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​【レポート】\第4回 町田一箱古本市 by RIDE ON シバヒロ/広がり続ける、本が繋ぐ人の輪

2020.12.04

移転した旧市役所跡地に​2014​年にオープンした「町田シバヒロ」。総面積​5700​m²となる広 大な芝生の広場では、市民の日常的な交流拠点として育てるためにさまざまな催し物が行われていますが、その中でも人気のイベントのひとつが「町田一箱古本市」です。

一箱古本市とは、「みかん箱サイズの一箱」(ダンボール箱や木箱、トランクなど)に詰めた古本を販売する、フリーマーケット型の古本市のこと。​2005​年に東京の谷中・根津・千駄木で「不忍ブックストリート」が開催されたのをきっかけに、現在ではさまざまな地域で行われるようになりました。

10​月に開催された第​3​回に続き、前日の雨が嘘のような晴天となった​11​月​21​日(土)(12:00​〜17:00)​には第​4​回町田一箱古本市が開催されました。今回はどのような個性と思いが詰まった「一箱」がお目見えしたのでしょうか。

第​4​回町田一箱古本市、スタート!

回数を重ねるごとに出店者が増えている町田一箱古本市。今回は最多の20組が出店、個性あふれるラインナップとなりました。

経験者だからこその一箱の作り方も

第1回目に出店しているという「晴山屋」さん。 家族連れで訪れるお客さんが多いことから、児童書を中心としたラインナップに。

「私自身も児童書が大好きで。今回、手に取ってくれるお客さんが多かったら、いつか一箱 全部、児童書にできたらいいな」と密かな野望を語ってくれました。

児童書と言うとお子さん向け……というイメージですが、実は年代問わず楽しめるもの。 「せっかくだから、少しマイナー寄りの作品を集めてみた」のだそう。気になるタイトルが あれば、その魅力をたっぷりと解説してもらえるので、ついついどの本を欲しくなってしまいます!

10月に行われた第3回に引き続いての出店となったのが「翠色倶楽部」さん。

今回、イベントも行ったきんじょうみゆきさんの読書会がきっかけで一箱古本市の存在を知り、出店するようになったのだそう。

「自分の好きな本、思い入れのある本を並べています。あとは季節に合うものだったりとか。今日は絵本を手に取ってくださる方が多かったですね」

絵本を手に取ったお客さんと一緒にページをめくりながら、その内容で盛り上がる場面も見受けられました。

子ども店長たちが大活躍!

今回、目立ったのが初参加のお子さんたち。

町田市立町田第一小学校のお父さんたちによる「お父さんネットワーク」。普段からさまざ まなイベントや活動に子どもたちと一緒に参加しているのだそうです。今回は、お父さんた ちにサポートしてもらいながら子どもたちが接客を担当していました。

「夏にシバヒロであったイベントで主催の方と知り合ったのがきっかけで、古本市の存在も知りました。人と触れる体験をしてほしいな、ということで子どもたちに好きな本を持ってきてもらって並べてみました。大人では絶対には作れないラインナップだなと思って、見ていておもしろいですね」

時にはお客さんと店主という形で子ども同士がコミュニケーションをとるシーンもあり、本 を通してまた新しい話題が広がったのではないでしょうか。

こちらのお店は、娘さんと、娘さんのお友達との参加です。

「ちょうど、本を入れ変えたいな、と思っている時期にこちらのイベントをSNSで見つけて参加してみました。場所も良くて気持ちいいなー、と。ピクニック気分で楽しんでいます」

また、本を買ってくれたお客さんへのプレゼントとして手作りのかわいい「お弁当」も。

イベント自体はもちろんのこと、準備も親子で楽しめるのは醍醐味のひとつかもしれませんね。

「子ども店長Yui」では“店長”手書きの看板でお出迎え。

参加理由はとってもシンプルで「パパから教えてもらって楽しそうだったから」。(実際に)出てみても楽しかったです!」と笑顔で話してくれました。

子ども店長たちが楽しそうに接客している様子に、今後もお子さんたちの参加も増えていくかもしれませんね。

パッと目を引く店構え

今回が初出店という方も多くいらっしゃいましたが、その中でも特に目を引くお店が。

こちらの店主さんは9月にシバヒロのサイトでイベントのことを知ったのだそう。

「一箱って聞いて、何か作ってみたいな、と思ったんですよね。この外側の本棚を作りたい 願望のほうが先にあって(笑)それでせっかくだから、タイトルに『作る』が入っている本を集めてみました」

DIYに関する本が多く出たということで、これは手作り本棚の効果かも!?

そして、軽やかな音楽とともに、古本市開場時からにぎわいを見せていたのが「徳江 仁」 さんのお店。相模原からの参加です。

「自分の気になる本を持ってきました。興味のある本があったらどれでも説明できますよ」という言葉通り、どの本も楽しく解説してくださるのでついつい聞き入ってしまいます。

そして目を引くのがアナログレコードプレーヤー。「好きな曲があったらかけてあげるよ!」と言っていると「洋楽はある?」と足を止めるお客さんも。

本だけではなく、音楽でも大いに盛り上がりを見せていました。

モリノおとな絵本部inシバヒロ

そして、一箱古本市をさらに盛り上げるのが3つのイベントです。

ひとつめは「まちだ旅する絵本」実行委員の鈴木由香さんによる「モリノおとな絵本部inシバヒロ」。

町田パリオで月に1回開催(現在はオンライン)されてきた絵本の読書会がシバヒロに登場です。

鈴木さんが絵本を読む声に誘われるようにして次第に人も集まってきます。

今回、参加者は「旅」をテーマとした絵本を持参。参加者自身が絵本を読み聞かせたり、その魅力を紹介したり。

持参した絵本を紹介する際は熱く語り、ほかの参加者の絵本には前のめりで話を聞き……その場の熱も徐々に上がってくるのがわかります。

「その絵本読んでみたいな」という声も聞かれ、イベントが終わるころには、絵本を通してすっかり打ち解けたムードに。

鈴木さん「2019年8月からこの絵本の読書会をやっているんですが、ずっと室内でしたし、 新型コロナが広がってからはオンラインで続けてきて、今回は久々のオフラインでの開催でした。

『外だし、久しぶりだから』と顔出してくださった方や、出店者の中から初めて来ました、という方だったり、いろんな方とお会いできて楽しかったです。

いつも参加した方々のなかに、何かしらつながりがあるのが楽しいもの。絵本の読書会では男性の参加者の中が少ないんですが、今回は半分は男性で、その参加者の方々が持ってきた絵本が同じだったという素敵な繋がりも生まれました。

また、読書会は個人の活動なんですけど、『まちだ旅する絵本』の実行委員をしていることもあって、『今日の出会いの中で誰かに旅立たせようと思って持ってきました』というがお2人いらっしゃいましたし。

偶然の集まりのはずなのに繋がりがあったり、『まちだ旅する絵本』も絵本を通じておもしろい出来事やエピソードが生まれていくんだろうなあ、と思うと本当にワクワクしてきますね」

絵本を通じて新たな繋がりが生まれ、その繋がりからまた新しいコミュニケーションが生まれる。本を読むというひとりの世界が広がっていくのを感じます。

読書会「きんじょの読書会:世界観を探る」

太陽の光が暖かに差すなか行われた2つめのイベントは読書会「きんじょの読書会:世界観を 探る」。マイクロライブラリー「きんじょの本棚」を12か所で展開しているほか、推し本紹介型の読書会「きんじょの読書会」を毎月開催しているきんじょうみゆきさんを中心に参加者の方が本を紹介していきます。

参加者同士で自己紹介と、「24時間以内にあった楽しいことを話す」アイスブレイクを挟んで緊張がほぐれたところで、参加者が本を紹介していきます。

「世界観を探る」と聞くと壮大なテーマのように捉えてしまいますが、今、自分が持っている本、気になる本、たまたまバッグに入っていた本も、自分の世界観を作っているもののひとつ。その本を紹介することで誰かの新しい出会いになったり、ほかの人の意見を聞くことで自分も新たな世界の扉を開くことになります。

参加者が持ち寄った本もさまざま。別の読書会でテーマになっている本を持ってきたという人もいれば、影響を受けた本を紹介する人も。

きんじょうさん自身は嘉門達夫『たかくら』を紹介。

それぞれの本について読んだことがある人は自身の感想を語ってみたり、未読の人は「買っ てみよう」とタイトルをメモしたり。終始わきあいあいとしたムードでした。

きんじょうさん「私が読書会やマイクロライブラリーをやっている理由のひとつは本と人が出会う場所を見ているのが好きだからです。

そして、人が好き。その人を知るためにその人が紹介する本を読みたい、好きな本を知りたい、というところからスタートしているので、聞いているとその人の『なんでこの本を選んだのかな』とか『この本読んでどう思ってるのかな』とかそういうことを聞くのがとても楽しくて。今日も、その場のライブ感覚を楽しませていただきました」

初めて出会った人とも、その人が紹介した本を読むことで、グッと距離も縮まりそうです。読書好き同士ならではの距離の縮め方かもしれませんね。

​ほりだし読書会

最後のイベントは本にまつわるさまざまなイベントで実行委員を務める深澤康平さんによる「ほりだし読書会」。

その日の古本市で出会った本を紹介し合うイベントです。

お子さんの参加が多かった今回の古本市。ここにもお子さんの姿が! すでに買った本に夢中です。

どうしてその本を買ったのか、その本の魅力は何なのかを楽しそうに語る参加者に自然と笑顔がこぼれます。

途中「自分が出店するとしたらどんな本を出す?」という深澤さんの問いかけに、みなさんが自分の本箱のイメージを語るなど早くも次回開催に向けてのワクワクも広がりました。

人と人のふれあいがあるからこそ手に取る本がある

実はこの日は風が強く、急きょテントを撤収するというハプニングがあったものの、それも楽しい思い出。距離を保ちつつもあちこちで本の話題で盛り上がり、最後まで笑顔が絶えないイベントとなりました。

印象的だったのが「普通に本屋さんにあっても買わないけど、こういう場所で誰かに勧められると買ってみよう、読んでみよう、という気持ちになります」という参加された方の言葉。人とコミュニケーションを直接とることができるからこその本の出会いもあります。

個性あふれる「一箱」の古本たち。店主の元から別の誰かのもとへと旅立ち、その誰かの世界観を作るきっかけとなる。そんな素敵な出会いがあふれた第4回一箱古本市となったのではないでしょうか。

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