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【レポート】Made in Serigaya「小さな公園活用実験」。多世代でつくる、公園の楽しみ方

2020.11.30

「メイドイン 芹ヶ谷」とは?

東京都町田市にある、国際版画美術館と豊かな自然を保つ芹ヶ谷公園。「メイドイン 芹ヶ谷」とは、その芹ヶ谷公園の2024年に向けた再整備プロジェクト、芹ヶ谷公園“芸術の杜”プロジェクトのコンセプトである「パークミュージアム」の実現にむけて 、さまざまな「公園で〇〇したい」 という声を集め、実際に実験的な取り組みを行っていく市民参加型プラットフォームです。

芹ヶ谷公園の風景

現在、「メイドイン芹ヶ谷」では、公園を活用する実証実験を企画実施していくコミュニティを「アジト」として展開しています。2020年5月にスタートし、徐々にアジトのメンバーが増えてきました。
オンラインでみんなで集まり「どんな公園になったらいいか」「どんな公園の使い方ができるのか」といったテーマでミーティングを重ねてきました。「芹ヶ谷公園でやってみたいこと」について出てきた意見をもとにフィールドワークを経て、さらにブラッシュアップし、まずは自分たちで芹ヶ谷公園を実際に楽しんでみよう、と今回の「小さな公園活用実証実験」に至りました。

森のなかで、やりたいことを実験してみる

朝10時、「それでは『メイドイン芹ヶ谷 アジト』の小さな公園活用実験を始めます!」とスタートを切りました。この日集まったアジトのメンバーは約20人。新型コロナウイルスの感染防止対策を徹底して開催しました。

小さな公園活用実験に集う、アジトのメンバー

森のなかで楽しむヨガ、枝の音をきく「森の音道路」、自然素材の楽器で「森の音を楽しむ」ワークショップ、公園にある素材でつくる公園マップづくりなど、4つの企画を実験します。公園の2カ所で、「森」チームと「アートカルチャー」チームの2班にわかれて実験が始まりました。

森チーム、まずは20分のヨガ。青空のもと、鳥やセミが鳴く森のなかで、ヨガマットを広げ、大きな円になります。
「目を閉じて、たっぷりと息を吸って、深く、長くはいていきましょう」とヨガインストラクターの狩野麻理絵さんの誘導で、森ヨガがスタート。
「ゆったりと呼吸を行うことで、酸素をしっかりと取り込み、血液の流れがよくなり、体の芯から温まっていきます」。マッサージをしたり、さまざまなポーズをとったり。日常から解放されて、ゆったりとした時間を過ごしました。

ヨガのあと、「普段、屋外で寝転がることはほとんどないので、川の音や鳥の声といった、自然の音に包まれてヨガができるのは心地よかったと感想をいただいたのが嬉しかったです」と話す狩野さん。「それから、普段のスタジオと違い、ここではヨガを目的にしていなかった方も参加できます。今日も飛び入り参加の方もいらっしゃったんです」とこの場所の可能性を語りました。

ヨガインストラクターの狩野麻理絵さん

森チームはヨガのほかに、楽器を楽しみました。雨の音がするサボテンの楽器「レインスティック」や、フィリピンの竹楽器「トンガトン」など、自然素材でつくられたさまざまな民族楽器を自由に奏でます。

「森の音を楽しむ」ワークショップ

楽器を用意したのは、せりがや冒険遊び場の岡本恵子さん。「普段、せりがや冒険遊び場のアウトリーチで活動するときにも使う楽器です」。
それぞれ好きな楽器を思い思いに楽しんだあと、「最後にみんなでセッションをしましょう」と岡本さん。トントン、カラカラ、サーっと、さまざまな自然の音が、森に重なりました。

せりがや冒険遊び場の岡本恵子さん

これからのまちは、自分たちの手で愛着のあるものに

アジトは子供から大人まで、年齢も性別もさまざまな方々が参加しています。なぜこんなに多様なメンバーが集まったのでしょうか。
それは、「メイドイン芹ヶ谷」の立ち上げに先駆けて、芹ヶ谷公園の未来や活用アイデアを語る「面白がる会」というワークショップ等を昨年開催した経緯がありました。「面白がる会」には延べ100名ほどが参加。その後、オンラインでもアイデア抽出のワークショップやトークイベントを展開してきたなかで、芹ヶ谷公園の活用実証実験に興味をもった方々が参加し、少しずつ広がりをみせています

「森の音を楽しむ」ワークショップ

ヨガインストラクターの狩野さんも、せりがや冒険遊び場の岡本さんも、アジトのメンバーとして参加しています。今回、講師のような形で各チームをリードしたスタッフのほとんどが、メンバーとしてこれまで一緒に企画を検討してきました。
「メイドイン芹ヶ谷」ではメンバーの好きなことや得意なことも重視していますが、特に遠距離移動が難しいコロナ禍では地域内で個人の強みを生かすことが重要になっています。町田は都市と自然のバランスが良く、交通の便が良いまちですが、コロナ禍を経た未来を考えると、日常の暮らしが楽しかったり、歩いていけるお気に入りの場所があったりすることが、まちにとって大切になっていくでしょう。

「森の音を楽しむ」ワークショップ

子供たちの遊ぶ場所が増えてほしい

森チームがヨガをやっている頃、アートカルチャーチームは、国際版画美術館前の広場に、木の枝を集め「森の音道路」をつくっていました。

「森の音道路」

枝の上を歩くと、パキパキ、バキバキと枝を踏む音が鳴ります。「枝を集めて、音を聞くことで自然を感じられるのではないか、とみんなで下見をして考えました」と話すのは「森の音道路」担当の萩原淳(はぎわら・あつし)さん。生まれた頃から芹ヶ谷公園の近隣に住んでいます。市役所に勤める同級生の誘いで「メイドイン芹ヶ谷 アジト」に参加するようになりました。最初は友人のよしみで参加していましたが、だんだんと活動に興味がわき、いまは積極的に関わっているそうです。

「森の音道路」のチョークアート

「ここは自然という意味ではとてもいい環境です。何も手を加える必要はないくらい。ですが欲をいうなら、もっと子供たちが遊ぶところが増えたらいいなと思います。親子で楽しめる場所になるといいですね」
森の音道路では、道路にチョークでお絵描きができるコーナーも設置。公園に訪れたたくさんの子供たちが夢中で絵を描いていました。

萩原淳さん

子供たちに人気のコーナーがもう一つ。芹ヶ谷公園の素材で、地図を完成させるワークショップです。公園に落ちている葉や木の実などが、地図のパーツになります。土台の地図をつくり、ワークショップを行うのは町田にある造形教室「小さな美術室」の高あみさん。
「これはどこに置いたらいいの?」「じゃあ、ここにはってみてね」と子供たちと一緒に地図を完成させていきました。

公園マップづくりワークショップ

世代を超えた交流がうまれる

こうして、お昼前にはすべての実証実験が終了。2つのチームが4つの実験を同時進行した今回の企画は、密度の濃い2時間でした。

森ヨガに参加した世羅田京子さんは、「こもれびが印象的でとても気持ちよかったです」と今日の感想を振り返ります。「面白がる会」に参加して以来、「メイドイン芹ヶ谷」の活動に参加する世羅田さんは、アーティストとして活動する傍ら、マチノワというコミュニティスペースにも参加しています。
「作家活動としては一人でものづくりをしていますが、だれかと何かをつくることに興味もありました。知らない人同士が集まって何かをつくるプロジェクトに関わったことが初めてで、とてもおもしろいです。私は子育てが終わった主婦なので世界が閉じる一方ですが、アジトには若い人も多いので、世代を超えて関われることができて楽しいです」
世羅田さんと一緒に参加した田中しおりさんは「世羅田さん以外には知り合いがいないのでドキドキしましたが、超楽しかったです! お子さんも多かったので若いパワーももらえました」と話しました。

公園マップづくりワークショップでつくった、季節を感じる芹ヶ谷公園の地図。スポットに対するコメントも地図のなかに添えられている

子供から大人まで、年齢も性別もさまざまなメンバーが参加し、飛び入り参加も多かった実証実験。ここからどんなアイデアやプロジェクトが生まれていくのか、芹ヶ谷公園から目が離せません。

写真協力:佐々木写真事務所

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