REPORT

【レポート】町田を面白がる会「芹ヶ谷公園の未来を考える編」

2019.10.21

ショッピングビルが建ち並ぶ町田駅前から15分ほど歩けば、ホタルやカブトムシのいる豊かな森が広がっていることをご存知でしょうか?

その森とは、東京都町田市の「芹ヶ谷公園」。高低差のある谷の地形と元々の雑木を生かした、総面積15万㎡を超える広大な公園です。北西は小田急線の線路に面し、南はちょうど原町田3丁目・4丁目の境目、駅前の商店街が終わる辺りまで続いています。

南側には日本では数少ない版画専門の「町田市立国際版画美術館」があり、2019年10月からは、北側の端に「芹ヶ谷公園グラウンド」もオープン。街の中心地に近いこの大きな公園を、「町田の魅力の1つ」として、もう一度整備していこうという動きが始まっています。

1982年の開園以来、町田市民の憩いの場であり、毎日のように足を運ぶ人もいる芹ヶ谷公園の未来について、気にかけている町田っ子も多いことでしょう。

そこで、この公園の再整備にあたり、市民の皆さんと一緒に課題や使い方のアイデアを考えたいという想いから、町田市は今回のイベント「町田を面白がる会 -芹ヶ谷公園の未来を考える編-」を開催しました。

子どもからご年配の方まで、この公園を愛する大勢の人が町田市立国際版画美術館の講堂に集まったこの日の様子をレポートします!

「面白がる会」って?

唐品知浩(からしなともひろ)さん。オモシロガリスト。株式会社リクルートで営業を15年務め、2012年に退社後、株式会社リゾートネット取締役として『別荘リゾート.net』を運営・管理しながら、個人ホールディングス化を意識して不動産周りで多角的な活動を行なっている。合同会社パッチワークス アイデア係長、ねぶくろシネマ実行委員長、YADOKARI小屋部部長。

「面白がる会」というのは、オモシロガリスト唐品知浩(からしなともひろ)さんが全国各地で開催している「課題解決型アイデア出し」イベントです。

唐品さんはこれまで、お住まいの調布市で仲間と始めた「調布を面白がる会」を始まりとして、神田・日本橋・横浜・広島・京都・宮崎などのさまざまな地域や、不動産・働き方・多拠点居住・PTA・父親・恋愛離れなどの多岐に渡る見過ごせないテーマについて、参加者と一緒に面白がってきました。

他人の意見を否定しない。難しい課題をポジティブに話し合う

「面白がる」というと、何かちょっとふざけているように思う人もいるかもしれません。ところがここに、なかなか解決できないような社会課題や大きなテーマを考える際の、大事なポイントがあるのです。

唐品さん「面白がる、というのは、難しい課題に対して自分事として捉え、今までの慣例や常識に捉われず、たとえぶっ飛んだアイデアでもいいから『こうだったらいいな』というのを考えてみることです。

面白がる会は、17世紀頃のイギリスにあったコーヒーハウスをヒントに生まれたのですが、そこは入場料さえ払えば、階級や職業、年齢も関係なく、誰もが自由に対等に意見を言い合えた場所でした」

確かに、難しいことを会議室で難しい顔をして考えるよりも、カフェで友達と話すようにアイデアを出し合うことで、予想外の柔軟な発想が飛び出すかもしれません。

面白がる会の4つのルール
・人の意見を否定しない
・難しい言葉・専門用語を使わない
・偉そうにしない
・思いついたアイデアはどんどん発表

芹ヶ谷公園の未来を皆で考えるにあたり、この「面白がる会」は9月、10月、11月と3回に渡って開催します。今回は特に、芹ヶ谷公園の現状の問題点や課題を見つけることが目的です。

町田の課題と芹ヶ谷公園の可能性

出典:「RESAS(地域経済分析システム)を活用した分析事例 東京都町田市」(2017年11月関東経済産業局)

初めに唐品さんから、町田市の現状について、データを元にお話がありました。

唐品さん「町田市の人口は現在約43万人。20才〜24才の人口は多いのですが、25才〜29才で一気に減る傾向があります。でも、子育て世代になるとまた増えるんです。

町田の皆さんの休日の過ごし方は、なんと回答者の約8割がグランベリーモールに行っています。続いてリス園。ここに割って入ろうというのが、芹ヶ谷公園ですね!(笑)

歴史としては、絹の道と二・六の市に代表されるように、宿場町や商業の街として栄えてきました。昭和の時代には団地ができて一気に人口が増え、『23万人の個展』という市民発の芸術祭なども開催された活気のある街です」

町田でも駅前周辺の建物の老朽化やシャッター街化、店舗や文化コンテンツの魅力低下による集客・就業減少の懸念がある。出典:「まちだニューパラダイム 2030年に向けた町田の転換」(編集:町田市未来づくり研究所 2015年3月発行)

唐品さん「ところが、今は近隣の駅にも大型のショッピングビルができ、周りの街も魅力的になって行く中で、『町田はどうする?』というのが問われています。町田のこれからの魅力をどのようにつくっていくかが、大きなテーマなんですね。その中で芹ヶ谷公園は、とても重要な場所です。

世界で最も高価なマンションというのがニューヨークにあるんですが、そのいちばんの目玉は部屋からセントラルパークが見渡せること。つまり『公園』には、そのくらいの価値が出せる可能性があるということです」

東京都豊島区の「南池袋公園」(Photo Via:https://www.facebook.com/Minamiikebukuropark/

静岡県沼津市の「泊まれる公園 INN THE PARK」(Photo Via:https://www.innthepark.jp/

また、2017年6月に都市公園法が改正され、公園内に、社会福祉施設や、民間事業者による公共還元型の収益施設が設置できるようになりました。具体的には、公園の中で保育所やレストランなどを営業できるようになったのです。

これを機に、豊島区の「南池袋公園」にはカフェが設置され、それまでよりも多様な人々が多様な目的で公園を利用するようになりました。静岡県沼津市では、長年愛されてきた「少年自然の家」の敷地と建物が宿泊施設として再整備され、「泊まれる公園 INN THE PARK」として人気を集めています。

このように、公園という公共空間に新しい風が吹き始めているのです。

唐品さん「『芹ヶ谷公園があるから町田に住もう』みたいなことになると良いですよね。将来の子ども達へ、どんな公園、どんな街を渡していくのか。ぜひ皆で考えてみましょう」

チームに分かれて公園内へフィールドワークに!

さてここからは、いよいよ課題探しのフィールドワーク。6つのチームに分かれた参加者の皆さんと、市の職員や芹ヶ谷公園の再整備に関わるスタッフも一緒に芹ヶ谷公園の中へ出かけました。

この10年、毎日のように子どもと芹ヶ谷公園へ来ているという町田在住の女性からは、

「やっぱりこの公園のことは他人事ではありません。公園の中に飲食店がほしいとずっと思っていました。アメリカンドッグみたいなものではなくて、健康的で美味しいものをちゃんと食べさせてくれるようなお店です」

芹ヶ谷公園の中央にある虹と水の広場の噴水では、子ども達が水遊びをする姿も日常的に見られます。芹ヶ谷公園によく通っている参加者からの情報によると、

「この水は湧き水だそうなんですよ。でもお母さん達からは水質について懸念する声も聞きます」

多目的広場では、こんな声も上がりました。

「ここは広すぎて木陰がないから、夏は誰もいないんですよ。いろんなことができそうなのに」

お仕事で時々町田に来ているという参加者の方からは、

「町田は、駅前はごちゃごちゃしてるけど、こっちは野っ原があって良いんだよね。ただ、駅からこの公園までの道が分かりにくい」

公園内の落ち葉を集めて捨ててある「落ち葉だまり」に案内してくれた参加者の方が落ち葉を掻き分けると、腐葉土の中にはカブトムシの幼虫がゴロゴロ!

「こんなにカブトムシがいるのを誰も知らないでしょう?活かせていないのがすごくもったいない。どうにかできないかなと思っているんです」

芹ヶ谷公園の課題をチームごとに発表

あっという間に時間いっぱいとなり、参加者の皆さんは講堂に戻って、フィールドワークで発見した課題をチーム内で整理しました。解決アイデアまで生まれたチームもあります。その発表の内容をご紹介します。

【Aチーム】
●芹ヶ谷公園の課題
たくさんの入口があるのは良いけどサイン必要/入口が分かりづらい/公園のデザインで何を重要視するか、自然を大事にするのか

●良い所・もっと良くするアイデア
水を楽しむ環境が子どもに良い/町田発の、町田のお店だけのフードフェス/癒しをテーマにしたヨガや音楽フェス/高齢者と子どもの接点になるアートの場所やイベントがあると良い/泊まれる場所(ツリーハウス)があると良い、大人と子どもが別々の夜を楽しめるとか/白い壁があると映画を観たり壁打ちができる、落書きもできると良い/段々畑を作り、地産地消/ペットがいるのは良いのでドッグランがあると良い/夏は暑いので公園のベンチに屋根があると良い、ソーラーパネルになっていてベンチで充電したりWiFiも飛んでいる/ゴミ箱を分別を教えながら設置する/バルーンで場所を知らせる/カブトムシを有効活用/建物ではなく公園でイメージを作れると良い

唐品さんコメント「子どもを安心して遊ばせておきながら、大人は大人で楽しめるようになっていると良いですよね。大人も子どもも楽しめる公園になると良いですね」

【Bチーム】
●芹ヶ谷公園の課題
冒険遊び場は雨の日に行けない、雨が降っても行きたくなる公園に/19時以降公園に入れない(カブトムシを採りに行きたいのに)/大きな広場の真ん中はあまり使われていない、周りには人がいるけど/トイレが汚い/駐車場・駐輪場が少ない/駅からの道が分かりづらい/どこが入口?/駅から遠い/奥に進むにつれて面白くなくなる/夏は気持ちいいのに冬のコンテンツがない/

●良い所・もっと良くするアイデア
○○するな!という禁止はしてほしくない/雨の日や夏の日差しのキツイ日にも行ける屋根があると良い/おにぎりを買いたい(喫茶けやきではテイクアウトOK)/版画美術館は世界でも珍しいので特性を生かした方が良い/カブトムシの聖地、そして保護/雨の日でも座れる水はけの良いベンチがほしい/冒険遊び場はこの公園の魅力!/もっと小さな子どもが遊べる場もあると良い/シャトルバスがほしい(あったのになくなった)/ひだまり荘をもっと活用できると◎(無料休憩所なので。ここを寺子屋にしても良いかも)/湧き水がある/自分が自分らしくいられる美術館がほしい、子育てにも◎/シェアカフェ(お母さん達が日替わりで個性を生かして出店できるようなカフェがあると良い)/変に遊具を作ってほしくない、自然の中で遊んでほしい/鶴見川公園のようなバイオトイレを作ってほしい/寺子屋カフェ(屋根だけでも良い)/野鳥がたくさんいるのが良い/この公園を通して雇用を生めたら良い(町田のお母さんは町田で働きたい)

唐品さんコメント「公園の奥の方が面白くないという課題に対しては、奥の方だけ有料制のクローズドの空間にしても良いんだよね。子どもを安心して遊ばせられる。そういう場所も一部あっても良いかもね」

【Cチーム】
●芹ヶ谷公園の課題
駐車場の整備/サインが見えない/自然が素晴らしいが知られていない/外から公園が見えない/トイレの位置とデザインが悪い/公園のルールが分からない/アートと公園のつながりが分からない/交通が不便、バスがほしい/入口が分かりにくく、迷う/飲食がない/パーキングに来づらい、道が狭い/水質に不安を感じる/広場の先の崖が行き止まりに見える

●良い所・もっと良くするアイデア
生き物がほしい(釣り堀とか)/個人が寄贈できる美術館がほしい/もっとゆっくりアイデアを出したい、四季ごとのアイデアなど/公園内の雑草や草花を採って遊びたい/落ち葉を活用したい

唐品さんコメント「公園内にプロフェッショナルな人がいると良いのかもね。ザリガニ釣りのプロとか、雑草のプロとか。この日はこの人の日、という感じで、いろいろ教えてもらえたり、一緒に遊べたりする。やはりハードだけ作っても意味がないので、公園のソフトをどうするかが重要ですね」

【Dチーム】
●芹ヶ谷公園の課題
噴水が人気すぎてカオス?/怖い噂が多い/版画美術館の年間の入場者数が少ない/周りに良いカフェもあるけど連動していない/坂が多い、急坂問題、辛い公園、過酷な公園/おしゃれなレストランがない、デートに行く気はしない/樹や草が大きくて暗いイメージ/谷地形を生かしきれていない/水を生かしきれていない、防災などに使えるのでは?/サインがなくて迷う、回遊性が低い/駅から遠い、交通の弁が悪い、バスもない

●良い所・もっと良くするアイデア
芹ヶ谷公園と教育(町田の土で陶芸、小中学校とのつながり)/ポケモンは町田生まれ(ポケモンGOなどと連動すれば今の分かりづらさが逆に魅力に)/水路をもっと活用すると良い/新しい交通手段(モノレール、ジップライン)/入口が分かりづらいことを価値に変える

唐品さんコメント「道路にある何かの足跡を追ってきたら、いつの間にか芹ヶ谷公園に辿り着いちゃった、みたいな導線のデザインもできるかもしれないですね。自然に人が集まって来ちゃうような仕掛けができると良い」

【Eチーム】
●芹ヶ谷公園の課題
来づらい、コミュニティバスなども分かりづらい/自然を残す

●良い所・もっと良くするアイデア
ホタル・カブトムシ・ザリガニなど自然マップがあると良い/写真スポットがあると良い(日の出がきれいに見える)/秘密基地(大人版)を作れる環境、童心に帰れる町田/カブトムシやザリガニが採れる/朝、暑い日も、公園の中は涼しい/分かりづらいところが冒険感があって良い、下町間、穴場感/四季が感じられる(街なかでは感じられない)/自然がいっぱい、遊び場がいっぱい/かわいいザリガニがいっぱい/冒険遊び場を大きく/人を呼ぶ魅力を作る/企画展・個展をやること/文学館、博物館を持ってくる

唐品さんコメント「自然が良いと言っても、野放しでは自然は維持できないんだよね。そういうことまで子どもも学べるように、活動を交えながら森を守るようにしていくと良いかもしれない」

【Fチーム】
●芹ヶ谷公園の課題
飲食店少ない(しゃれた店を)/遊歩道が狭い(走っている人と歩いている人、ベビーカー、自転車の動線の交錯)/暗い、うっそうとしている、怖い、暗くなったら近づいてはいけない、急坂を下るしかない/樹木整備、でも切りすぎないで/「町田は子どもが育てやすい」と言われるけど本当は?期待値高い

●良い所・もっと良くするアイデア
もっとこまめに清掃してほしい→誰かにやってもらうのではなく、きれいにする代わりにポイントが貯まる→ヨガの会場費にしたり、虫採りに使えるサポーターポイント/版画美術館もっとがんばる(個人所蔵品も寄贈するなど)/ポケモンの原点としての虫採り公園に(2020年、外国の子どもや地方の虫採り少年と交流)/里山の豊かさ、自然の豊かさ、虫が採れる都市公園に(自分達で育てれば採ってOK)/子どもが自由に遊べる、それを大人が見守る懐かしい未来がある公園

唐品さんコメント「美術館といっても、誰もが構えずに来られるような場所にしていくと良いかもしれないですね。何気なくフラッと入って行けるような。怖いイメージがあるのなら、それ以上に良いイメージをこれから作って行って、この公園を市民が自慢できるような場所にしていけるといいよね」

全チームが発表を終えたところで、町田市政策経営部企画政策課の戸田 勝さんがコメントを述べました。

「今日はいろんな方に参加していただき、たくさんの意見が出たことが非常にうれしいです。これからも皆さんに、芹ヶ谷公園を『自分の公園』だと思って力を貸していただきたいですし、一緒に作っていきたいと思っています」

参加者の声

最後に参加者に今日の感想を伺いました。

もうすぐ町田に住むことになるという、造園業をしている男性は、お子さんと一緒に参加しました。

「職業柄、この公園がどうなるのか気になって参加しました。これからこの町に住む身として、同世代や若い世代の人とも、街に関わるこういう話ができたことが良かったです。」

町田に住む主婦の方も、お子さんと一緒に参加してくださいました。

「大人から環境保護の意見が出る中で、子ども達からも、自然を壊さないでほしいという声が出たのが印象的でした。世代は違っても、自然を大事に思う気持ちは同じなんだなぁと。保護と言っても禁止事項ばかりではなく、楽しさも必要ですね」

長年、町田のまちづくりに携わって来た70代の男性は、

「今日は楽しかったですね! 高校生からプロのランドスケープデザイナーまで、同じテーブルで話せたのが良かった。若い人がこれからの地元のことを考えてくれるのはうれしいです。町田は昔から行政と市民の距離感が近い街なんです。やはり自分は、若い人の応援ができる年寄りでいたいと思います」

俳優やリポーターとして活躍している、町田在住のタレント カイル・カードさんも参加されていました。

「町田市にはいろんな人がいて、いろんな悩み事があって、いろんな考えがあるんだと感じました。皆がフラットに、自由に話せる今日のような場はとても良いことだと思います。公園のあり方のアイデアも面白かった。一つでは難しくても、アイデアをいくつか足すと良いものになる気がしました」

今日の「町田を面白がる会 -芹ヶ谷公園の未来を考える編-」では、参加者が子どもから年配の方まで多世代に渡っていたのが大きな特徴でした。そして世代は違えど、芹ヶ谷公園を想う気持ちや、自然を大切にしたい気持ちは同じです。

町田の中心市街地からすぐの場所に、自然あふれる公園と美術館があることは、都会のみならず全国的に見ても大きなチャームポイント。街なかの賑わいとうまく連動を図りながら、次世代の若者や子ども達にとっても町田の自慢になるような公園に磨いていけたら良いですね。

次回は11/4 に町⽥市⽴国際版画美術館・講堂にて、「町⽥を⾯⽩がる会 -芹ヶ⾕公園の新しい使い⽅を考える編-」を開催します。

詳細▶︎ https://machida.life/community_planning/700/

9⽉の第1回で出た課題に対して、解決策となるような新しい使い⽅を皆で考えていきます。たくさんの⽅のご参加を楽しみにお待ちしております!

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