PEOPLE

縦に横に、町田民をゆるやかに繋げるゴミ拾い グリーンバード町田チーム

2023.09.25

【団体名】グリーンバード 町田チーム
【ジャンル】NPO法人
【ご担当者】坂下 朋紀さん

緑色のゼッケンを身にまとい、町を練り歩く人たちの姿。彼らは町の清掃活動を行っている、green bird(グリーンバード)という団体です。毎月のゴミ拾い活動と、商店会やFC町田ゼルビアなど、地域団体とのコラボレーションを行っています。

グリーンバードは「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに誕生した、原宿表参道発信のプロジェクト。現在では全国各地や海外まで活動の輪は広がり、2019年に町田チームも誕生しました。今回はグリーンバード町田チームの立ち上げをした、リーダーの坂下さんにお話を伺います。

「昔よりもオープンな街になったと感じます」と話す坂下さん。学生時代に始めたソーシャルアクションからグリーンバード町田の活動に辿り着くまで、そこから見えてきた町田の現在地についてお聞きしました。

自分にできることを探った学生時代

お祖父様の代から町田に暮らしているという、町田生まれ町田育ちの坂下さん。幼い頃から活動的なお父様に連れられて、外の世界を知っていきました。

「僕が中学生の頃に、父のODA(政府開発援助)事業の仕事でカンボジアに行きました。その時に、現地の子たちとサッカーをしたことが自分の中で印象的な出来事です。

サッカーがすごく上手な子がいたので、『プロを目指さないの?』と質問をしたところ、経済的に無理だという回答が返ってきました。同い年くらいなのに、置かれた環境に大きな違いがあることに衝撃を受けました。」

カンボジアでの経験から、自分にも何かできることがないかと考えるようになった坂下さん。転機となったのは、またもお父様からの誘いでした。

「中学2年生の時に、投資をテーマにしたイベントで聞いた『投資とは社会を良くするため、人々の生活を支える事業を行う会社にするもの』という言葉に心を動かされました。

まだお金を投資することは難しいけど、時間であれば投資できると考えて国際協力のNPOの門戸を叩きました。」

その後、中学時代からソーシャルアクションを始めた坂下さん。高校に進んだ後も、有権者教育や国際協力に関するイベントを開催するなど、様々な活動に挑戦していきました。

グリーンバードとの出会いも高校時代まで遡ります。イベントを開催するために会場を探していたところ、偶然知り合ったグリーンバードの方が場所を紹介してくれたそう。

「この時のご縁から、表参道のグリーンバードの活動に参加させていただくことになりました。正直なところ、当時は街のゴミ拾いに関心が高いわけではなかったのですが、通う内に印象が変わっていきました。

活動をする中で美容師さんやデザイナーの方、表参道に住む方など、様々なバックグラウンドを持った方と出会えることもすごく面白いんです。

ゴミ拾いは街を綺麗にするだけでなく、人と人が繋がるきっかけにもなることを知りました。」

グリーンバード町田チームの誕生

グリーンバードが大切にしていることの一つが、外部団体と協力して活動や人の輪を広げることです。大学に進学した坂下さんはインターン生として、企業とのコラボレーションの企画にも参加するようになりました。

渋谷のハロウィンの際には、集めたゴミでゴミ袋が膨らむとパンプキンのお化けになるといった、ゴミ拾いが楽しくなるような企画を行いました。

「グリーンバードは『ゴミを捨てる人を減らそう』という考え方を大事にしています。ひたすら拾い続けているだけでは、キリがないからです。無理なく続けられるように、ゴミ拾いが楽しくなる工夫をしています。」

大学と共にグリーンバードのインターンも卒業した坂下さん。「自分の街でも続けてみたら?」という仲間からの提案をきっかけに、2019年にグリーンバードの町田チームを立ち上げました。

「実際に自分の街で活動を始めてみると、ゴミの収集など分からないことや困りごとが出てきて、色々な方にご協力いただきました。

元々は提案されて始めてみたことで、それまでは地元に貢献することをあまり考えたことがなかったんです。”人と人を繋げる”という、学生時代からやりがいを持って取り組んできたことが、町田で活かせるのは嬉しかったです。」

ゴミ拾いから派生する、市民の繋がり

コラボレーションをすることで、人や地域との繋がりを広げてきたグリーンバードの活動。坂下さん率いる町田チームでも、様々なコラボレーションを行っています。

「基本的には毎月第二日曜日に、民間交番前に集合して、町のゴミ拾いをしています。その他は、町のお祭りの際にゴミ拾いをするなど、地元の方や団体と協力し合うことを大事にしています。

町田のサッカーチームFC町田ゼルビアと一緒に企画して一緒にゴミ拾いをしたり、町田市の高校の授業で、ボランティアの体験について協力させていただいたりしています。」

ゴミ拾いの目的は街を綺麗にして、ゴミを捨てる人を減らすことですが、その活動を通して人と人が繋がれることもやりがいの一つだそう。グリーンバードの活動は、町田に住む幅広い年代の方々が、フラットに交流できるきっかけになっています。

「グリーンバードでは『できる限り』というキーワードを大切にしていて、来たい時・来られる時に参加いただければと思っています。会員登録もなくラフに活動しているので、一度参加したからってずっと繋がっている必要もありません。ボランティアに興味があったけど躊躇していたという方も、よくいらしてくれます。

小さいお子様もけっこう参加してくれていて、親御さんに連れてこられているというよりは、自分から行きたいと言って参加してくれる子もいます。

無理のない活動の中で、少し人と話したい時に立ち寄れる、居場所のような役割にもなっているのかなと思います。」

居住歴なんて関係ない、町田市民の寛容さ

グリーンバードの町田チームを立ち上げるまでは、地元についてそこまで観察したことがなかったと言う坂下さん。ゴミ拾いを通して、改めて町田の魅力を発見できていると話します。

「ゴミ拾いの活動を始めてから、昔よりも町田以外の出身の方が増えていることを体感しました。そして、元々町田にいた方々と、新しく住む方々でコミュニティが分かれることなく、一緒に街を良くしていくような空気感があります。

合衆国のように様々な場所から人が集まって、色々な価値観が生まれる街になっているのかなと思います。」

「また、ずっと住んでいると見逃してしまっている地元の魅力を、移住してきた方が教えてくれることもあります。例えば、仲見世商店街について、昔は古びた場所だと思ってしまっていたけど、独特の味わいがあるねと言われて、『たしかに、他の商店街にはない良い雰囲気があるな』と気がつくことができました。」

町田らしさを見つめ直し、若い世代を繋ぎたい

最後にこれからの町田に期待すること、今後の活動についてお聞きしました。

「他の町や都心を目指すのではなく、町田が昔から持っている魅力を大事にしていけたらいいなと思います。

例えば、町田は障がい者の方と、自然に関わる機会が多い街でもあると思います。学校でも障がいがある子たちと一緒に授業を受けたり、運動会では一緒に走ったり。街中に3店舗ある就労継続支援B型事業所のカフェ、『喫茶けやき』では障がいのある方もない方も同じように働いています。

障がいのある方と日常で関わる場面があるというのは、意外と珍しいことなので、そういう部分も町田らしさの一つだと感じます。」

「グリーンバードとしては、若い人同士の繋がりをもっと増やしていきたいです。学生の子たちが進路を考える時に、普段から近い年代と関われる機会があれば、より具体的に自分の将来を描けますし、地元で活躍する方々を知れるきっかけにもなると思うので。」

同じ街に住む人たちと話をしてみたい、何か社会に貢献できることがしたい。きっと動機は何でも大丈夫。グリーンバードの活動が気になった方は、ぜひ一度ゴミ拾いに参加してみてはいかがでしょうか。

COLLABORATION PARTNER