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GOMI拾いから始まる人の繋がりと心地よい居場所作り EARTH CROSS OVER

2023.03.29

「私たちはプラスチックを食べている」

そんな印象的な見出しが目を引くのが「EARTH CROSS OVER」のホームページです。 「EARTH CROSS OVER」 は、KanakoNezzzさん、YumeBookさん、MAKINIKUさんを中心に町田を拠点とした活動で、「GOMI拾いから、仕事、居場所、個性を創る」ことを目ざしています。 

週に2回、町田市と相模原市の境を流れる境川でのゴミ拾い(GOMI拾い)から、「EARTH CROSS OVER」が広げていこうとしているものとは?お話を伺いました。

コロナ禍で始まったゴミ拾いの活動

写真:KANOKONezzzさん

最初、境川でのゴミ拾いを始めたのはEARTH CROSS OVERでデザイン周りを担当するKanaさんでした。

KanakoNezzzさん「もともと『これからの地球を考えながら行動する』マインドは持っていたんです。以前から、ファストファッションの流行で服を使い捨てる世の中でいいんだろうか、と世の中に疑問を持っていて着られなくなった着物をリメイクしたり、捨てるにはもったいないもので服やアクセサリーを作っていました。私自身、境川沿いに住んでいるのですが、ゴミがたくさん捨てられているのが気になっていました。これが海に流れていって、海洋プラスチックゴミになるんだと思いつつも、ひとりでゴミ拾いを始める勇気はありませんでした」

しかし、町田市にあるコワーキングスペース「マチノワ」で「ゴミ拾いをしてみたい」という話をしたことがきっかけで、実際に決行されることに。それが2020年3月ごろ。ちょうど新型コロナウィルスが流行り始めたころでした。

KanakoNezzzさん「当時の世の中は、外であろうと人が集まったらダメ、という空気があって、せっかく活動を始められたのに、なくなっちゃうのかな、と不安に思っていました。EARTH CROSS OVERの名前を考えたり、これからのビジョンが膨らみつつあるころだったのに」

写真:MAKINIKUさん

ちょうどその頃、都内から実家のある町田に戻ってきたMAKINIKUさんは、SNSでKanakoさんがシェアした第1回のゴミ拾いの様子を目にします。

MAKINIKUさんは精神健康福祉士というメンタルヘルスの専門家。接客業の経験も長いことから今はEARTH CROSS OVERの窓口として、またプロデューサー的な役割をこなしていらっしゃいます。

MAKINIKUさん「Kanakoとは20年来の友人なのですが、SNSを見て”おもしろそうなことやってるじゃん”と連絡をして、事情を聞きました。それで、2人だったら密じゃないし、ゴミは黙って拾えばいい。一緒にやろうよ、って。最初のころは5時に起きて2人で毎日境川を掃除していました」

MIKINIKUさん「Kanakoにいろいろ教えてもらって、初めて環境問題の現状を知りました。例えば、人間は1週間にクレジットカード1枚分のプラスチックを食べちゃっているんだ、という事実を知った時はインパクトがありましたね。そんな大変なこと、みんなに知らせなければ、という気持ちになったんです。そこから、境川の生態系や関わってきた自然についても調べるようになりました」

みんながそれぞれ生きやすい場所づくりを

YumeBookさんは2020年の6月に加入。当時からヨガインストラクターとして活躍されていたYumeBookさん。活動の中で、環境問題についても気にかけていたそうです。

YumeBookさん「ゴミ拾いに興味はあるけど、ひとりでやるのはなんだかな、と思っていたときに、2人がNHKに取材されている様子を見て活動を知りました。そのあと、MAKINIKUによかったら一緒にやらないかと声をかけられて入りました。」

YumeBookさんは、SNS周りを担当しており、EARTH CROSS OVERの活動の一環としてエシカルチューブというYouTubeチャンネルを運営しています。難しくなってしまいがちな環境問題をポップに発信。そこからEARTH CROSS OVERの動きに興味を持ってくれる人もいるそうです。

さらに、YumebookさんはEARTH CROSS OVERからのメッセージとしてもうひとつ大切にしていることがあるといいます。それが、境川の『境』を境目の『境』として捉えて、ボーダーレスな社会を目指すということです。

YumeBookさん「両親がベトナム人というのもあって、私ももともとは国籍がベトナムなんです。そういった自身の背景もあって、国境はもちろん、男女や年代の境目など、いろいろな境界を取り払っていきたいと考えています。」

MAKINIKUさん「生きづらさを感じている、いわゆるマイノリティの人たちが生きやすくなるような何かを発信できたらいいな、と思って、ボーダーレスプロジェクトという活動も行っています。その中のひとつのコンテンツとして、境川で拾ったゴミを素材にして「境JEWEL」というアクセサリーの制作・販売をKanakoを中心に行ってるのですが、そのモデルとして、LGBTQの方やインターナショナルな方の起用も行っています。」

生きやすくなるための発信と同時に、MAKINIKUさんたちが目ざしているのは、ゴミ拾いをフックとした居場所作りです。

MAKINIKUさん「居場所って、場所が固定されているイメージがありますが、それさえも固定しなくてよくない?と思うんです。ゴミ拾いも、境川にいけば誰かいるだろう、あそこに行けば元気がもらえるかも、という足を運ぶ『誰か』にとって、安心安全な場所でいられたらと思っています」

ボランティアの意味を今一度考える 

EARTH CROSS OVERの中でひとつのコンテンツとなっているのが、Kanakoさんの製作する境JEWELです。子どものころから物を作ることが生業だったKanakoさんですが、拾ったゴミを活用する境JEWELは仕事を生むという部分が大きかったと言います。

KanakoNezzzさん「ガラスの破片とか、水の中でキラキラしていて、宝石みたいだな、と思って境JEWELとつけました。ゴミ拾いをボランティアで終わらせずに、循環させていきたかったんです」

MAKINIKUさん「日本人のボランティアって自己犠牲的なものが含まれているように思えて。ボランティアってもっと主体性があって、自主性があるものなんですよね。無償で自分の時間を切り売りしてやるものではないんです。みんなにそれに気がついてほしいですし、継続するためには、仕事を生み出してお金を循環させることも必要なんですよね。この経験をもとに、学校へキャリア教育の授業をさせていただいたりもします」

KanakoNezzzさん「そこで作品を作って、売れることで私の仕事になっていく。そこからまたゴミを拾いに行くという循環ができるんですよね。

でも、ずっと境JEWELをやっていくかというと違うかな、と思います。EARTH CROSS OVER の活動をする中で人と繋がって、困ったことがあると相談されて、すぐに動き出せるようでありたいんですよね。みんなもいろいろできるから固執せずに。どんな時代になるかわからないからこそ、そのときそのときのパッションでやることを決めます。それで役に立てたらいいな、と思います」

トレジャーハントできる街、町田

ゴミ拾いの活動を始めて3年、改めて、お三方は町田にどのような印象を持っていらっしゃるのでしょうか。

YumeBookさん「桜美林大学出身で学生時代に町田に来ていたころには、町田の一面しか知ることがなかったんですね。だからゴミ拾いを始めて町田には、こんな川通ってるんだとか、こんな小鳥たちがたくさんいるような場所があるんだって知ったんです。自然的な面も都会的な面も両立しているような場所だと分かって、私の中ではより町田の魅力が増しました」

MAKINIKUさん「新旧が入り混じっているというのはありますね。お店の入れ替わりも早いけど、昔ながらの店もずっと残っていたり。ちょっとノスタルジックな雰囲気も味わえて、でも新しいものもあって……というバランス感覚がいいですよね」

KanakoNezzzさん「駅周辺を見るとメジャーな街なんだな、と思いますね。一方で、町田の奥に電車が通っていない、バスで行かなければならない不便さがあるんですけど、そこにも多分おもしろい人たちがいるんですよね。普通の人が入らないゾーンというか。

MAKINIKUさん「そうだね。トレジャーハントができる街なんですよね。町田に行くといろんな人に会えますよ、みたいな」

最後に、これからの町田に期待することについてお聞きしました。

KanakoNezzzさん「町田に限らずなんですけど、クリエイティブな人が集まってほしいな、って思います。そういう人たちが集まる遊び場がいっぱいあったらいいなって」

MAKINIKUさん「町田を知っている人も知らない人もきて、『この町、なんかいいね』って言ってもらえるのがいいな。自分が旅をするのも好きなので、行ったことがない駅で降りた時に『なんか好きだな』とか、ちょっと散歩しただけでも『この街楽しかった』とか『また来ようかな』と思える街になったらいいですね。」

YumeBookさん「地元愛がさらに高まるといいですね。自分の地元が好きな人が増えていけば、コミュニティもきっともっと増えるだろうし、ポイ捨てももしかしたら減るかもしれないし、誰かが捨てたゴミを自分の大好きな街だからって拾う人が増えるかもしれない。そういう良い循環が増えていくんじゃないかと。自分はこの街に住んでるんだっていう感覚がもっとあってもいいのかな、と思います」

EARTH CROSS OVERでの2023年のテーマは「境川の上流から下流を繋げよう」です。

MAKINIKUさん「境川は今までいろんな人と関係を繋げてくれた場所です。やっぱり1人じゃできないことってあると思うので、私達が境川のハブのような存在になって、『こういうことやりませんか』と声をかけていって繋がりを広げていく。本当に境川が大きな1本になっていくようなことができたらすごく楽しいかな、と思っています」

ゴミ拾いから始まるさまざまなご縁はこれからもどんどんと広く、太くなっていきそうです!

 

「EARTH CROSS OVER」 HP:https://earthcrossover.wixsite.com/ox2020

 

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