
水曜休

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