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古い物が人を癒す。風通しの良い交流の場に / 町田天満宮ガラクタ骨董市 古久根淳子さん

2019.09.03

【店名】町田天満宮ガラクタ骨董市(まちだてんまんぐうがらくたこっとういち)
【ジャンル】マルシェ
【ご担当者】古久根淳子さん
【所在地】原町田1丁目

町田で28年続く、人気のガラクタ骨董市

毎月1日に開催されている町田天満宮ガラクタ骨董市、行ったことはありますか? 開催日には、町田駅から会場である町田天満宮に近づくにつれて、日よけの帽子を被り、戦利品を持ち帰るカートを引く、ガラクタ骨董市目当ての人々がどんどん増えてきます。

出店数はなんと約130店。町田天満宮の境内をびっしりと埋め尽くすほどのお店が、町田近郊からはもちろん、遠くは愛知、静岡、京都、千葉などからも集まります。

何年も出店し続けている古参のお店もあれば、若い世代が切り盛りするお店もあり、それぞれがいつもほぼ決まった位置にテントを張って、この日のために仕入れをした、とっておきの骨董品やアンティーク、ヴィンテージなどを所狭しと並べます。

この骨董市を運営している古久根淳子さんに、お話を伺いました。

町田の人がつないでくれて、天満宮で開催できることに

「もともとは、亡くなった主人がこの骨董市を始めたんです。生きていれば今70才ですが、学生の頃から骨董が好きで、その道に入りました。景気の良い時代だった当時は、骨董の仕事は最先端。修善寺や出雲大社、住宅展示場などいろんな場所で出前骨董市を開催し、出雲には出店仲間と一緒にマイクロバスで行ったりもしました。

定例の骨董市を開催するようになったのは、『高幡不動ござれ市』が最初で、もう33年になります。次が町田。それと『武蔵五日市ふるもの市』の3カ所で、現在開催しています。

町田天満宮で開催できるようになったのは、町田の人が最初にご縁をつくってくださったから。ここは、春は梅の花が咲きますし、クスノキの香りがしたり、とても良い場所ですよね。こういう市は天候の影響も受けるのですが、町田は不思議と今まで一度も中止になったことがないんですよ」

多彩な古物好きが集まる

出店者も多彩ですが、会場を訪れているお客さんの顔ぶれも実にさまざま。まだ夜も明け切らない暗いうちから訪れる常連さんもいれば、外国人や、シニア世代の女性グループ、そして古い物が好きな20代や30代の若い世代の姿も見られます。着物を探しに来る和装の女性も多数。

「町田は基地が近いので外国人の方も多いですね。大使館やホテルから連絡が来ることもあるんです。『今日はやってますか?』って。日本の古い物は外国の方にとっては珍しいんですよね。美術館では見るだけですが、ガラクタ市では手に取って買えますしね」と古久根さん。

皆それぞれ目的は違えど、もれなく楽しそう。お店の人に品物の由来や使い方を尋ねるなど、活発なコミュニケーションが繰り広げられています。

町田には、若い世代にも古い物を愛するカルチャーがある

古久根さんから見た町田は、元気があって、交通の便も良いし、パワーを感じる街だそうです。

「骨董の業界は、若い人が入って来にくい感じがありますが、町田は古い物が好きな若い人が割と多い印象があります。古着など、リサイクルのカルチャーが根ざしているんでしょうね」

境内の一画に若いご夫婦のお店を見つけたので、お話を伺ってみました。もともと狛江で古い物を集めた雑貨屋「houti(おうち)」を営んでいたご夫婦で、現在は千葉県に移り住み、インターネットやイベント出店を中心に営業しているそうです。

「町田天満宮ガラクタ骨董市には、もう10年ほど出店しています。品物の仕入れは、古い家にあった物を処分してほしいという連絡をいただいて引き取りに行くことが多いです。ジャンルは限定せず、日本の物も、海外の物も取り扱っています。町田には馴染みのお客さんもできて、毎回来てくださるのが励みになりますね」

いろんなことがタイトな時代に、骨董が果たす役割

町田天満宮ガラクタ骨董市を運営している古久根さんは、「古い物には人を癒す力がある」と言います。

「古い物を見ると、お年寄りは昔自分がいた空間を思い出し、ホッとして疲れを癒します。今はいろんなことがタイトな時代です。時間も、人間関係も。その中でタイムスリップして、その癒される空間がつくれたら良いですよね。

時代と共に今は古い物も少なくなって来ていますが、そういう意味でもやっぱり必要だと思うんです。やらせてもらえるうちは続けたい。

これからますます効率が良くなって、人がしなくても良いことが増えていく中で、骨董市は希少価値。時代が進みすぎちゃって付いていけないという人もいると思いますし、昔は電話だったけど、今はメールやラインで言葉を話さなくなりました。でも、人って誰かと話したい、会いたいものだと思います。人との関係がどんどん希薄になっている時代に、そういう場がこれからはたくさん必要になると思うんです。それが、人が集まるのが大好きだった主人の意でもあります」

昔のがんじがらめのコミュニティとは違い、皆が自由に出入りできて、行くと誰かがいて、買ってもいいし、買わなくてもいいし、名前も知らないし、でも「元気?」って声をかけてくれる人がいる。そんな風通しのいい自由な関係の場としても、町田天満宮ガラクタ骨董市はこの街に存在し続けてほしいコミュニティに違いありません。

【お店情報】
町田天満宮ガラクタ骨董市(まちだてんまんぐうがらくたこっとういち)
所在地:町田市原町田1-21-5
TEL:090-3314-1994 (かながわ骨董市代表)
営業時間:毎月1日7:00〜15:00 (1月と11月は変更あり)
URL:https://kanagawa-antique-market.crayonsite.net/

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