REPORT
【レポート】秋のシバヒロゆる煎茶会 ~お茶のある日常を見つけてみよう~
2019.11.26
移転した旧市役所跡地に2014 年にオープンした「町田シバヒロ」。総面積5700㎡の広大な芝生の広場です。この場所を地域の交流拠点に育てていくため、地域の方のアイデアをもとに、様々なイベントを行っています。
今回は、「屋外での茶会」という地域の方のアイデアから、芝生の上で「ゆっくり、のんびり」と過ごす煎茶会を開催しました。
屋外でのお茶会?
去る10月27日(日)、13:00~15:00に、「秋のシバヒロゆる煎茶会」が開催されました。
今回の煎茶会を担当したのはこちらのお2人。左が今回ファシリテーターを務めた、いただきますの編集者カンタさん。右がティ―エッセイスト・日本茶アーティストの茂木雅世さんです。
煎茶道の師範であり、茶育指導士でもある茂木さん。お茶の世界は決まりごとが多く「失敗しちゃダメ!」というイメージが強いけれど、もっと緩やかに楽しめるものでも良いのではと考え、より身近にお茶を感じられるよう様々な活動を行っています。
この日のイベントでは、茂木さん、カンタさんを中心とした円形になるようマットを配置。
リラックスした雰囲気で煎茶会がスタートしました。
茂木さん「お茶会と聞くと緊張感があるかもしれないけれど、芝生の上でのんびりと、自分と向き合う時間にしていただけたらと思います」
お茶をシェア
「先入観なくお茶を味わって欲しい」という茂木さんの考えから、最初は名前を出さずにお茶が提供されます。
近くの人と3人~4人でグループを作り、一つの急須からお茶を分け合います。茶筒を回してグループごとに茶葉を急須に入れたら、中央のポットにお湯を注ぎに行きます。基準となるお湯の量や抽出時間は茂木さんから説明がありますが、好みに合わせて自由に調節して良いとのこと。
茂木さん「自分はこんな味が好きなんだ、と気付いてもらえるように。グループの人とも自分の好みを話し合いながら
お湯を注いだら、グループの方と談笑しながら、お茶が抽出されるのを待ちます。
時間が来たら、いよいよお茶を湯飲みに注いでいきます。
ポイントは最後の一滴
茂木さんによると、急須の中の最後の一滴までしっかり待って注ぎきることが大切だそう。最後の一滴に旨味がギュっと詰まっているそうです。
急須を傾けゆっくり待つことで、意外とたくさん雫が落ちてきます。もう出ないと思ったら、急須を横からポンポンと優しく叩いて再び傾けると、まだまだ雫が落ちてきます。
みなさん早くお茶を飲みたい気持ちをこらえ、ゆっくりと、雫が落ちていく様子を眺めていました。
最後の一滴まで注ぎきったグループから、お茶を味わいます。一人一つ提供された「菓舗 中野屋」さんのどら焼きを片手に、なごやかな雰囲気でお茶を楽しんでいました。
一煎目との違いを味わう
一煎目を味わった後は、再びお湯を注いで二煎目を。二煎目は茶葉が開いているので比較的すぐに飲めるそうです。
一煎目と二煎目でかなり味わいに違いが出るようで、グループの人と違いを話し合う場面も見られました。一煎目と比べて柔らかくなる、まるくなるといった声が印象的でした。
なかにはもう一度お湯を入れ、三煎目を楽しむグループも。こちらはかなりあっさりとした味わいになるようです。
茂木さんによると、何煎目が好きかで自分の好みが掴めるそうです。
感想を言葉に
お茶を味わった後は、感想を言葉で表現してみます。配布された画用紙に短い言葉で感想を書き、見せ合います。
森、山、林など自然を連想させる文字や、実家のような安心感を得られることから「家」という文字など、様々な回答が出ていました。
茶葉の緑からコケを連想し、「冬のプール」と回答した柔軟な発想の方がいたり、「苦」と「甘」というように正反対の感想を書く人がいたり。同じお茶を飲んでいるのに人それぞれ違った感じ方をしていて、感想シェアの時間はとても盛り上がっていました。
一つ目のお茶の正体は?
感想をシェアした後は、いよいよお茶の紹介です。
本日一つ目のお茶はこちら、鹿児島県産の深蒸しの秋摘み新茶でした。
深蒸しとは、茶葉を長めに蒸したお茶のこと。長く蒸すことで茶葉が細かくなり、濃い味のお茶になるのが特徴です。苦味が強いけれどまろやかで、苦くも甘くも感じるお茶に仕上がるそうです。
秋摘み茶とは、文字通り秋に摘んだお茶のこと。唱歌「茶摘み」において「夏が近づく八十八夜」と歌われているように、茶摘みは5月が一般的とされていますが、秋に茶摘みを行うお茶もあるそうです。秋摘み茶は春のお茶よりも熟成されていて、渋く奥深い味わいが出るそうですよ。
感想タイムで「渋い大人の世界」という回答が出ていたのも頷けますね。
続いてのお茶は……自分たちが飲んだお茶について学んだあとは、先ほどと同様、茶葉を回し、急須にお湯を入れ、2つ目のお茶を飲む準備をします。
2つ目のお茶がこちら。先ほどとはかなり色合い、香りが異なります。
茂木さん「香りが立つお茶なので香りも楽しんでもらいたいです」
みなさんコップに顔を近づけ、香りを楽しんでいました。
感想を人に⁉
一煎目を味わった後に、感想を画用紙に書いていきます。今回は茂木さんから「このお茶を人に例えると?」というお題が。
皆さん悩みながら、思い浮かんだ人物像を画用紙に書いていました。
書いた画用紙は、先ほどと同じように全員でシェアします。十人十色、個性豊かな人物像が盛りだくさん。
なぜその人物を思い浮かべたのか。カンタさんを中心にそれぞれの感想を掘り下げ、会場が盛り上がります。
「凛としていて真のある人」、「さっぱりとして頼もしい男の人」という回答から、医療ドラマ『ドクターX』の大門未知子や関口メンディー、国民的アニメのキャラクターなど、着眼点はひとそれぞれ。真面目さの中に優しさがあるという理由で浅田真央さんの名前を挙げた方、優しい雰囲気だけど奥深く本音が見えないという理由から藤原紀香さんの名前を挙げた方もいました。
茂木さんは、「世田谷に住んでいるオシャレな本好き男子」をイメージしたそう。「推定年齢は20代後半で性格は穏やか」と細かく設定も決められていました。
2つ目のお茶は?
感想をシェアした後はお茶の発表です。
2つ目のお茶はこちら、静岡県産の浅炒りのほうじ茶「こはく」でした。棒茶と呼ばれる種類のお茶で、茎だけを浅く炒ってローストしたものだそうです。上品な味わいで、色は黄金色に近いのが特徴。ほうじ茶が苦手なひとでも飲みやすいお茶に仕上がっています。
質問コーナー
2つ目のお茶が発表された後は、2煎目を飲みながらの質疑応答コーナー。お茶に関するあれこれを茂木さんに自由に質問できる貴重な時間です。
ほうじ茶の作り方、おススメのお茶割り、おススメの日本茶カフェ、お茶の淹れ方やお茶に合うフルーツなど、お茶に関する様々な質問に、茂木さんが丁寧に答えていました。なかには茂木さんの回答をメモする方もいらっしゃいました。
印象的だったのは、夏に茂木さんがよく作るという「スパークリンググリーンティ」について。緑茶の茶葉を入れた急須に、少量のお湯とウィルキンソンの炭酸水を入れて3分~5分おくと完成するそう。「急須に申し訳ないなと思うけれどとても美味しい」と笑顔で語る茂木さん。
お茶をより身近に、そして自由に楽しめるよう活動している茂木さんならではのアイデアで、みなさん驚きながらも、「試してみたい」という声があがっていました。
終了後も
盛り上がった質疑応答を終え、幕を下ろした秋のシバヒロゆる煎茶会。
終了後もほうじ茶の2煎目、3煎目を飲みながら、シバヒロに残ってグループの方とお話している姿が多く見られました。
ひとつの急須からお茶を分け合うと、自然と心の距離も縮まるのかもしれませんね。
参加者の声
ここからは、参加者のみなさんの声をお伝えします。
まずは町田市内からご参加いただいたこちらのご家族。大和市から足を運んでいただいたお姉さんは、シバヒロがずっと気になっていて、今回初めて来ることができたそうです。
シバヒロで行われているイベントは常にチェックしているそうで、町田でこのようなイベントがたくさん行われてほしいと話してくださいました。
ご家族でのんびりとお茶を楽しんでいる姿がとても素敵でした。
続いては、一つ目のお茶に対して「渋い大人の世界」という感想を書いていたこちらの男性。町田市在住のご友人と、シバヒロにもよく遊びに来るとのこと。先日シバヒロで行われた『ボヘミアン・ラプソディ』にもご参加いただいたそうです。
「お茶もどら焼きも美味しかった!」と笑顔で話してくれました。のんびりと自由にお茶を楽しみながら、人との繋がりを感じることができたそうです。
続いては横浜市からお越しのこちらのお2人。左側の男性は町田に来るのは2回目、右側の女性は町田に来るのはこの日が初めてだったそうです。
初めてのシバヒロは、周りを気にせず楽しむことができ、お茶の効果もあってとても落ち着く場所だと感じたそう。「日ごろの忙しさを忘れられるひと時を過ごせた」とおっしゃっていたのが印象的でした。
他にも、町田市内からお越しのお茶好きの女性は、「お茶のイベントは外でやるイメージだったが、広々としたところでお茶を飲める点に魅力を感じて参加した」とのこと。広々とした空間で飲むお茶に満足していただけたようで、また開催してほしいという声もありました。
忙しい暮らしのなかで
「屋外での茶会」という地域の方のアイデアから生まれた「秋のシバヒロゆる煎茶会」。シバヒロののんびりとした時間の流れと煎茶の温かさで、身も心も温まる穏やかなイベントとなりました。
芝生の上で輪になってお茶を飲む。そんなシンプルな時間が、人生を豊かにしていくのかもしれませんね。
忙しい暮らしのなかでホッとひと息つける場所へ。シバヒロの新しい可能性が見えた1日でした。
ご参加いただいた皆さん、取材にご協力いただいた皆さん、ありがとうございました。