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「絹の道」の時代から食材を扱って100周年 / 富澤商店 町田本店 森野和佳子さん

2019.09.03

【店名】富澤商店 町田本店
【ジャンル】製菓・製パン材料店
【ご担当者】森野和佳子さん
【所在地】原町田4丁目

行商品が行き来した歴史と共に

町田が商業の街として発展してきたのは、「絹の道」があったからだという歴史をご存知でしょうか?

絹の道、シルクロード。その名の通り、海外に出荷する「生糸」を、多摩地方の生糸の集積地だった八王子から横浜港へと運んでいた街道があるのです。町田に鉄道(国鉄 横浜線)が開通する前までは、この絹の道を、行商人達が馬に生糸を積んで行き来していました。その道のりは片道約40kmあまり。ちょうど中間地点にあたる町田では、旅人たちが馬を乗り換えたり、ワラジを履き替えたりしました。その名残が、老舗馬肉専門店の「柿島屋」であり、町田に今でも多い靴屋です。

そしてもう一つ、町田に多いのが「乾物屋」。その理由は、生糸を横浜港へ運んで行った行商人達が、帰りには昆布や干物などの乾物を積んで戻って来たからです。海に面していない内陸部の人にとって、海産物の乾物は価値ある品物だったことでしょう。

富澤商店も、こうした乾物屋から始まりました。今年で創業100周年。現在は全国各地に80店を超える店舗を展開していますが、その本店が、町田駅前にあります。

なまこ壁と暖簾が目印

富澤商店 町田本店は、昔の「土蔵」のような外観です。白と黒の幾何学模様の部分は「なまこ壁」と呼ばれるもので、昔の武家屋敷や豪商の家・蔵などに外壁の耐火や補強の目的で用いられた工法を模したもの。町田の駅前で、ここだけタイムスリップしたかのような雰囲気を醸し出しています。

暖簾をくぐって店内に入ると、壁一面、棚一面にぎっしりと並んだ商品の多さに圧倒されます。商品数は3200種類以上! 日本はもちろんのこと、中華料理、タイ料理、西洋料理などなど世界各国の調味料や食材が揃い、製菓・製パン材料も豊富に取り扱っています。

手づくりを楽しむお客様や、料理を学ぶ学生さんが来店

富澤商店に入社して16年、数年前から町田に住み、この本店の店長を務める森野和佳子さんにお話を伺いました。

「町田の飲食店の方が調味料などを買いに来ることも多いですし、一般のお客さんも、お菓子づくりの材料や、中華食材などを求めていらっしゃいます。夕方には、町田製菓専門学校の学生さん達が材料を買いに来たりもしますよ。

最近は、パンブーム、タピオカブーム。特にタピオカは、入荷が追いつかないくらい人気で、やはり『手づくり』の人気が高まっていると感じます。

冬は米麹と大豆といった味噌づくりの材料をセットで販売しており、毎年良く出ます。OLや主婦の方々はもちろんですが、シニア世代のご夫婦が買い物にいらっしゃって、味噌づくりやパンづくりを一緒に楽しんでいる様子が伺えます」

ご夫婦で一緒に手づくりを楽しむなんて、素敵なライフスタイルですね!

一緒に買い物をお手伝い。食材の食べ方提案や週替わりの試食も

森野さんに、日頃の店頭で大事にしていることを聞いてみました。

「商品数が非常に多いので、目的の品物を探しきれない人もいます。そういうお客さんの様子を察知して、お買い物のリストを見せていただいて一緒に品物を揃えるなど、お手伝いするようにしています。何度来ても、たくさんの品物が空間の中にギューっと詰め込まれているから、なかなか探せないんですよね。それがストレスではなく楽しみと感じていただけるようにしたいです。

食材の食べ方の提案にも力を入れています。例えば黒豆などは、普通はお正月くらいしか食べませんし、煮豆以外の食べ方が分かりにくいですよね。でも、お米に混ぜて炊飯器で炊くだけで、美味しい豆ご飯になるんです。スタッフと一緒に、食材を楽しんでいただける提案を考えています」

お客様の「食の楽しみ」「手づくりする楽しみ」を広げる活動をしているんですね。

また、お店の入り口付近には、まるで昔の駄菓子屋さんのような雰囲気の試食コーナーを設けています。ドライフルーツやスナックなど、毎週内容を変えて展開しており、子どもでなくても、ついつい立ち寄りたくなります。

昔からの老舗であることに慢心せず、常にお客様に楽しんでいただこうとする姿勢や工夫が、たくさんのファンを惹きつけているようです。

町田は「心ある街」

町田に住んでみて森野さんが感じているこの街の印象を伺ってみると、

「中心部は賑わっていますが、少し離れると住宅街は静かで、自然も豊富。住みやすさと便利さが共存している街だと思います。

お祭りが今も続いていて、街中の子もハッピを着てお神輿をしたり、獅子舞があったりと、東京でありながら地域とのつながりを感じますし、小さい頃からよくお店に来ていた子ども達が大きくなっているのを見ると、この街の時間の流れを感じます。

町田はお店の入れ替わりも多く、パチンコ屋やゲームセンターが増えているのが気になっています。それだけ人が集まるのかもしれませんが、年配の方が来にくくなるのではと。毎朝、ボランティアのおじいちゃんやおばあちゃんが、街のゴミ拾いをしてくれているんですよ。そういう心が残っていってほしいです」

長年暮らした自分の街や生活を慈しむ町田のシニア世代。一方で、学生の若いエネルギーが街に新しい活気を生み出しています。多世代がお互いを思いやる心ある街。そんな町田がこの先また100年、富澤商店と共に続いていったら素敵ですね。

【お店情報】
富澤商店 町田本店(とみざわしょうてん まちだほんてん)
所在地:町田市原町田4-4-6
TEL:042-722-3175
営業時間:10:00〜19:00
定休日:正月のみ休
URL:http://tomiz.com/

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