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音楽で多世代が繋がり、新しい文化を生む交差点に 町田 The Play House

2023.09.02

【店名】町田 The Play House
【ジャンル】ライブハウス
【ご担当者】マツムラ タダトシさん
【所在地】中町1丁目

町田駅前のお馴染みの風景とも言える、路上ライブを行う若者たちの姿。1989年に伝説的ヴィジュアル系バンドLUNA SEAが初ライブを行うなど、町田の音楽カルチャーを40年間見守ってきたライブハウスがあります。駅から徒歩200mほど、線路沿いに佇む「町田 The Play House」です。

町田The Play House(以下プレイハウス)が開店したのは1983年、今年で40周年を迎えます。プレイハウスのHPに掲げられたコンセプトは、「今も昔も”地域密着”」。地元町田を愛し、地元町田の音楽シーンに貢献する事を第一に、メジャー・インディーズやジャンルを問わず、様々なアーティストと共に歩んできました。

先代達の思いを受け継ぎ、新たな姿を追求するプレイハウス企画制作スタッフのマツムラさんにお聞きしました。

覆された老舗のイメージ、変化への柔軟さ

町田生まれ町田育ちのマツムラさん、プレイハウスとの出会いは小学生の頃でした。

当時は商店街の近くに暮らしていたマツムラさんにとって、プレイハウスは通学路にある不思議な場所。その存在感はマツムラさんの記憶に刻まれていました。

「テレビを観るとLUNA SEAさんとか有名なバンドが、町田を拠点にしていたという話をされていて、そこからプレイハウスのことが印象に残っていました。

高校生になり音楽を始めましたが、当時は地元のライブハウスではあまり活動していませんでした。だから、プレイハウスと本格的に関わり始めたのもスタッフになってからなんです。」

バンドメンバーと新宿でルームシェアを始めたことをきっかけに、その近くのライブハウスで働き始めたマツムラさん。経験を積む中でライブハウスで働くことの楽しさを感じていた頃、2011年の東日本大震災がありました。

「地元で活動したいという気持ちが芽生え、町田に戻ってきました。町田で働けるライブハウスを探していた時にプレイハウスを思い出して、ここで働いてみたいと思ったんです。」

これまでの出演アーティストのイメージから、“プレイハウスといえばヴィジュアル系音楽”という印象を持つ方も多いのだそう。しかし、マツムラさん自身も実際に働いてみて、そのイメージが覆されました。

「僕はインディーなロックが好きなので、若い頃は先入観でプレイハウスとは音楽の方向性が違うと思っていました。でも、それは当時の音楽の流行も大きいですし、実際に働いてみると、様々なジャンルのミュージシャンがライブをしていたんです。

そこから、好きな音楽シーンを自分で新しく作ればいいんだ、と考えるようになりました。

そんな風に思えたのは、先代や先輩方が新しいことを寛容に受け入れてくださる部分も大きいです。今の時代に生きる人たちが、好きなことをすればいいと背中を押されました。」

質は高く、ハードルは低く


Photo by amano yasuhiro

収容人数は約200人と、町田最大のキャパシティを誇るプレイハウス。地下の会場に入ると広々としたステージと、どの角度からも視界が遮られないフロアにワクワクしてきます。

「ライブをすることに特化して空間が作られているので、音も照明も質は高いです。照明は最近LEDに替えたので、以前より華やかな演出が可能になりました。

受付のある1Fでは、椅子に座って休憩することもできるので、過ごしやすいライブハウスになっていると思います。

楽屋も広くてステージまで直通で行けるので、演者側も出番までゆっくり過ごせます。大人数の編成でも、ゆったり演奏できるサイズのステージも特徴です。」

演者にも観客にも使いやすい設計になっているプレイハウス。ライブハウスに足を運んだことがない人でも自分に合った過ごし方が見つかりそうです。

「いい意味で気楽に来て欲しいし、その体験がしっくり来たら最高だよねって思ってます。なるべくハードルは作らずに、色々な人に分け隔てなく遊びに来てほしいし、ライブをしてみてほしいです。」

近年はSNSなどを使って、自分の音楽を発表する手段が増えました。その中でライブという手段は、若手が新しい表現方法を試す機会にもなっているそうです。

「老舗としての文化を保ちつつ、若い世代が挑戦できる場所にしていきたいです。これまでの時代を作った人たちにリスペクトがあるからこそ、今の時代に生きる僕たちが新しく取り組んでいることを、常に発信できる状態でいたいです。

そのために、若手の子達がやりたいって言ったことに対して、やってみようよっていうスタンスを意識しています。

スタッフ含め、20代の子たちの出入りも増えているので、若手がここでどんどん発言できるようにしていきたいですね。」

幅広い世代が集まれる面白さ、老舗の強み

今年で40年目のプレイハウスに足を運ぶのは、開店当初から知っているという方から、最近知ったという方まで様々です。

「それこそヴィジュアル系音楽のイメージ、地元の学生が出演する場所としての認知、アニメの舞台になったことがあるので聖地的な見方もあります。

色々な視点が生まれるのは、老舗だけど変化に寛容なスタンスであるからだと思うので、懐の深さは強みにしていきたいです。」

演者や客層がマツムラさんの親世代から、小中学生までと幅が広いのは、長年営業し続けてきた老舗ならではの光景。

親御さんが知っている場所だと、子ども世代も出入りしやすく、多世代が交われる場になっているのはいい傾向だと語ります。

「人生が変わるような衝撃が、2人しか観客がいないようなライブでも起こったりするんですよね。実際の現場ならではの出会いが、その後の生き方に強く影響することがある。

SNSだけではなかなか起こらない体験で、そのチャンスが地元のライブハウスにあるのは大きいことだと思います。

アーティストはもちろん、お客さん同士でも、色々な人間が出会える交差点のような場でありたいと思っています。」

若い世代のチャレンジに寛容な町田へ

ライブハウスという場所、音楽を通して市内外の方と関わるマツムラさんに、これからの町田についてお聞きしました。

「近年、再開発で綺麗な街が増えていく中で、僕は町田にはチャレンジしてほしいかな。

便利なだけじゃなくて、みんなで町田らしい良さを見つける動きが増えると、新しい魅力ができてくる気がします。

暮らしやすさを優先するとどうしても保守的になってしまいますが、若い世代が街を面白く使っていくこと、それを受け入れていくような場所を作っていきたいと思います。」

現役のミュージシャンとして、地元のシーンと共に挑戦を続けるマツムラさんだからこそ、説得力のある言葉の数々。

多世代が交わり、新しいことに挑戦できる。プレイハウスのような交差点が街に増えれば、面白い文化がたくさん生まれてきそうです。

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