PEOPLE
公園の景色を彩る、コーヒー屋さんの小さなチャレンジ Okei coffee 能勢桂子さん
2022.03.28
【ジャンル】コーヒー屋さん
【ご担当者】能勢桂子さん
【所在地】町田シバヒロ、芹ヶ谷公園、他複数拠点
公園での販売をモットーとし、「賑やかな場所で販売したこともあるけれど、やっぱり私は公園が好き」と語る能勢さん。
1杯のコーヒーに込められた想い、公園にこだわる理由、そして20年以上暮らす町田についてお伺いしました。
「うまくできないからやりたい」から始まったラテアート
結婚を機に町田に越してきたという能勢さん。最初は夫婦それぞれの地元に帰りたいという気持ちはありましたが、町田に住んだらすっかり気に入ってしまったのだそうです。
「結婚して住んでいるうちにどんどん町田が好きになって。家も買ったし、永住するって決めています。町田は住んでいると好きになる街なんですよ。子どもたちも町田で育って、町田から出る気は全くないみたいです。電車に乗って移動しなくてもなんでも揃う便利な街だということはもちろん、大きな公園もたくさんあるのも気に入っています」
そんな能勢さんがラテアートに出会ったのも町田に住み始めたころ。新たな趣味の発見のため、当時は陶芸などいろんなワークショップに参加していました。
「なんでもそつなくこなすタイプだったんですけど、ラテアートだけは全然できなかったんです。すぐに家庭用のマシーンを買って、毎日ラテアートをインスタにあげているうちにもっとうまくなりたいな、と思うように。それから、カフェに転職しました」
できなかった、で終わらせず、出来なかったからこそチャレンジしたいというのが能勢さんの姿勢です。
そして、カフェでバリスタとして働いているうちに、能勢さんの中で大きくなっていったのはラテアートをもっと知りたい、もっとうまくなりたい、ということ。
著名なバリスタのセミナーを受けに行ったり、ラテアートの大会に参加したり、自身の技術を高めていきました。やがて、「いずれ自分のお店を持ちたい」という気持ちを抱くようになります。
「たまたま、Instagramで世田谷にあるサンドウィッチのお店が『自分の店でコーヒースタンドをやってくれる方を募集します』という投稿を見たんです。ちょうど、業務用で使えるようなマシーンを購入したところだったので、『これはチャンス到来なんじゃないか』と思ってすぐにコンタクトを取りました」
最初は断られましたが、能勢さんは諦めませんでした。実際にお店に行ってオーナーと話し、もう一度検討してほしい、と直談判。「どうしてもこの店で」という熱意が伝わったのか、8人ほどの応募があった中で、能勢さんが選ばれました。
サンドウィッチ屋さんに間借りする形で順調に2年ほど営業を続けていましたが、そんなとき、コロナ禍がやってきたのです。
コロナ禍で大きな一歩を踏み出せた
店は自主休業。休業中、時間を持て余している中で、Okei coffeeの今の社長・やまちゃん(実のところは能勢さんが飼っている黒柴犬)を散歩させているときに、ふと思いつきます。
「公園でコーヒーが飲めたら最高なのになあ」
「あれ、キッチンカーという手があるな」
町田には大きな公園は多くあるものの、その中にカフェがあるというケースは多くありません。
「町田が好きだから、いずれは町田でお店を出したいと思っていました。でも、自分でイチからお店を構えるには大きな決断が必要になります。間借り営業を続けるか、新しい物件を探すか、それともキッチンカーか。どれが一番自分に向いているのかを考え抜きました。
その中で、公園、自然の中でコーヒーを召し上がっていただきたいという思いが一番強かったんです。キッチンカーなら自由度も高いし、自分に一番向いてるのかな、って」
コロナ禍で、東京都では飲食店に業態転換の補助金が出ていました。その補助金制度を利用したほか、クラウドファンディングにもチャレンジしてキッチンカーのオープンを目指すことに。
「バリスタは横の繋がりが強くて、ほかのバリスタが働いている店が近くにあると紹介しちゃうような関係なんです。宣伝効果も高く、そのおかげでクラウドファンディングもたくさんの方に支援していただきました。
若い人でも、お店を出したいと思っている人は多くいますが、経済面などからどうしても最初の一歩が出ません。でも方法はあるんだよ、ということを見せたかった、という気持ちもあったんだと思います」
コーヒーで幸せと笑顔を
コロナ禍を逆にチャンスと捉え、動き始めた能勢さん。
いろんな人の想いが詰まったキッチンカーには「Happines and smile with coffee」の文字が。
「まさに私のコンセプトは『Happines and smile with coffee』。これを、自然の中や公園の中でやりたかったんです。でも実際は公園でお店を出せるところはそんなに多くありませんでした」
出店の許可を取るのが難しかったり、そもそもキッチンカーが出せない場所も。また、出店が公募制のところもあり、キッチンカーの準備中だった能勢さんは公募期限に間に合わせるために必死だったと言います。
「クラウドファンディングをやっている以上、お店を作ったのはいいけど、どこにも出店していないのではどうしようもありません。必死で出店先を探して、いろんなところにもコンタクトを取りましたね」
シバヒロでも、管理を行っている町田市観光コンベンション協会と直接交渉。ちょうどシバヒロにもキッチンカーを誘致できないか、という案が出ており、曜日固定で出店するようになりました。
「出店したかったら、声がかかるのを待つのではなくて、やっぱり自分で動かなければならないと思うんです。
「町田は鶴間公園、芹ヶ谷公園が有名ですが、ほかにも公園はたくさんあります。野津田公園はサッカースタジアムのイメージが強いけど、最近は遊具も増えているんです。一度、ばら園の時期に出店させてもらった際に、お客様に、『いつも来てくれたらいいのに』って言っていただけて嬉しかったですね。」
コーヒーが一番売れるのは芹ヶ谷公園だそうですが、能勢さんは人が少ない公園でも、出店者とお客様が会話を楽しんでもらうのもキッチンカーの魅力のひとつだと思う、と言います。
「ありがたいことに、うちのコーヒーのファンになってくださった方が出店に合わせていろんな公園に飲みに来てくださるようになっています。コーヒーを飲みに来ることで、新たな公園の魅力を知ってもらうきっかけになったら嬉しいですね」
町田の良さをもっとたくさんの人に知ってほしい
最後に、能勢さんが思う、未来の町田についてお聞きしてみました。
「町田は若い人からお年寄りまで、どの世代も暮らしやすい街です。町田に住んでいる人は、その魅力をよく知っているから、ずっと暮らし続けるんですよね。でも、その魅力が外に伝わっていないのがもったいないな、と思うんです。魅力的なお店もたくさんあるし、他の地域からも人が来て賑やかになってくれたらいいな、と思います」
1杯のコーヒーを、どうやってお客さんに楽しんでもらいたいか。自分の好奇心の赴くままに、積極的にチャレンジをし続けているからこそ、能勢さんの姿勢や活動のひとつひとつが、町田の魅力を発信することに繋がっています。
能勢さんのコーヒーが生み出す「幸せ」と「笑顔」が、町田の公園のこれからを彩っていくのかもしれません。