PEOPLE

こだわりのうつわを通して日常を豊かに/うつわももふく 田辺玲子さん

2020.11.30

【施設名】うつわ ももふく
【ジャンル】和食器専門店
【ご担当者】田辺玲子さん
【所在地】原町田2丁目

JR町田駅から、町田中央図書館を通り過ぎ、歩くこと約10分。繁華街から少し離れた閑静なエリアに、「うつわ ももふく」があります。うつわの魅力を際立たせるシンプルで洗練された空間に、店主である田辺玲子さんがセレクトした作家もの和食器が並ぶ専門店です。

以前は建築業界で、住宅設計などの仕事をしていたという田辺さん。「こだわりのある人が作ったものを使ったら、生活がもっと豊かになるということを紹介したい」という思いか ら、2004年に、玉川学園にあるご自宅の玄関から、うつわのお店をスタートさせました。2008年には、原町田にある現在の店舗に移転し、今年で12年目を迎えます。

作家ものにこだわったお店に

田辺さんに、お店のこだわりを伺いました。

田辺さん「暮らしのなかにあるものを整えることがすごく大事だなと思っています。身の回りのものを自分の好きなもので揃えたら、毎日気持ちよくなれる。日常の生活がなんとなく豊かになったり、美味しくご飯が食べられたりっていうことを、うつわを買ってくれる人に味わってもらえれば良いなと思っています。

あとは、作っている人の気持ちがあるもの、こだわりがあるものを置くっていうことですね。うちで取り扱っているのは全て作家もので、量産品やプロダクトは置いていないんです。1人の人間が、完成まで自分で責任を持って作っているものを置くことにこだわってやっています」

ももふくで取り扱っているうつわは、全て田辺さんのセレクト。個展に出かけて作家さんに声をかけたり、出張に出向いて作家さんを探したりと、ご自身の足で、日本全国から魅力的なうつわを集めています。その品揃えの豊富さから、なかには2時間近く、ゆっくりと時間をかけてうつわを選ぶお客さまもいるそうです。

暮らしの中に「使うアート」を

なぜももふくでは、徹底して作家もののうつわにこだわっているのでしょうか。

田辺さん「暮らしの中で使う道具としてのうつわを、使い勝手や意匠デザインを含めて、一から全て自分の手で作り出す。そこに作家の考え方や生き方が凝縮されているというところが、作家もののうつわの面白さのひとつです。

作家自身の中に「うつわとは、焼き物とは、どういうものか?」という「問い」とそれに対する「答え」があって、それが形になっている。暮らしの道具の中で、そうした個人の意思が映し出されているものって、なかなかないですよね。

作家もののうつわは、アートという面もあります。アートというと観賞するものが多く、触ったり、使ったりできるものというのは少ないと思います。身近なものというよりは、少し特別なものという感じがありますよね。でも、作家もののうつわというのは、カジュアルに使えるアートという面があって、そこが面白いです。暮らしの中に「使うアート」があると楽しい、ということを提案したくて、作家ものにこだわっています。」

ももふくでは作家さんの名前を冠した個展が多数開催されており、1人の作家の作品をじっくり鑑賞することで、より深く、陶芸・うつわの世界を味わうことができます。

講座やワークショップも開催!

個展に加えて、ももふくでは不定期にワークショップや講座も行っています。なかでも人気なのが、天野志美さんが講師を務める金継教室。割れてしまったうつわを漆で継ぐ本格的な金継を、全7回の講座を通して丁寧にレクチャーしてもらえるとあって、毎回満席になる人気ぶりだそうです。

その他にも、和菓子付きの盆栽のお悩み相談会、盆栽の植え替え相談会、おいしいコーヒーの淹れ方講座など、お客さんとの会話のなかから、「こんなワークショップがあったら楽しいよね」というものを、食器の枠にとらわれずに開催しているそうです。ただ「ものを買う」場所としてではなく、作品を鑑賞することで作家さんの思いに触れたり、興味があることを学んだり、生活を豊かにするスパイスをもらえる場所としても、とても魅力的な取り組みですね。

個人商店を町田の原風景に

10年以上この街で商売をしている田辺さんの目に、町田はどのように映っているのでしょうか。

田辺さん「良い意味で緩いですよね。なんとなく、小田急線の色があるような気がします。駅前の賑やかさも、たぶん他の街の賑やかさとは違っていて、独特なおもしろさのある街だなと。気を張らなくて良い街、そういう意味で自然体なんですよね、きっと。雑多な感じで、別に整ってなくても良いし、無理にしゃれた感じにしなくても良い。そんな風に肩の力を抜いて生きていける街だと思います。

中央線沿いなどと比べると、個人商店が少ない街なのかなという印象もあります。昔は個人商店も多かったようですが、今は少ないのかなと。町田で暮らす人の原風景に、個人商店というものが少ないのは寂しい気がします。個人の思いが詰まった、ちょっと面白い、ちょっと個性的な店があると、街がもっと楽しくなると思うんです。なので個人商店が増えて、町田の人の原風景の一部になったらいいなと思っています。」

駅前の商業ビルや商店街など、買い物にはとても便利なこの街。しかし目に付くのは、他の地域でも見慣れたお店が多いことも否めません。個性的な個人商店や専門店がもっともっと地域に根付き、地元の人の原風景の一部になっていったら、町田はもう1段階パワーアップした文化的な魅力を持つ街へと進化していくのかもしれませんね。

【企業情報】
うつわ ももふく
所在地:東京都町田市原町田2-10-14原町田ハイツ101
TEL:042-727-7607
営業時間:12:00 ~ 18:00
定休日:日・月・祝
URL:https://www.momofuku.jp/ 

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