REPORT
【レポート&動画】「シェア」から考える「住宅幸福論」〜未来町田会議vol.2〜
2019.12.10
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▼【動画&レポート】「シェア」から考える「住宅幸福論」⇒ ◎今回のスペシャルゲスト「自分の暮らしを豊かにしたい!」これまでの社会では、欲しかった新しい服をすぐに買う、ロードサイドにあるチェーン店で食事をする、自分たちだけの新築の家を持つなど、消費でしか暮らしを語らないのがこれまでの時代でした。しかし、国連が発表する「世界幸福度報告」や、国民総幸福量(GHP)で有名なブータンなど、「豊かさ」について考えさせられる場面が増えてきているのも事実です。資本主義の物資的な豊かさを示す国民総生産 (GNP) や国内総生産 (GDP)ではない「豊かさ」が求められているのです。それでは自分の暮らしの豊かさというのは、果たして何なのでしょうか?今回のイベントでお呼びするのは、今の時代を生きる上での方向性や考え方を示してくれるオピニオンリーダーのお二人です。1人目は「シェアすることで、分断された世の中をもう一度つなぎ直す」という想いを胸に、シェアの概念を多くの人に届けるべ内閣府シェアリングエコノミー伝道師としてテレビや雑誌で活躍する石山アンジュ氏 。モノを所有するのではなく、共有することで社会や個人課題を解決するだけでなく、人との繋がりが生まれる世界の創造を目指します。2人目は「住まいの幸福」を考え直し、幸福な住まい方へのヒントを探るレポート「住宅幸福論」を作る島原万丈氏。「Episode1〜住まいの幸福を疑え〜」に引き続き、 2019年5月に「Episode2〜幸福の国の住まい方〜」が発表が発表されました。episode2では、国連の幸福度ランキングで毎年トップ3位内に位置するデンマークの暮らし方に注目した内容となります。
YADOKARIさんの投稿 2019年11月13日水曜日
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旧市役所跡地にある広大な芝生広場「町田シバヒロ」を、地域の交流が生まれる場所にしたいと、町田市ではさまざまなイベントを開催しています。
特に今年度からは、町田のまちづくりを、人任せではなく「自分ごと」としてみんなで考えるイベントを数多く実施。8月に行った本イベントは、「豊かさ」の定義が変化してきた今、「自分にとっての豊かな暮らしとは何か」を見直すきっかけになるような内容でした。
ゲストとして、シェアがもたらす豊かな暮らしを伝え続けている内閣官房シェアリングエコノミー伝道師 石山アンジュさんと、研究レポート『住宅幸福論』において、これからの日本の幸せな住まい方を調査・考察しているLIFULL HOME’S総研所長の島原万丈(しまはらまんじょう)さんをお迎えし、町田のみなさんと一緒に、この町の未来にもつながる豊かな暮らしについて考えました。そのイベント内容をレポートします!
血のつながらない64人と家族を営む
石山アンジュさんは、2017年に渋谷に建設されたソーシャルアパートメント「SHIBUYA CAST. APARTMENT」内のコミュニティ「Cift」のメンバーとして、64人の血のつながらない「家族」とシェアライフを送っています。
入会には面談が必要で、血縁関係がなくてもお互いを「家族」のように思い合える人だけが集まっています。年齢層は幅広く、20代の若者もいれば、第2の人生の居場所としてここを選んだ60代の人もいます。
この一風変わった家族関係のことを彼らは「拡張家族」と呼び、例えば子育てを一緒に行ったり、介護が必要になったメンバーの親御さんに交代で食事を届けたりと、一般的な家族同様(時にはそれ以上)に助け合いながら生活を営んでいます。子育てや介護、日常生活など、これまではごく私的な事柄とされてきた分野をシェアしているのです。
Ciftのメンバーは、各自が持っている拠点(実家や別宅など)も「全国家族拠点マップ」を作ってシェアしており、メンバーは地方へ出張や旅行に行く際に、そのどこにでも無料で泊まることができます。
通常のシェアハウスとは異なり、「家族のつながり」が中心にあるのがCiftの大きな特徴です。
「シェア」とは何か?
そもそも「シェア」とはどういうことなのか、石山さんに国内外の事例と共に教えていただきました。
石山さん「シェアというのは、江戸時代の長屋の暮らしのようなものです。長屋では一つ屋根の下、同じ井戸を共有し、みんなで子育てしたり、お醤油が切れたらお隣さんに借りに行ったりして、隣近所が助け合って暮らしていました。
そんなシェアライフが、なぜ現代にこんなに広がりつつあるのか? それは、インターネットの発達によって、世界中と瞬時にお醤油の貸し借りができるようになったからです」
生活のあらゆる場面で広がるシェアサービス
日本でも海外でも、さまざまなシェアサービスが生まれ、広がっています。代表的な事例を挙げれば、
・自分の住宅を、宿泊施設として旅人とシェアする「Airbnb」
・自家用車を、目的地まで乗せてほしい人とシェアする「UBER」
・使っていない時間帯の施設や自分の部屋などをシェアする「SPACE MARKET」
・ご近所同士で困り事を解決するスキルをシェアする「ANYTIMES」
・共感する人やプロジェクトに対して、お金をシェアするクラウドファンディング「MAKUAKE」
など、モノからコトまで日常生活のあらゆる分野で、シェアは人々のニーズを満たしつつあります。
誰もが、消費者ではなく提供側になれる
石山さんは「シェアのいちばんの可能性は、誰もが提供する側になれること」だと言います。
例えば、中国で人気の高いミールシェアサービス(家庭で自分が作った食事を他人とシェアする)「Home Cooked(回家吃饭)」では、料理上手の60代の女性が作った料理を目指して、毎日のように若者たちが彼女の家を訪れます。若者たちにとっては、外食より安全な美味しいごはんを食べることができ、作る側の女性にとっても彼らが来てくれることが、収入と生きがいにつながっています。
このように、自分の持っている有形無形のあらゆる資産を人と分かち合うことで、今までは消費者としてお金を払って消費するだけだった立場から、自分もサービスや商品を提供する立場に回ることができるのがシェアの大きな魅力です。
シェアがライフスタイルを大きく変える
こうしたシェアのムーブメントは、今までのライフスタイルを大きく変える力を持っています。特に働き方・住まい方においては、固定観念を覆す変化・進化が起こりつつあります。
働き方の変化としては、今までは1つの会社に定年まで勤め、毎日ほぼ同じ場所へ通勤し、労働の対価を得ることが仕事だと考えられていましたが、シェアの概念が一般的になるこれからは、複数の会社や個人と契約して仕事をし、勤務地は自分で選び、あらゆる資産・特技・趣味・時間が仕事になるという世の中になっていきます。
好きな場所で、好きな時間に、好きなだけ仕事をするような働き方にシフトして行くのです。
また、住まい・暮らしの変化としては、今までは会社に通いやすい場所にある1つの持ち家(または賃貸住宅)に、家族や恋人と住むのが家族の在り方・住まい方でしたが、これからはシェアハウスなどを利用して住居1つあたりのコストを抑えたり、不在時は民泊や人に貸すなど収入を得ながら維持したりすることで、誰もが複数の拠点を持つことが可能になっていきます。
複数拠点での暮らしに伴い、家族の在り方も変化する可能性があります。結婚していても別々に暮らしたり、他の家族と一緒に住んだり、血のつながらない人と血縁家族に近い感覚で生活を共にしたりすることも、一般化していくのかもしれません。
物を買うことが豊かだった時代から、つながりを求める時代へ
シェアが世の中を席巻しつつある背後には、戦後の日本が高度経済成長を経て直面している、資本主義の行き詰まりもあります。
物がなかった戦後から大量生産・大量消費を繰り返して、日本の市場や経済は大きくなってきました。「資源は無限である」という前提の下にたくさんの物を作り、一通り行き渡ると、今度は物を個別化してさらに生産・消費を続けてきました。TVが良い例で、昔はTVのある家にご近所さんが集まって見ていましたが、やがて一家に1台になり、一部屋に1台になり、今や1人がいくつも端末を所持する時代になりました。
あらゆる物を1人で持てるようになった時、人と生活を共有する必然性はなくなり、つながりは希薄になりました。その結果、都会では隣に住んでいる人の顔も名前も知らないのが普通になり、地域コミュニティも消えてしまいました。
逆に言うと、お金さえあれば人とのつながりを断ち切っても生活できるのが資本主義社会なのかもしれません。ところが、今後大幅な経済成長が見込めるとは言えない成熟社会においては、これまでお金やステイタスで測られてきた「豊かさの指標」そのものが揺らいでいます。
シェアに最も必要なものは「信頼」
これからの豊かさの指標の一つが、「つながり」や「コミュニティ」であると石山さんは言います。
石山さん「これまでは地縁・血縁・所属組織が人間関係の基盤でしたが、これからはシェアによって人間関係が変わっていきます。誰でも自分の資産や思想、趣味などをシェアすることで、人脈をつくっていけます。人と何かを共有したり、個人間で売買する時に重要なのは“信頼”です。ITやテクノロジーもうまく活用しつつ、どう信頼を築いていけるかが大事になると思います」
まちづくりに活かす「シェアリングシティ」
シェアをまちづくりに活かす都市も現れ始めました。2012年に「シェアリングシティ宣言」をしたアムステルダムをはじめ、市長自らシェアを軸にした政策を打ち立てているソウルなど、先進国が取り組みを行っています。日本でも少子化・人口減少・財政難の中、持続可能なまちづくりをするため、76自治体がシェアリングシティに取り組んでおり、例えば過疎地域での交通手段の確保や、子育て、買い物弱者への支援、災害時の助け合いなどの場面でシェアによる解決が期待されています。
最後に、石山さんは「シェアが当たり前の社会になるためのいちばんのハードルは、みんなが“シェアするマインド”になれるかどうか」だと語りました。自分の家に知らない人を呼べるだろうか、血のつながらない子どもの教育費を応援できるだろうか。自分の心に問いかけ、みんながシェアをイメージできるようになれば、きっと社会が変わって行くはずです。
「幸福な住宅」とは?を問い直す
続いての時間は、暮らしの容れ物である「住宅」の側から豊かな暮らし方を考えてみようと、LIFULL HOME’S総研の島原万丈さんにお話ししていただきました。
住宅市場の現状や、世界でも国民の幸福度が高いとされるデンマークの住まい方と日本の住まい方はどう違うのかについて、興味深いお話が聞けました。
「郊外に庭付き一戸建て」が幸せのシンボルだった
2018年に発表されたLIFULL HOME’S総研の『住宅幸福論』エピソード1では、昭和の高度経済成長期から平成にかけて「これが幸せな住宅の在り方だ」とみんなが信じていた「住宅観」に対して、疑問が投げかけられています。
上の図は、1970年代に朝日新聞に掲載された「住宅双六(すごろく)」。親の家で生まれ、学生時代は賃貸アパートや寮に住み、就職したら公団アパート、家族ができると分譲マンションを買って、最後は郊外の庭付き一戸建てが「上り」と真ん中にあります。
つまり、「いつかは郊外に庭付き一戸建てを持つ」というのが、幸福な住宅のシンボルだったのです。この概念にみんなが共感し、町田にも都心通勤する人たちがたくさん家を買うようになりました。こういう郊外の街が日本全国にできていったのが昭和の高度経済成長期でした。
昭和〜平成の住宅神話の崩壊
ところが、昭和に形づくられたこの住宅観は、その背景となっていた社会構造がバブル崩壊から平成にかけて大きく変化していく中で、徐々に崩れていくことになります。
昔は、経済が成長し続け、人口が増え続ける前提の下、土地は資産であり値下がりすることはなく、1つの家族(夫婦+子どもを想定)が1つの住宅に住み、お父さんは終身雇用の会社で正社員として働き、お母さんは家で専業主婦として子どもを育て家庭を守る、というのが社会の構造だと思われていました。
しかし、令和になった現在では、人口減少と少子高齢化が進み、不動産価値は下落、子どものいない夫婦や共働き、シングルも増え、家族形態が多様化しています。働き方も、男女平等はもちろん複業、通勤しなくていいなど、昔では考えられなかったようなスタイルへと変化しています。
このような時代の中で、「高額の長期ローンを組んで、郊外に新築一戸建てを買う」ことの合理性がなくなってきているのです。
箱よりも住まい方が大事なのでは?
LIFULL HOME’S総研が、現在の住まいに対して感じている幸福度を、①持ち家か賃貸か、②新築住宅か中古住宅か、③マンションか戸建てか、などを軸にに10点満点のアンケート調査を行い、世帯年収の影響を排除する(住まいの形態に関わらず世帯年収が高いほど幸福度が上がる傾向が顕著であるため)特殊な計算を用いて点数を比べてみたところ、実は①〜③に関して、住む人が感じている幸福度に大きな差はない、という結果が出ました。
つまり、今までの住宅業界では「持ち家新築一戸建て」が最も幸福な住宅だとされてきましたが、住まいの幸福度は箱の種類では決まらない、ということが分かってきたのです。
一方で、年収がそれほど高くなくても家に対する満足度が非常に高い人たちもいます。その人たちに共通する特徴を見てみると、
・住んでいる街が好き
・家族との触れ合いや、趣味に没頭する時間がある
・建物が古くなっても「味わい」「自分になじんだ」などとポジティブに捉える
といった要素がありました。この調査を経て、幸福な住まいへの1つの仮説が浮かび上がってきました。
「箱よりも住まい方が大事なんじゃないか?」
では、一体どんな住まい方が幸福度を高めるのでしょうか? それを探るため、島原さんたち調査員はデンマークへ飛びました。
幸福度の高い国、デンマーク
島原さんたちがデンマークの住まい方を調査した理由は、国連の『世界幸福度報告(World Happiness Report)』において、2012年からほぼ毎年、3位以内にランクインしている国だからです。ちなみに日本は、2019年は58位。
最近では「Hygge(ヒュッゲ)」という、「居心地のよさ」を意味するデンマーク独特の概念にも注目が集まり、「ヒュッゲな暮らし」への憧れが世界的に広がっています。
このデンマークで、実際に一般の人が住んでいる家を10軒ほど訪問し、取材・調査を行いました。そして、もっと細分化したアンケート調査も、デンマークと日本のそれぞれの首都圏に対して行いました。その結果をまとめたのが、2019年に発表された『住宅幸福論』エピソード2 です。この調査を通して、日本とデンマークの住宅観の大きな違いが見えてきました。
デンマーク人にとって住まいは「アイデンティティ」
島原さんがデンマークで家の訪問調査を行った際、さすが北欧家具の国らしく、みんなのインテリアのセンスが良かったことはもちろんですが、住まいに対する価値観や考え方が印象的だったそうです。
島原さん「どの家でも最後に『あなたにとって家とは何ですか?』と質問したんです。すると、ほぼみんなが即答で『家とはアイデンティティだ』『私の自己紹介だ』などと言うんですね。自分と家との関係がとても近いんです。日本人に同じ質問をしても回答が少ない。
また、デンマークでは家に人を招く頻度がとても高いのも特徴的でした。彼らにとって家とは、人を招いて交流する場所なんです。対して、日本人にとっての家は、“ウチと外”という言葉にも表れていますが、プライバシーの空間で誰にも邪魔されずに引きこもる場所。人を入れる空間なのか、入れない空間なのかでも違いが出てきます」
デンマークと日本の住宅観の違い
文化や社会背景の異なるデンマークと日本の住まい方を比べて、一概にデンマークの方が良いと結論づけることはできませんが、「豊かさを感じる暮らし方」という点で、学ぶところはたくさんありそうです。
今回の調査結果から分かったことを大まかにまとめると、
<デンマーク人の住まいの価値観>
・家とはアイデンティティ、自分らしさを取り戻す場所である。
・気に入った街で人と交流しながら暮らす。住んでいる街に友達がいる。
・家に人を招いて交流し、自分で家や暮らし方をより良くし続けていく(模様替え、賃貸でもリノベーションする)。
<日本人の住まいの価値観>
・家は新築、南向き、持ち家が良い。
・住む街は利便性重視。住んでいる街に友達がいない人も多い。
・家は寝に帰る場所、自分だけで引きこもりたい空間(掃除はするが、模様替えやリノベーションはあまりしない)。
幸せな住まいは自分でつくる
島原さん「日本人は家を極めてハードウェア的に見ている。モノ志向が強すぎるかもしれませんね。モノとして古くなっていくと好きじゃなくなる傾向があります。
デンマーク人は、快適性は踏まえながらも、ここに人を呼べるのか、自分らしくいられるのか、コミュニケーションが取りやすいのかなど、生活のソフトやアクティビティで家を見ている。
取材で面白いなと思ったのは、現状の家に対する満足度が高く、家はアイデンティティだなんて言っているにも関わらず、彼らがしょっちゅう模様替えやリフォームをしていること。つまり、住むことに主体性を持って、常により良くしようとしているんですね。立派な箱を与えられたから満足、ではなく、満足は自分でつくっているということが分かりました。
住宅産業は箱の産業と言われますが、住まい手を育てる産業になった方がいいのではないかというのが、エピソード2で見えてきた大きな結論でした」
あなたにとっての幸せな暮らしとは?
ゲストお2人のお話の後は、参加者同士で「自分にとっての幸せな暮らしとは?」をテーマにディスカッションをしていただきました。
このテーマに関して島原さんは、「家族で一戸建ての家に住んでいるけれど、もうすぐ子どもたちが出て行くので、空いた部屋に海外からのホームステイを受け入れようかなと考えている」と、今後のマイホームの活用プランについてお話しくださいました。この使い方はシェアの考え方から見ても良いアイデアですし、海外の若者と一緒に生活するのは世界が広がって楽しそうです。幸せな暮らしの一つの形かもしれませんね。
また、ゲストのお話を受けて、会場からは「自分の生き方はいつでも変えることができるんだと思った」「拡張家族という概念にカルチャーショックを受けた」などの感想が聞かれました。
他にも、「多拠点生活は憧れの暮らしではあるけれど、家族を持っていると、子どもの教育の問題など、なかなか難しいのではないか。それに対してシェアリングエコノミーを推進したいという国はどんな方策を考えているのか、現状を教えてほしい」という声が参加者から上がりました。
これに対して石山さんは、「ファミリーの多拠点生活に関する課題として、主に①就学問題、②住民税、③選挙の3つがあると国も認めている、というところまでが現状。就学に関しては、東京と徳島でデュアルスクールの試みが始まっていたり、学校と相談してホームスクーリング(自宅での学習)に挑戦している家族もいる」と答えました。
郊外の街はこれからどうなる?
質疑応答の時間には、参加者から「日本の郊外の街はこれからどうなって行くんでしょうか?」という質問が出ました。町田にとっても他人事ではない問題です。島原さんは、「ベッドタウンは、いわば不自然なつくられ方をした街。もともと働く所と寝る所、生産と消費が切り離された街としてつくられているんです。ベッドタウンは、本来的な街の機能として、働く所と遊ぶ所を取り戻す必要がありますね」とコメントしました。
大切なのは自分の暮らしに主体的に関わろうとする「マインド」
今回、石山さんの「シェア」、そして島原さんの「幸福な住まい」のどちらのお話も、最後はライフスタイル・暮らしに自分自身が主体的に関わろうとするかどうか、その「マインド(精神)」が重要だという結びになったところがとても印象的でした。
シェアでは、お金を払って消費するだけの自分から、サービスや商品をつくり、提供して喜んでもらう側の自分になること。そしてお互いに信頼関係を持ちながら、その価値を交換し合っていくこと。住まいにおいては、家をモノではなく、自分や人を幸せにするための場所として捉え、より良く改善していくこと。機能性や利便性だけでなく、そこで過ごす時間に自分で価値をつくっていくこと。
こうした行動のいずれにも自分自身で考えアクションしていく主体性が必要ですし、言い方を変えれば、それは自分自身が「こうなったらいいな」と思う暮らし方・家・街・社会の姿を描き、実現していく楽しみでもあります。
町田のみなさんは、自分の家やライフスタイル、街との関わり方について、どんなことを思ったでしょうか? 一人一人の幸せの集積が、街の幸せをつくります。まずは自分のライフスタイルを豊かにする何かを始めてみませんか。
◎ゲストプロフィール
石山アンジュ 氏
内閣官房シェアリングエコノミー伝道師
一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長
一般社団法人Public Meets Innovation代表理事
1989年生まれ。「シェア(共有)」の概念に親しみながら育つ。2012年国際基督教大学(ICU)卒。新卒で(株)リクルート入社、その後(株)クラウドワークス経営企画室を経て現職。 シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案する活動を行うほか、政府と民間のパイプ役として規制緩和や政策推進にも従事。総務省地域情報化アドバイザー、厚生労働省「シェアリングエコノミーが雇用・労働に与える影響に関する研究会」構成委員、経済産業省「シェアリングエコノミーにおける経済活動の統計調査による把握に関する研究会」委員なども務める。2018年米国メディア「Shareable」にて世界のスーパーシェアラー日本代表に選出。ほか NewsPicks「WEEKLY OCHIAI」レギュラーMC、拡張家族Cift メンバーなど、幅広く活動。著書「シェアライフ-新しい社会の新しい生き方(クロスメディア・パブリッシング)」がある。
<著書のご紹介:SHARE LIFE〜新しい社会の新しい生き方>
◎シェアリングエコノミー(共感経済・共有経済)とは?
◎働き方・子育て・教育・住まいetc…人生100年時代の「幸せ」な生き方とは?
◎地方創生・オリンピック・防災etc…新しい社会を支えるしくみとは?
近年、見聞きすることが多くなってきた「シェア」というキーワード。たくさんのモノであふれる社会や生活の中から、「必要なだけあれば十分だ」「家も、仕事も、子育ても、誰かとシェア(共有)すればいい」という価値観が生まれ、支持されるようになってきた。あらゆるモノ・コトをシェアしながら生きていく「シェアライフ」的生き方へのパラダイムシフトが既に始まっているのだ。さらに、シェアはライフスタイルだけでなく、社会そのものを根本的に変革する可能性を秘めている。この「シェア」こそ、これからの時代を幸せに生きていくために、誰にとっても欠かせないキーワードになっていくはずだ。シェアリングエコノミーの専門家による、今すぐ始められるシェアライフ実践入門書!
島原 万丈 氏
LIFULL HOME’S 総研所長
1989年株式会社リクルート入社、株式会社リクルートリサーチ出向配属。以降、クライアント企業のマーケティングリサーチおよびマーケティング戦略のプランニングに携わる。2004年結婚情報誌「ゼクシィ」シリーズのマーケティング担当を経て、2005年よりリクルート住宅総研。2013年3月リクルートを退社、同年7月株式会社ネクスト(現(株)LIFULL)HOME’S総研所長に就任。ユーザー目線での住宅市場の調査研究と提言活動に従事。
<調査研究レポートのご紹介:住宅幸福論 Episode2 幸福の国の住まい方>
https://www.homes.co.jp/souken/report/201905/
LIFULL HOME’S総研の『住宅幸福論』シリーズ第二弾になります。2018年に発表した『Episode1 住まいの幸福を疑え』では、住まいの幸福度は、持ち家か賃貸か、新築か中古か、マンションか戸建てかなど、ハコの種別による違いは思われているほど大きくはなく、それよりも「住まい方」のほうが重要であるという分析結果を得て、議論の出発点を提示しました。今回は前作での知見を踏まえ、日本の住生活を省みることにします。
私たち日本人が、これが普通だろうと疑いを持たずに受け入れている住生活を冷静に評価するためには、私たちとは異なる普通と対比させ、相対的な視線で眺めてみることが有用です。今回比較対象として選んだのはデンマーク。デンマークは、国連の幸福度ランキングで毎年トップ3位内に位置する幸福度の高い国で、ヒュッゲ(Hygge)という言葉で表されるデンマーク流の暮らし方が世界で注目されています。そんな幸福な国の住まい方と比べることで、日本の住生活を冷静に振り返り、日本人なりの幸福な住まい方へのヒントを探り、幸福な住まい産業のあり方を考えます。