REPORT

【レポート】MadeinSerigaya「Future Park Lab」 芹ヶ谷公園の将来の姿を想像・創造するFuture Park Lab を開催しました!

2021.02.04

JR 町田駅から徒歩10 分ほどのところにある、自然の森や谷の地形を生かしてつくられた「芹ヶ谷公園」は、総面積約14ヘクタールにも及ぶ広大な公園です。
多くの人々や商業施設で賑わう町田駅前のイメージとは裏腹に、都会の真ん中でも四季折々の自然を身近に感じることができる芹ヶ谷公園は、1982 年の開園以来、子どもからご年配の方まで多世代に愛され続けてきました。園内には世界的にも珍しい版画専門の美術館「町田市立国際版画美術館」があるほか、2025年には、閉館した町田市立博物館の工芸美術部門収蔵品を引き継いだ「(仮称)町田市立国際工芸美術館」も同敷地内に新設される予定です。

これを機に町田市では、将来の公園のコンセプトを「パークミュージアム」と名付け、芹ヶ谷公園と美術館の一体的な整備を進めています。芹ヶ谷公園の豊かな自然や、さまざまな顔を持つ広い園内各所の魅力を活かしながら、町田らしい多彩なアート・カルチャーを体現する場となることを目指しています。

町田市が描く「パークミュージアム」のコンセプトブック概要版は、町田市のホームページにて公開されています。 

「パークミュージアム」は通常の博物館や美術館のように展示されているものを鑑賞するだけでなく、市民が町田の多様な文化芸術の活動や公園の豊かな自然を体験しながら、学び楽しむことができる新しい体験型の公園です。

みんなが芹ヶ谷公園を舞台に思い思いの活動や自己表現を展開し、それをみんなで楽しむ。そんな公園を市民と共につくっていこうと、町田市は2019年から市民参加型のアイデア会議を開催し、みんなの“公園で○○したい”という声を集め実験的な取り組みを実施していく市民参加型プラットフォーム「Made in Serigaya」を立ち上げて、市民と一緒に定期的に企画会議をしたり、オンラインイベントや公園活用実験を実施してきました。

2019年9月~11月には「町田を面白がる会 –芹ヶ谷公園編–」(写真右下)と題したイベントを開催し、芹ヶ谷公園の課題や新しい公園の使い方アイデアなどを市民と共に考えた。2020年1月には「ファイヤーミーティング」(写真左上)と称し、アイデア会議で出された「焚き火をしたい」の声を小さく実験。同時に桜美林大学と連携した光のインスタレーション(写真右上)も実施した。その後は市民との定期的なオンラインミーティングで意見交換を重ね、2020年8月には芹ヶ谷公園をフィールドワークしながら実際に楽しんでみる「“小さな”公園活用実験」(写真左下)を行なった。

そして2020年11月14日~15日、これまでみんなで「想像」してきた将来の芹ヶ谷公園の風景を、2日間にわたって実際に「創造」してみようという実験的な取り組み「Future Park Lab」を開催しました。晩秋の小春日和の中、芹ヶ谷公園で繰り広げられた未来の「パークミュージアム」の様子をレポートします!

芹ヶ谷公園の各所でさまざまなイベントを開催

この日の芹ヶ谷公園では、朝10時頃~夜にかけて、園内各所で10を超える多様な活動や催しが行われました。朝の光と共に準備が始まり、日中のうららかな日差しの中で行われた楽しい催しもあれば、夕暮れが近づく頃に始まった幻想的なイベントや、夜にかけて行われた実験的な活動もあります。芹ヶ谷公園は1日を通していろいろな豊かな時間にカラフルに彩られ、訪れた市民はいつもとは少しだけ違う公園を満喫していました。そのいくつかの会場の様子をご紹介します。

1日目10:00~12:00 | 町田ゆかりのアーティストによるライブペインティング&ミュージック

朝10時から市立国際版画美術館前の広場では、町田を中心に活動しているアーティスト4人による、ペインティングと音楽のライブが開催されました。

背丈ほどもある大きなキャンバスに即興で絵を描いていくライブペインティングを行なったのは、knott aka 2G INDAHOUSE(通称:2G トゥージー)さんと、かねこじんこうさんのお2人です。日頃は各々で活動しており、コラボレーションするのはこの日が初めて! 大まかにモチーフなどは決め、後はほぼぶっつけ本番。どんな作品が描き上がるのか、ご本人たちが誰よりもワクワクしている様子です。

その傍らでは同時進行でミュージシャンのお2人によるライブも行われました。

歌を歌ってくれるのは、西じゅんこさん。ふだんは仲見世商店街にあるお店のシェフでもあり、もう一つの活動として、町田市内のさまざまなカフェやレストランなどで歌手としても活躍しています。

ギターを弾いてくれるのは、兒玉峻(バセルバジョン)さん。元は相模大野にお住まいで、町田にはよく遊びに来ていたそうです。

兒玉さんが自然な感じでギターを爪弾き始め、国際版画美術館付近に音が広がっていくと、少しずつ人が集まってきました。絵を描くお2人がどんどん集中力を高めていき、ライブペインティングと音楽ライブが始まりました。

西さんののびやかな歌声に包まれながら、大きな絵が見事に完成。キャンバスにはどこか愛嬌のあるカバが現れていました。集まった観客からは大きな拍手が湧き起こりました。

観客の方にお話を伺ってみると、

女性:「芹ヶ谷公園のすぐ近くに住んでいて、兒玉さんのことを以前から知っており、今日はここで演奏があると聞いて来てみました。屋外で音楽を聴くのはとても気持ちが良かったです。ライブペインティングとのコラボレーションも、どうなっていくんだろう? とすごくワクワクしてエキサイティングな時間を過ごしました。芹ヶ谷公園は私にとって庭みたいなものでよく訪れますが、こういう活動は初めてです。とても良い時間だったので、またやってほしいです」

トヨタモビリティ東京株式会社より地域貢献プログラムの一環として特別な車が提供された。

1日目10:00~15:00 | 森の中で遊び・創作・学び。オリジナルエコバッグ制作や車へのお絵描きなど

芹ヶ谷公園の再整備にあたって「谷の回廊」と名付けた小田急線側のエリアでは、赤や黄色に色づいた秋の美しい樹々に囲まれながら、親子で参加できる複数のコンテンツが展開されました。

二酸化炭素を発生しないエコな動力を使ってつくるたくさんのシャボン玉でみんなの注目を集めたのは燃料電池自動車。芹ヶ谷公園の豊かな自然の中で、身近な問題である環境問題も学ぶことができました。キラキラ光るシャボン玉を眺めながら、トートバッグにいろいろなスタンプを押して自分だけのオリジナルエコバッグをつくるワークショップ、真っ白な車をキャンパスに自由に絵を描くことが出来る特別な体験など、アートを介して親子で一緒に楽しく学び、創造する。そんな風景が生まれていました。

1日目13:30-15:00 | 移動図書館を囲んで、大人も子どもも本とふれ合う

13時半になると、大池付近に町田市立図書館から「移動図書館そよかぜ号」がやって来ました。大きなバスのような車が停まると、車体の左右が開いて本がぎっしりと並んだ本棚が現れ、あっという間に公園の中に図書館ができました。本は誰でも自由に手に取って読むことができ、通常の図書館と同じように本を借りて帰ることができます。

移動図書館の周りにはブルーシートが敷かれ、そこでぬり絵をしたり、親子で本を読んだりする姿が見られました。また、小さな椅子を並べたスペースでは、図書館のスタッフさんによる紙芝居と絵本の読み聞かせも行われ、子どもたちが夢中でお話に聴き入っていました。そよかぜ号の外に置かれた本棚に並べられた本も、公園や版画美術館に関連した内容のものがセレクトされていました。

移動図書館で本を借りていたご年配の女性にお話を伺ってみると、

本を借りていた女性:「本が好きで、いつもは市立図書館で借りているんですが、今日は芹ヶ谷公園に移動図書館が来ると聞いて利用してみました。私はまだ元気で歩けるけれど、足が不自由な方や遠くまで行くのが億劫な方もたくさんいますから移動図書館はとても良いこと。公園でやるというのも気持ちがいいです。近所の人やお子さん連れの方も公園に来たついでに利用できますし、こういう文化的な企画はこれからもぜひ続けてほしい」

1日目・2日目10:00~18:00 | 自然の中でアートを見る。ツリーデコレーションとアートバナー展示

アート鑑賞というと建物の中にきちんと飾られた作品を見るイメージが強いですが、自然の中に設置されたアートを見るのも、また新鮮な感動があります。秋色に色づく木立の中に、(仮称)国際工芸美術館で見ることができるようになる町田市所有の陶磁器やガラスのコレクションをカードにしたものが、クリスマスツリーのオーナメントのように飾られました。カードの裏面には作品の魅力を伝えるコメントも記載されており、実際に現物を見てみたい気持ちを呼び起こします。

そのそばには、みんなが足を止めて見入ってしまう存在感、でも自然と公園に馴染むライオンとネコ。町田市で福祉作業の一環として障がいのある方の表現やアート活動を行っているクラフト工房La Manoさんの人気作家、F.Ozakiさんの作品がアートバナーになって、公園にやってきました。

自然の中で、公園の中でアートに触れる。いつもの風景の中で、作品や芸術との距離感が縮まることで、より自分に身近なものに思えてくるのではないでしょうか。

1日目・2日目16:30-18:00 | 桜美林大学ライトアップ企画「光のトンネル in 芹ヶ谷」

芹ヶ谷公園の北側と南側をつなぐトンネルのすぐ横に、「アーチの泉」という2つの小さなトンネルがあるのをご存知でしょうか? 奥から手前に向かって水が流れるこのトンネルを使って、桜美林大学芸術文化学部ビジュアル・アーツ専修田中ゼミの学生さんたちが、2日間に渡って光のインスタレーションを発表しました。彼らは2020年1月にも芹ヶ谷公園の大池の周りで光の作品を発表し、大好評を博しています。今回は2つのトンネルそれぞれを異なる意匠で彩り、夕暮れから夜にかけてファンタジーのような美しい空間演出を見せてくれました。

向かって左側のトンネルの作品は、田中ゼミの五十嵐茜さんが制作しました。「暖かい灯りをあなたと共に」と題されたこの作品を五十嵐さんが考案し始めたとき、世間はちょうど緊急事態宣言下で、学校も休校になり自由に遊びにも出かけられない日々が続いていました。そんな中、五十嵐さんは家で子どもでも簡単につくれるライトアートを提案したいと考えたそうです。この作品に用いられたたくさんの張り子のランタンは、つくり方の動画とマニュアルを配布して、市民の方々と一緒にコツコツと制作したものです。展示には芹ヶ谷公園の木の枝を使用し、暖色系の省エネ白熱灯の灯りで、ツリーハウスのような温もりのある異空間の創造を目指しました。

また、向かって右側のトンネルの作品は、同ゼミの野澤辰吾さんによるものです。「Lightroom~幻想空間 MIRAI」という名のこの作品は、「送水管の中を通る幻想的な芹ヶ谷川」をイメージしたそうです。芹ヶ谷公園の湧水は現在、送水管を通り地下を流れ、恩田川高瀬橋下へ流れ込んでいますが、かつて地下に流す前は「芹ヶ谷川」と言われていました。アーチの泉のトンネルを送水管にたとえ、幻想的な芹ヶ谷川を連想させています。スモークを焚き、超高輝度サーチライトを水面に当てることで、さまざまな流れの波紋を多様な色彩で浮かび上がらせており、環境音とともに過去に遡るような非日常的な光景をつくり出していました。

この光のトンネルの演出にも、CO2 排出ゼロの燃料電池自動車から引いたエコ電気が使われました。

1日目14:00~2日目12:00 | 芹ヶ谷公園でキャンプ! 夜の公園宿泊実験

今回のFuture Park Lab では、実験的な試みとして「芹ヶ谷公園でキャンプのように泊まってみる」という活動も行いました。場所は多目的広場。今まで市民のみなさんと重ねてきた公園活用アイデア会議やミーティングの中でも、最も多かったと言ってもいいほど声が上がったのが、「芹ヶ谷公園でキャンプがしたい」「泊まってみたい」というものでした。

そこで今回は、これまでメイドイン芹ヶ谷の取り組みに参加していただいた方を対象にモニターを募集し、多目的広場にテントを張って滞在していただきました。

14時過ぎからチェックインが始まると、モニターの方々が、準備してきたテントやタープ、椅子やテーブルなどのアウトドアグッズを自分の区画に運び込み、慣れた様子でテントの設営を始めました。参加者は日頃からキャンプやアウトドア好きな方がほとんどで、一つまた一つと居心地の良さそうなスペースがつくられていきました

夕暮れになると、谷地である広場は少しずつ肌寒くなり、キャンプ地にはあちこちで焚き火に火が付けられました。各テントの周りでは夕食の支度が始まり、みなさん思い思いに公園でのディナーを楽しんでいました。
愛犬を連れたご夫婦にお話を伺いました。

奥様:「私たちは芹ヶ谷公園が見える所に住んでいます。2 人とも登山が好きでよく行っていましたが、犬を飼うようになってから山登りにはあまり行けなかったんです。でも今日は犬も一緒に近所でキャンプができるのが楽しみです」

宿泊から一夜明け、芹ヶ谷公園はお天気に恵まれた爽やかな朝を迎えました。泊まってみた方々は、どんな感想をお持ちなのでしょうか。何人かの方に伺ってみました。

男性:「日中から翌朝にかけて、公園にどんな時間帯にどんな人が来て、何をやっているのかをずっと見ることができたのが面白かったです。一方で、やはり人が集まる場合はルールやマナーなどは気をつけないといけないですね」

ご家族:「率直にいつも来ている公園なので慣れているのと、何かあったらすぐ家に帰れる近さなのが安心でした(笑)。これからも泊まれる日をつくっていただきたいです」

2日目10:30~12:45 | 音楽と一緒に公園を巡る、地産地SHOW コンサート

2日目は、町田ゆかりのアーティスト 辻千佳さん(オカリナ奏者)と古川真理さん(ヴァイオリン奏者)による「地産地 SHOW コンサート」も開催されました。これまでは市役所アトリウムなど屋内で開催されていましたが、今回は芹ヶ谷公園の豊かな自然をステージにしての、屋外での開催です。彫刻噴水前、大池付近、アーチの泉前の3ヶ所を巡り、それぞれの場所の雰囲気に合わせて演奏する曲を変えながらの公園と一体となったコンサート。愛犬とのいつものお散歩を楽しむ方や、お子さんと遊びに来たご家族、また紅葉狩りに来園した方などが気軽に足を止め、ヴァイオリンとオカリナが奏でる音色に聴き入っていました。

室内で行われるきちんとしたコンサートの席に愛犬や赤ちゃんを連れて行くのは難しいことですが、公園のオープンな空間なら、気兼ねなくみんなと一緒にプロの演奏に耳を傾けることができます。いつもの公園とは少し違う、特別な「音楽の秋」を感じられたのではないでしょうか。

未来のパークミュージアムを体感できた2日間

11 月14 日~15 日にかけて、芹ヶ谷公園ではほかにも冒険あそび場での子どもたちによるライブが行われていたり、版画美術館の喫茶けやきもこの日のために焼き芋などの特別メニューを提供していたり、たくさんの市民が公園内のあちこちでさまざまな楽しみ方をした2日間となりました。みんなで思い描いてきた未来の「パークミュージアム」を、少し体感できたのではないでしょうか。

また、今回のイベントも含め、リアル開催される「パークミュージアムラボ」などのイベントでは、毎回、芹ヶ谷公園を利用しているみなさんにアンケートを実施しています。

さらに今回は東京理科大学西田研究室の学生さんと読売広告社の都市生活研究所が参画し、「芹ヶ谷公園ってどんなイメージ?」「芹ヶ谷公園にあったらいいな!こんなことができたらいいな!と思うことは?」「あったらいいなと思うイベントは?」などといったアンケートを実施しました。回答を書いていただいたらその場で公園内に掲示し、みんなが読めるようにしました。

これらのアンケートの結果は、芹ヶ谷公園の再整備や未来のさまざまな公共空間づくりの参考データとして生かされていきます。

身近な公園は、まちに開かれたアウトドア・リビングであり、もう一つの庭であり、発表の舞台であり、そこに居合わせた人たちと一緒に楽しむ交流の場でもあると言えそうです。自分の家の延⾧にまちがあり、家族の延⾧に地域の人々がいることを思うと、自分の住むまちの「まちづくり」「公園づくり」もまた、自分の家を心地よく快適にしていくのと同じように身近で、大事にしたいことなのかもしれませんね。

Made in Serigaya では、今後も「パークミュージアム」の実現に向けて、市民のみなさんとの活動を続けていきます。一緒に未来の芹ヶ谷公園をつくっていきましょう。

▼当日の様子について、動画がございますので、こちらも合わせてご覧ください。

Scene1 ライブペインティング
 

Scene2 産地ショーコンサート

Scene3 自然の中での創作やあそび

Scene4 桜美林大学によるライトアップ

まちテレ(町田市の情報番組)
 

▼Made in Serigaya の活動にご興味のある方は、下記のアドレスよりお問い合わせください。
made.in.serigaya@gmail.com

◎Made in Serigaya とは?
芹ヶ谷公園“芸術の杜”プロジェクトのコンセプトである「パークミュージアム」の実現にむけて 、さまざまな”公園で〇〇したい” という声を集め 、実際に実験的な取り組みをおこなっていく市民参加型プラットフォームです。Made in Serigaya では、芹ヶ谷公園から市民が主体となって町田の文化や自然の魅力を発信し、新しい文化を生み出していくことを目指していきます。

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