REPORT

【レポート&動画】働くから考える“コミュニティ”と”場”の作り方 ~街に必要な生きるように働くためのエッセンス~未来町田会議vol.5

2019.12.26

▼イベント動画を視聴できます。レポートと合わせてお楽しみください

働くから考える”コミュニティ”と”場”の作り方

働くから考える”コミュニティ”と”場”の作り方〜街に必要な生きるように働くためのエッセンス〜▼詳細レポートはこちら◎今回のスペシャルゲスト自分が住んでいる街に、一人で行けるような居心地がいい場所はありますか?仕事の忙しさに追われ、家と会社の往復になってしまい、いつもと変わらない日常が続く日々。誰にも相談する場所がないから、一人で悶々としてしまい頭の中がグルグルと。これからは一人で悩みを抱え込みすぎるのではなく手放しシェアする時代。形の無い情報に惑わされるのではなく、実際にヒトと繋がり、話す場所やコミュニティで実際に体験をする事が必要です。そんな中で今、求められているのが「コミュニティ」と「場」です。単純に地域で住むだけでなく、主体的に様々な「コミュニティ」に属し、どんな「場」にしていくかを考える。街を「自分ごと化」する事で、住んでいる街をもっと好きになり、主体的により良い街にしていくのです。今回のイベントでは、求人サイト「日本仕事百貨」や、東京・清澄白河で「リトルトーキョー」を運営し、「生きるように働く」をキーワードにコミュニティや場づくりを仕掛ける株式会社シゴトヒト代表 ナカムラ ケンタ 氏をお呼びします。「働く」という視点から様々なまちづくりに携わるナカムラ ケンタ氏が考える、これからの街の「コミュニティ」と「場」について伺っていこうと思います。

YADOKARIさんの投稿 2019年12月25日水曜日

Facebook動画で視聴できない方はYouTube動画(こちらをクリック)も視聴可能です。レポートと合わせてご覧ください。

人口減少や消費の低迷、働き方の変化など、時代が大きく変化していく中、高度経済成長期から「買い物の街」「郊外型ベッドタウン」として賑わい続けて来た町田も昨年初めて人口が減り、これからの街の在り方を考えるタイミングに来ています。

そんな町田にある広大な芝生広場「町田シバヒロ」を、市民の皆さん自身によるまちづくりや交流を促す「ハブ」にしたいと、2019年の春からさまざまなイベントを開催。回を重ねるごとに多くの出会いが生まれ、何度も通ってくださる地元の方々同士のつながりもでき始め、これからの町田をより楽しく豊かな街にしていくための機運が少しずつ高まっているように感じられます。

今回のイベントでは、清澄白河で交流拠点となる飲食店・イベントスペース「リトルトーキョー」を運営し、求人サイト「日本仕事百貨」を主宰する株式会社ヒトシゴト代表取締役のナカムラケンタさんをゲストにお迎えし、人が集まり賑わう“良い場・コミュニティ”の作り方についてお話ししていただきました。その様子をレポートします!

自分の居場所がほしい、が原点

ナカムラケンタさん(株式会社シゴトヒト代表取締役)は、2013年に虎ノ門で多様な生き方・働き方に出会える場「リトルトーキョー」をオープン、2016年4月からは清澄白河に場所を移し継続して運営している。また、生きるように働く人の求人サイト「日本仕事百貨」をディレクション。誰もが映画を上映できる仕組み「popcorn」共同代表。著書に『生きるように働く』(ミシマ社)。

実は町田に長い間住んでいたことがあるというナカムラさん。親御さんが転勤族で、幼稚園2年間と小1、小6〜高3までの間、つくし野や成瀬に住んでいたそうです。大学生の時は町田のABCマートでアルバイトもしていたとのこと。親近感が湧きますね。

ナカムラさんは子どもの頃から1〜2年おきに転校を繰り返していたため、「地元がない」という感覚だそうです。そこで、「自分の居場所がほしい」と思い、大学は建築学科へ進みました。建築家になれば居場所がつくれるんじゃないかと思ったからです。

しかし実際にその世界に足を踏み入れてみると、建築家というのは一般的には他人の場所をつくる仕事。そこにモヤモヤし、最初の就職では不動産会社へ入りました。建築デザイン以外もいろいろ学べば何か見つかるかもと思ったそうです。そこでの日々はエキサイティングだったけれど、ナカムラさんはまたモヤモヤしてしまい、当時はバーに週6日通っていました。

週6日通ってしまうバーには何があるのか?

東京の清澄白河にある求人バー「リトルトーキョー」。転職したいかどうかに関わらず、毎晩多様な人々が集まり、交流する。

そんなナカムラさんが、週6日も通ってしまうバーでの体験をもとに生み出したのが、求人バー「リトルトーキョー」です。

ナカムラさん「自分の居場所をつくりたいと思った時に、週6日も通っているなら良い場所かもしれないし、通っている理由を見つければヒントになるかもしれないと考え始めました。お酒や食事も美味しいが、これが目当てではない。内装も居心地良いけれど、それがいちばんではない。やはり“人”だなと。

そこにいるバーテンダーや常連さんに会うのがいちばんの目的で、良い場所というのは、そこにいる人たちがイキイキしているんです。その人達が魅力的だからこそ良い場所が生まれる。そういう良い循環が生まれているんだと気がつきました。以来『場所は人なり』『会社は人なり』『地域は人なり』と思って、僕もやっています」

人が集まる、発展していく「良い場」の事例とポイントは?

Via:https://shigoto100.com/

ナカムラさんが主宰している求人サイト「日本仕事百貨」には、全国津々浦々の多種多様な仕事が紹介されています。このサイトでは、一般的な求人サイトとは違い、条件や給料、良い所だけを紹介するのではなく、その仕事のネガティブな面や、携わる人の生々しい実態を伝えているのが面白い所です。

その中から良い場・コミュニティがつくられている事例を2つ、ナカムラさんにご紹介いただきました。

自分の好きからリスクのない方法でまずやってみる

Via:http://nikko-coffee.com/

栃木県鹿沼市で、「日光珈琲」というカフェを運営している、風間さんの事例です。

風間さんは東京で働いていましたが故郷の鹿沼に戻り、しばらくして近所で募集していたバーテンダーのアルバイトに応募しました。バーテンダーとして働き始めて、今まで地元はつまらないと思っていたのに、面白い人がいっぱいいることに気づいたそうです。そのバーは内装をDIYをするところから仕事がスタートしたので、「店って意外と自分で作れるんだな」という発見もありました。

バーテンダーとしてのアルバイトも悪くないけど、次第に自分でも何かしたいと考え始めた風間さんが思い立ったのが「カフェ」。アルバイト先のバーともそれほどお客さんがバッティングしないだろうし、もともとバックパッカーで世界中を回っていた時に、知らない土地に行ったら、まずそこのカフェで情報収集をしていたことを思い出しました。そこで風間さんは自宅のキッチンと居間をDIYでカフェに改装し、比較的リスクの少ない形で小さなカフェを開業しました。

Via:http://nikko-coffee.com/

最初こそ暇でしたが、少しずつお客さんが増えてきました。スペースが足りなくなると、貯めたお金で次の一部屋をDIY。その繰り返しで次第にお店は広がり、ついには増築するほどになりました。今では鹿沼市や日光市、栃木市に5店舗を構えるほどに拡張しました。

風間さん曰く、「けっこう自分は面白いか、面白くないかで動いているので、まず動いて、壁にぶち当たって、じゃあどうやって解消しようかというパターン。嫌々やって失敗するよりは、面白いなと思って失敗した方が絶対楽だし、ずっと続く」

まずやってみてから考える、というのが風間さん流。自分の「好き」から、リスクのない方法でまず小さく始めてみる。壁に当たったら次を考えて乗り越える。先行きなんか誰も読めない今の時代には、こうすれば絶対に永久に大丈夫、なんていう保証はどこにもありません。だからこそ、失敗を恐れるのではなく、まず今できることから、できるだけリスクを小さくしてやってみる、というのが「場づくり」のスタートかもしれません。

モノやサービスを売るのではなく、関係づくりから始める

Via:https://www.facebook.com/TokoKitchenFuchinobe/

2つ目は、お隣の相模原市にある東郊住宅社という不動産屋さんの事例です。

淵野辺にあった青山学院大学のキャンパスの1、2年生が、渋谷のキャンパスに移転してしまい、学生が減ってしまったため、ワンルームの需要も激減してしまいました。この厳しい状況をなんとかしようと、淵野辺の学生向けの物件を数多く管理していた東郊住宅社は、街に「食堂」を開きました。

この食堂は、東郊住宅社で管理している物件に入居した方だけが共通の鍵を持っていて利用できます。朝は100円、昼夜は500円で健康的なごはんが食べられるのは、学生にとっても、一人暮らしをさせている親御さんにとってもうれしいサービス。鍵を持っていなくても、鍵を持っている人と同伴であれば入れるので、友達同士誘い合って食べに来る学生さんが多いそうです。

https://www.facebook.com/TokoKitchenFuchinobe/

そうして食堂に来ているうちに、「良いな、俺も3年からは東郊住宅社の物件に住もうかな」という気持ちにもなってきます。今では入学前の高校生からも問い合わせが来るようになり、この街に物件を持っている大家さんからも、東郊住宅社の評判が良いから管理をお願いしたいという問い合わせも増えました。

東郊住宅社の方は「食堂単体では利益は出ていないが、全体としてうまく回っています。賃貸管理は、今までは全部アウトソーシングした方が合理的だと思っていたぐらいでしたが、真逆の考え方で入居者さんと関係をつくれる食堂を開いて良かったと思っています。自分達で管理することで、もう一歩、普段着のコミュニケーションができますし、食はやはり最もコミュニケーションが取りやすいものの一つ。僕も1日に2、3回はここへ来て、味どう?と聞いています」とおっしゃっているそうです。

モノやサービスを売るのではなく、人間関係をつくるというのも、これからの商売において大切になって来そうですね。

集まる人同士が勝手に何かを始めるオープンな余白

Via:https://twitter.com/6jigen

もう1つ、ナカムラさんが著書『生きるように働く』(ミシマ社)の中でご紹介している、東京の「6次元」というブックカフェの事例をお話ししてくださいました。場の継続や発展に関するヒントがあります。

6次元は、テレビ業界で活躍されていたナカムラクニオさんが、2足目の草鞋として始めたブックカフェです。この物件は、元々伝説的なジャズ喫茶やカフェがあり、雰囲気のある内装や世界観が貴重な特徴。建物に備わった魅力をそのまま使い、スタートしました。

テレビのディレクター時代に知った、珍しいお酒や食べ物、例えば阿寒湖のザリガニのスープなどを揃えて「他では絶対食べられないだろう!」と思って営業していたのですが、誰も注文してくれず、当たり前にコーヒーの売れ行きの方が好調です。

また、お店に出入りしているカレー好きの女の子が「ここでカレーをつくって売りたい!」と言うので、試しにやってもらったところ好評を博し、カレーが売れていきます。

さらには「ここで読書会をやりたい」という人が現れ、「コーヒーもカレーもいろんな人の意見を聞いてうまく行ったから読書会もやってみよう」とやってもらったところ、どんどん人気が出て、今ではノーベル文学賞受賞発表の時には海外からもハルキストが集まるまでになったそうです。

Via:https://twitter.com/6jigen

この事例を通じて、ナカムラケンタさんは発展していく“良い場・コミュニティ”づくりのポイントとして、次のようにコメントしました。

ナカムラさん「イベントをやった後に、その場を何となく開けっぱなしにしておくことがコツかもしれません。終わってすぐ撤収だと何も起こらないけれど、何となく参加者同士がゆるくつながれる時間をつくっておくと盛り上がります。

何かを始めた人がいて、そこに人が集まって来るだけの繰り返しだと、なかなかこれ以上には発展しない。参加者同士が適度につながっていくことが大切で、次の段階では参加者の中から誰かが何かを始めて、またそこに人が集まっていく、という連鎖が生まれると面白くなってきます。

ただ、来た人を無理につなげようとしちゃいけないんです。誰かの掌に乗っているような感じは嫌ですよね。集まる人同士が勝手につながって、何かを始められるようなオープンな余白をつくっておく、というのがポイントかもしれません」

映画館のない町田に自主上映サービス「POPCORN」が良さそう!

Via:https://popcorn.theater/

新たな場・コミュニティをつくる方法の一つとしても興味深い、誰もが自分の映画館(マイクロシアター)をつくれる仕組み「POPCORN」について、ナカムラさんからご紹介がありました。映画館のない町田をぐんと楽しくしてくれるサービスかもしれません。

通常、映画は劇場・映画館と呼ばれる場所で流されますが、映画館でない場所でも上映できる方法があります。それが「自主上映」というもので、興業法上概ね月4回までは開催できるそうです。例えばカフェや野外など、劇場でない場所でも上映可能です。

ナカムラさんが手掛けている「POPCORN」は自主上映向きのサービス。自主上映会は今までもありましたが、権利関係が複雑なのと、1回上映するのに相場が十万円ほどかかるため、カフェなどの小さな場所で上映すると赤字になる可能性が高いという難点がありました。

「POPCORN」は、入場者数に応じて費用が発生するという仕組みになっています。お客が来て初めてサービス利用料が発生し、入場料との差額は上映者に入るので持ち出しがなく、本当に気軽に上映会ができるという仕組みです。好評のため、全国で400シアター以上に増えたそうです。

明確化している「リアルな場」の役割

この「POPCORN」が好評である理由は、マイナー作品なども観られるという価値以外に、人とのつながり、コミュニティの場であることも要因となっているようです。

ナカムラさん「インターネットによって、リアルな場所の役割がより明確になったと思います。味噌づくりワークショップやグループランニングなどにこれだけ人が集まるのは、そこに『人と人との関わり』や『ライブ感』があるから。それで言うと、従来の映画館はリアルな場である特徴を生かし切れていないのかもしれません。良い映画を観た後は、それについて誰かと話したり、感動を分かち合いたくなるのに、映画館だとそれがしにくい。

その点、『POPCORN』では、会場で同じ映画を好きな人同士、話ができたりつながったりできる。人の存在を感じられる場だと思います」

町の活気のつくり方と、場を継続させるコツ

ナカムラさんのお話しのまとめとして、参加者から要望のあった「街を活気づけるためのエッセンス」と「場の継続」についてコメントをいただきました。

ナカムラさん「街に活気を生むことについては、いろんなチャレンジができる場所が必要だと思います。仕事でもイベントでも、何かを始めて叩かれない、始めやすいみたいな風土が大切。

場の継続については、例えば、移転しても前と変わらない雰囲気のお店というのがあって、やはり人がつながっているお店は何かが残る。常連さんが同じ空気をつくってくれるからです。人のつながりは、やはりかけがえのないもの。つなげようと思ってつなげられるものではないが、良いお店・場所には、良いファシリテーターがいます。スナックのママとか、店主さんとか。

そういうふうに、人とのつながりを大事にして場所をつくることができたとしたら、例え世の中の99.9%の人が知らない場所であっても、やっている人も遊びに行く人も幸せだと思います」

第2部 パネルディスカッション

第2部では9つのお題の下、会場の参加者とナカムラさんとでディスカッションを行いました。そのハイライトをご紹介します。

生き方について

ナカムラさん「本当に自分がやりたいと思うものを積み重ねていくと、実はそれが仕事になるんじゃないかと思います。タモリさんがいつか言っていたようなのですが、『流行は追っても追い切れないけど、自分の好きなことをやり続けていたら、もしかしたらそれが流行になることはあるかもしれない』って。

自分が何が好きなのかをよく知ることが大切。いろんな見聞を広げて、自分はこういうのがすごく好きなんだなと知ること。旅してみる、まずやってみる。それが自分の人生を楽しく生きることなんじゃないかなと思います」

教育について

ナカムラさん「僕が自分の子どもにどう教育したいのかで言うと、やはりいろんな大人に会わせるのがいちばん大切なんじゃないかと思います。同じ年代、同じような人達の間にずっといると、それが悪いわけじゃないかもしれないけど、自分の行動が知っている範囲の中で納まってしまうことが多いと思う。

これを広げるには、いろんな人に会って、かつその人の素が見えたら良いと思うので、僕だったら、例えば行きつけのバーとか、子どもをいろんな所へ連れ回します。そしていろんな面白い大人に会わせるというのが大切なんじゃないかと」

第3部 ディスカッション「あなたが暮らしたい街とは?」

イベントの最後の時間は、参加者同士で「あなたが暮らしたい街とは?」についてディスカッション。会場からは「最近は町田にもチェーン店が増えてしまったが、個人がやっているお店が並んでいて、ここは自分の地元の街なんだと実感できる雰囲気になってくると良い」という声が上がりました。

それを受けてナカムラさんは、「町田に昔からある横丁などがなくなっちゃうともったいない。個人の顔が見えるお店はやはり強いし、そういうお店をこれからつくることもできると思う」とコメントしました。

「自分も場づくりをしたい」「コミュニティをつくりたい」という人は、町田にもたくさんいそうです。町田シバヒロのイベントに参加してくださる方々は、まさにその筆頭なのかもしれません。大切なのは、まず小さく「やってみる」こと。町田は昔から自由と寛容さを持つ、何でもできる街です。あなたの気持ちを思い切って表明した途端に、応援してくれる仲間や参加したいというメンバーが集まって来るのではないでしょうか。シバヒロでつながった人達と、自分のSNS上で、あるいは街の中に見つけたお気に入りのカフェで、あなたの「好き」から始まるイベントや集まりをつくってみませんか?

◎今回のスペシャルゲスト

ナカムラケンタ 氏
日本仕事百貨代表/株式会社シゴトヒト代表取締役

<プロフィール>1979年東京生まれ。生きるように働く人の求人サイト「日本仕事百貨」代表。シゴトヒト文庫ディレクター、2014-2016年グッドデザイン賞審査員、2018年IFFTインテリアライフスタイルリビングディレクター。東京・清澄白河「リトルトーキョー」監修。誰もが映画を上映できる仕組み「popcorn」共同代表。著書『生きるように働く(ミシマ社)』。

▼日本仕事百貨公式サイト
https://shigoto100.com/

▼東京・清澄白河「リトルトーキョー」
https://shigoto100.com/littletokyo

▼popcorn公式サイト
https://popcorn.theater/

COLLABORATION PARTNER